体臭付与。
強烈なうんこ臭…ま、十五歳の少年の考える、女性への嫌がらせって、こんなもんなのかなぁ?小学生レベルなのかも…
駅に着いて、ソコから学校までは何事も無く、少し肩透かしを喰らった感じだ。
「なんか期待以上の事ってなかなか起きないんだね…」
「そりゃそぉでしょ?そんなゲームみたいな人生とかやだよ?」
「だよねぇ…」
うぅ〜…高木君があんなこと言い出すからまともに水野さんの顔も見れないし、変に意識して、会話も変になっちゃうぢゃんか!!
そんな感じで教室まで何事も無く着いて、雰囲気がいつもと違う事に気付いた。
「ねぇ、なんか変な感じしない?」
水野さんも気付いたか…
「うん、僕も感じる…なんだろ?」
僕を見るみんなの目が、蔑むモノでは無く、なんかこぉ…畏怖?みたいな?なんなんだこれ?
「あっ!!なぁ御堂!!」
アレ?コイツは…前に僕を蹴ったヤツ…だよね?
「なに?」
「あそこの駅前で刺されて無かったか!?」
ん?アソコの駅前?
「もしかして、一昨日?」
「そぉ!!三人相手にさ…」
「あぁ、ソレなら間違い無く僕だね。左肩を刺されたけど…ソレがなにか?」
「アレって、あっちの高校のヤツ等だったよな?」
「あぁ…そぉだね。コッチに来れる程には勉強出来て無かったっぽいから…」
「ん?知り合いだったのか!?」
「廃校になった中学の同級生だったと思うけど…」
廃校になった中学…私立中学だったけど、いぢめ発覚で、ソレが教員主導で、しかも一条の関係者…僕を狙っての犯行だったから割と有名な事件で、半年以上経った今でも皆んなの記憶にも残ってるんだよね。
「ほら!!あの時、なんで抵抗しないのか不思議だったけど、御堂が手を出してたら間違い無く逮捕されてたのは御堂の方になったもんな!!良く耐えられたなぁ…」
なるほど…コイツは見てただけのヤツなんだな?
「見てたんなら助けてくれても良かったんだよ?」
「ばっ!!アイツ等妙な結束力が有って、自分達がケンカ売ってても、返り討ちに会っても仕返しする様な連中なんだぞ!?相手にしてらんねぇって!!」
「ふぅ〜ん…あれ?そぉなると、僕が殴られて、蹴られたせいで逮捕されたからって、僕にお礼参りとか有るのかなぁ?」
コレはいぢめる側の理論なんだけどね。
いぢめは、いぢめられる方に問題が有る。いぢめるヤツが、いぢめられる人を気に入らないからいぢめられる…要は、いぢめる側の気分次第で、いぢめの建前の理由なんて、どぉとでもなる…そして、教員も、多数の意見のみを聞き、いぢめられる側にはお前が悪いと叱る。いぢめが無くならない原因だ。
「ん〜…どぉかなぁ?御堂はヤられただけだから多分大丈夫ぢゃ無いか?ま、仕返しが来ても御堂なら大丈夫だろ。」
「大丈夫ぢゃ無いよ。」
「えっ?」
「僕は見た目通り非力で臆病者だからね。」
「でも、小根は座ってるだろ?」
「そんな事無いんだけどなぁ…どこで勘違いされたのやら…」
と、話してたら、
「御堂ぉ〜!!テメェのせいで久保と田川と飯塚がデコに連れてかれたぢゃねぇか!!どぉ始末付けるんだぁ!?」
と、汚いダミ声を上げて久田美久が詰め寄って来た。
見ないなぁ…とは思ってたけど、僕達より後に来たのか…
「久保?田川?飯塚?誰ソレ?」
僕はサッパリ解らなかったから聞いてみた。
ついでに、さっき作った臭いを発する様にしてあげる。
「ふざけんな!!一昨日、テメェが絡んだヤツ等だよ!!」
僕は誰にも絡んで無いんだけど…おっと、あの臭いの名前付けて無かったよね?[体臭付与]とか良いかも…
『能力[体臭付与]命名受け付けました。コレにより、体臭の微調整が可能になりました。対象、久田美久に[体臭付与]を実行しますか?』
おっ?なんかスゴい事になって来たぞ!!はい!!久田美久に体臭付与!!超強悪臭のうんこ臭!!レベル最大!!直径五メートル以内!!異性にのみ!!
『その条件ですと、対象に生涯影響が出ます。よろしいですか?』
はい!!お願いします!!って、五十年って言って無かったか?
『半径を半分に設定し直したからです。対象、久田美久に体臭付与。完了しました。』
よし!!コレで…くさっ!!誰か下痢でも漏らしたのか!?
「僕は誰にも絡んで無いんだけどなぁ…」
僕は臭いに我慢しながら答えた。
「はぁ!?テメェ!!ふざけてんのか!?何もかもテメェのせいなんだよ!!」
と、理不尽な事を言ってくれる…ソレにしても臭いんだけど!?気が狂いそぉなんだけど!?
でも、こんな感じになるんなら、他の人はどぉなんだろ?
「なぁ、誰か漏らしてね?」
「あぁ、強烈な臭いだな…」
「何処からだよ!?」
「あ、ココまで退がると臭わないぞ。」
「あ!!ホントだ。良かったぁ…」
と、男達が話してるのが聞こえる。
正常に作動してるみたいだね。
「何もかも僕のせいって、ただの言いがかりなんぢゃ無いかなぁ?」
「うるせぇ!!テメェがアイツ等の前に顔を出したのが悪いんだろぉが!!」
久田美久が言葉を発する度に強烈な口臭が撒き散らされる。
くっせぇ〜!!
失敗したぁ!!臭う対象を、僕以外の男にするべきだったぁ〜!!
僕が後悔の念に苛まれていたらチャイムが鳴り、久田美久の言いがかりもそれまでとなった。
うんこ臭は諸刃の剣でした。




