まさかの弁護士。
直ぐ行くって言ってて優雅に朝食…ソレで良かったのか!?
「…って事で、学校に呼び出されてて…」
「えっ!?そぉだったの!?しかもわたしまで!?」
「うん…行かない?僕は一応行くけど…」
「…静也くんが行くなら、わたしも行くよ。御免なさいって言われるだけでしょ?」
「ん?あぁ…翔子さんはね…でも、僕は芦田に手も出してるからなぁ…」
「…アレは自業自得だったと思うけど…」
「でも、世の中結果が全てなんだよね。」
「なんか納得出来ないなぁ…」
等と話しながら、僕達は玄関を出て、駅に向かう。いつも通る公園は土曜日と云う事も有り、親子連れが散見される。
「なんか、いつもと違う雰囲気だね。」
「うん、いつもはほとんど人が居ないのにね。」
きゃっきゃっとご近所さん達だろぉか、無邪気に子供達が走り回ってる。うんうん、平和はいい事だ。いぢめなんてバカなマネはしない様にね。
駅に着き、学校の最寄り駅に停まる電車に乗る。
「わぁ…今日はまたなんでこんなに人が多いんだろ?」
土曜の午前九時。電車はカップルが多いな…あっちこちでイチャイチャして、ピンク色に染まってる感じだ…
「多分デートだろぉね。ほら、学校の二つ向こうの駅の近くにテーマパークとか色々有るでしょ?」
僕は予想出来た内容を話してみる。
「あぁ…そぉ云えば有ったね。行ってみたいとは思ってたけど、ちょっと勇気が要るからなぁ…」
「勇気?」
「うん、おにぃちゃん達はデートで使ってるとか言ってて…わたしはそんな相手居ないから、一人で行くのも…って…」
なるほど…確かにそんな所に一人で行くのは勇気が要るよね。
「女の子同士とかでもダメなの?」
「女同士でも良いけど…ソレって、「わたし達には彼氏の一人も居ません。一緒に遊んでくれる方は居ませんか?」って言ってる様なモンだよぉ?」
なるほど…ナンパ待ちって思われるのか…ソレなら…
「ぢゃぁ、学校終わったら行ってみる?」
と、勇気を出して誘ってみた。断られたら泣こぉ…
「えっ!?わたしと!?良いの!?」
「へっ?うん…良いも何も僕から誘ってるんだけど…」
「あ…うん…そぉだね…うん、ぢゃぁ、後で行こ!!絶対だかんね!!」
「うん。」
と、話し合いが終わった後の約束をして、電車から降り、そのまま学校に向かう。
学校に着き、職員室に向かった。
駅から学校に向かう途中、柴田先生に電話したら、職員に来る様に言われたからだ。
「失礼しまぁす。」
「しまぁす。」
僕に続いて翔子さんも挨拶をして、職員室に入った。
「おぉ、二人共、休みなのに呼び出して済まないな。」
と、柴田先生が手招きして来た。
「いえ、まぁ、平日に出来ない内容の話でしょぉから…ま、仕方無いですね。」
「あぁ…気を遣わせて済まんな…」
「いえいえ、それで、芦田は?」
「あぁ、もぉ来てるぞ。両親と弁護士先生と一緒に応接室だ。」
「なら、さっさと行って、さっさと終わらせましょぉか?」
「ん?何か用事でも?」
「はい。」
僕と柴田先生の話を、翔子さんは傍観していた。ま、話しても楽しい内容ぢゃ無いからね。
僕はコッソリ父さんに電話をしてみる。
「あ、父さん、コレから話し合いみたいだよ。」
『…そぉか…いや、その件だが…そぉだな…電話は切ってて大丈夫だ。心配するな。』
って、電話が切れた…
なんだよ?騙されると悪いとか言っててさ…
「お待たせしましたかな?丁度今、二人が来ましたよ。」
と、柴田先生が言いながら中に入った。それに続いて僕と翔子さんも入る…
なるほど…弁護士…には違い無いんだけど…芦田ぁ…なんで父さんを連れて来てるかなぁ…
「お二人にはウチの愚息がご迷惑をおかけして、申し訳御座いません。」
って、芦田達の前に行ったら、父親…だよね?がそぉ言って頭を下げて来た。イヤ、かなりのご高齢だろ!?お祖父ちゃんかと思ったぞ!?
