伝えられない、その想い
バイトの休憩中。
スマホの画面に表示されたのは、高校時代の同級生の名前だった。
高槻功太郎。
数秒思案した私は、スマホのバーを受信の文字へスライドさせる。
「……もしもし?」
『……あ、皐? 久しぶり』
高校を卒業して早五ヶ月。
うん。相変わらず声だけは良い奴だ。
『俺、今どこにいるかわかるか?』
いきなり何を言い出すんだ、こいつは。
「前情報もないのに、わかるわけないでしょ」
『今度オープンする、うちのレジャー施設なんだけどさ』
耳元では、プレオープンで招待されているとかなんとか、そんな言葉が続いていた。
(はあ……またか)
私は溜め息を堪えて言葉を絞り出す。
「あっそう。良かったわね」
『なんだよ、ノリ悪いな』
それは自分が一番よくわかっている。
「こっちはバイトで忙しいの」
もうすぐ休憩が終わるからと嘘をついて、私は電話を切った。
暗くなったスマホの画面に、自分の顔が映りこむ。
「……」
ダメだ。
私はスマホをポケットにしまった。