10 盗賊を倒しました
いつものように空のお散歩。
最近は魔獣が減って獲物が少ない。
今日も角猪1頭だけ。
どこかに獲獣はいないかと二人で探索していた。
「キュルル!」
「急げ!」
シロが盗賊を見つけた。
シロが左前に方向を変えて全速で飛ぶ。
街道が左カーブをしている所をショートカットするようだ。
森を超えると前方の草原に7台の馬車。
それを取り巻く5~60人の盗賊。
少し離れたところで頭らしい大男と4人の部下が戦況を見ている。
「護衛の冒険者を攻撃しないでね。」
12~3人の冒険者が馬車の周りで戦っている。
「キュルル!」
当然と怒るシロ。
俺は魔力を練って小さな火球を作る。
「いけっ!」
30個のファイアーボールが盗賊に降り注いだ。
さすがに6~7個は外れた。
シロは頭達5人を風刃で仕留めている。
冒険者と戦っていた盗賊達が俺に気が付いで慌てて逃げ出そうとしている。
20人ほどをファイアーボールで倒しながら馬車の傍に着地した。
「怪我人来て!」
叫びながら重傷らしい冒険者に駆け寄る。
傍に落ちていた左手を冒険者の肩にくっつけて叫ぶ。
「ヒール!」
無言で発動できるが、人前では魔法名だけでも叫べと師匠に言われたので一応叫んだ。
魔力を吸い取られる。さすがに結構時間が掛かった。
「よし、次。」
並んで待っていた6人の怪我はすぐに治った。
気絶したり唸っている盗賊や冒険者達がロープで縛りあげる。
出血多量で死なない程度にヒールを掛けてあげた。
「「「ありがとうございました。」」」
商人達が頭を下げている。
「死体焼く、金目、取る。」
商人たちが盗賊から防具などを剝がした。
冒険者達は生きている盗賊を縛って1か所に集めている。
盗賊の頭達の所に行った。
鑑定すると3人が賞金首。
シロが首チョンパしていたのでアイテムボックスから空き樽を出し、3つの首を放り込む。
冒険者が来たので首の無い死体を運んでもらう。
護衛の冒険者も二人死んだようだ。
しばらくすると死体集めが終わった。
「離れて。」
皆が離れたのを確認してシロに合図する。
“ゴォ~”
シロのブレスであっという間に灰になった。
「後は任せる。」
冒険者のリーダーに言った。
「あの、お名前を教えてください。」
「ホロルギルドのレオとシロ。アジトを探す。」
シロに飛び乗って盗賊が逃げた方向に飛んだ。
逃げてからだいぶ時間がたっているが、師匠と一緒に開発した追跡魔法で行き先が判る。
探索マップで見ると、街道からだいぶ離れた岩山に青い点が見える。
日暮れが近い。
シロは夜目が効くが街門が閉まる前に帰りたい。
上空から見ると麓の洞窟の前に見張りが2人。
シロが風刃で倒した。
中を探索すると人間が12人。
シロが小さくて助かった。
一緒に洞窟に入る。
奥の部屋に8人、さらに奥が4人。
奥の部屋に飛び込んでマグナム弾を斉射。
逃れた盗賊をシロが爪と尾で倒す。
奥の部屋から出てきた4人をマグナム弾で爆発させて殲滅を完了した。
とりあえず金目の物を手当たり次第にアイテムボックスに放り込んで洞窟を出る。
シロのブレスで洞窟の中を焼いて討伐完了、急いで街に帰った。
「盗賊。商隊がもうすぐ。待って。」
門を閉めようとしていた衛兵に向かって叫んだ。
帰りに街の近くで商人達の馬車を追い越したのだ。
「判った。」
衛士が仲間にも声を掛けている。
俺は先にギルドに戻る。
「帰った。」
「ご苦労様でした。」
「盗賊、賞金首。」
首が3つ入った樽をギルドの床に出す。
ギルド職員が鑑定のために奥に運んで行った。
「少し待って下さいね。」
「角猪1頭。」
「それはあちらのカウンターにお願いします。」
「うん。」
角猪を出し、依頼掲示板を眺めて待っていると声を掛けられた。
「レオ、盗賊ってどこで?」
「北5キロ?」
「人数は?」
「5~60?」
「怪我をしなかったか?」
「うん、シロは強い。」
「そうだな、シロは賢いだけじゃなくて強いからな。」
周りの冒険者たちも頷いている。
ホロルに来て1年半、冒険者レベルもCランクになり冒険者達にも認められるようになっていた。
「シロ、干し肉だ。」
冒険者のおっちゃんがシロに干し肉をくれた。
シロが嬉しそうに食べている。
今ではシロもすっかり街の人気者になっている。
「レオさん。」
ギルドのお姉さんから声が掛けられた。
カウンターに戻った。
「賞金首が3人、盗賊討伐報奨金を合わせてこれだけになります。」
明細書を渡された。
大金の場合は他の冒険者に判らないように明細書で渡される。
俺の場合は全て振り込みにしているので現金のやり取りは無い。
「うん。」
明細書を受け取ってギルドの竜騎士宿舎に帰った。
朝、食堂に降りると昨日の冒険者が来ていた。
「昨日はありがとうございました。」
「うん。」
「盗賊の件ですが。」
「任せる。僕はいらない。」
「ですが、・・」
「武器、防具修理。」
冒険者達の武器や防具はかなり破損していた。
盗賊を奴隷として売った代金で多少は直せるだろう。
「すみません、助かります。」
「うん。お疲れ。」
冒険者は笑顔で帰っていった。
今日もお空の散歩。
最初のころは時々盗賊が出たけど、1年経った頃から少なくなって、最近は殆どいない。
魔獣も少なくなってきた感じ。
シロが大きくなった時に新品の騎乗具を作ってあげようと頑張っているけど、あまりお金が溜まらない。
書庫の本は殆ど読んでしまったので最近は週に4日お仕事をしているが素材の収入が少ないから以前より収入が減った感じ。
そうだ、アルバイトをしよう。
街道沿いに魔獣がいないなら、警備の帰りに岩山に行って魔獣を狩ればいい。
森は危険だから、見晴らしの良い岩山にした俺って偉い。
岩山には魔獣がいなかった。
餌になる草も生えていないから当然か。
良し、川に行って魚を捕ろう。
シロが頑張って捕まえたけど、二人で食べたらなくなった。
売るほど捕るのは無理そうだ。
そうだ、丘に行ってゴロゴロしよう。
シロと二人で丘をゴロゴロ転がって楽しかった。