「いえ…お気になさらず…」
僕はそぉ言ってからソファーに座った。隣に、翔子さんも座る。
「さて…いきなり本題に入りたいのですが…まず、芦田さんからの提案を出したいと思います。」
と、父さんが本題に斬り込んで来た。
その書面を見ると、僕には、治療費とは別に慰謝料が五十万円、翔子さんには慰謝料五万円を支払う旨が書かれていた。
コレは、芦田が空手の有段者で、刑事事件に発展すれば間違い無く、僕に対する殺人未遂罪と、翔子さんに対する侮辱罪が適用され、民事で少なくともコレくらいは支払命令が出るって額かな?
「この額は被害者として見ると、かなり安くされているとお感じになると思いますが、今回の御堂君の怪我の内容が、左腕の骨折だった為に、この額になりました。申し訳なく思います。そして、水野さんに関しましては、現行法で払われるべきであろぉ最大の額を提示してあります。お二人が腹の虫が収まらないので在れば、芦田さん達はコレから警察に出頭し、刑に服すと仰ってます。民事裁判になっても、慰謝料額は然程変わらないと考えています。私としましては、この額で納得頂けると幸いです。」
って、父さんの営業トークとか、初めて見たぞ!?しかも顔色を一切変えてないし…プロだな…見習わなきゃ…
「そぉですね…芦田君と、ご家族の誠意がはっきりと伝わって来ましたので、僕としては特に何も有りませんし、刑事事件にしよぉとか思ってません。」
「わ…わたしも、謝ってくれてるので、それ以上は何も考えてませんでした。」
僕に続いて、翔子さんもコレで良いよ。と意思表示をする。父さんが算出したんだから妥当な金額だと思うしね。
「そ…そぉですか!!二人共ありがとぉ!!」
芦田の父親は、その場で、テーブルに頭を擦り付けた。
「二人共、本当に御免なさい!!」
芦田も同じく頭を下げて来た。
「あ、もぉ謝らないで良いですよ。芦田君が本当に優しい人で、曲がった事が嫌いだって事は知ってますし、今回の事も、言葉巧みにクラスを欺いたヤツが一番悪いんですから。言うなれば、芦田君も被害者なんですから。」
と、フォローしておく。
「そぉ言って貰えると助かります…」
と、芦田父さんは頭を上げて、笑顔になってくれた。
「では、この件はコレにて終了と云う事で良いですか?」
父さんの言葉に、その場の全員が「はい。」と返事をした事で、お開き…にはならなかった…
「では、ココからは、私も一父親として、発言をさせて頂きます。」
父さんの言葉に、僕と翔子さん以外の頭にはてなマークが浮かんだ。
「父親としては、今回の件、思う所が有ります。元凶を潰さなくてはなりません。柴田先生、何卒、そこの所をお考え下さい。」
父さんの鋭い睨み付けに、柴田先生はたじろぎ、首をコクコクと振るのが精一杯だった。
「あの…御堂さん?えと…もしかして…」
「はい、お察しの通りです。」
父さんに話しかけた芦田父さんの顔から血の気が引いていた。
「仕事は仕事、家族は家族です。静也もソレで良いか?」
「はい。今回は父さんの仕事振りが見れて、とても勉強になりました。芦田さん、父さんに依頼して下さりありがとぉ御座いました。」
今度は僕が頭を下げた。
僕と父さんを交互に見遣り、芦田父さんは、
「コレは参ったな…静也君、良かったら、今後、このバカ息子と仲良くしてくれると助かるのだが…」
「はい。この件の真実を知って、彼はすぐに頭を下げてくれましたし、僕の方は変な蟠りとか有りませんので。」
僕は翔子さんを見たら、
「わたしも特に思う所は有りませんよ。」
と、この件はこの場で丸く収まった。
時間も余りかからずに、話し合いも終わり、芦田父さんに食事に誘われ、父さんも含め、五人で近所のファミレスに行く事になった。
柴田先生はまだ仕事なんだって。
弁護士をしてるとこんな事も有るんですねぇ…




