一応の平穏。
爺さんは動かないのかな?
教室に戻ると、喧騒は無くなっていて、代わりに静寂と携帯電話やスマートフォンをぽちぽちする音が支配していた…
「なぁ、何見てんの?」
僕は自分の席に戻り、前の席に座って携帯電話と睨めっこしていた相田に話しかけた。
「ん?あぁ、皆んなニュースサイトに夢中になってるだけだ。」
なるほど、あんな事件があって、死者も怪我人も多数居て、冷静さを保ってる方が不気味か…
「何か真新しい情報はあった?」
僕の問いに相田は、疲れた表情を隠そぉともせずに携帯電話を見せてきた。
「…大して新しい事は書かれて無いぞ。ま、色んなサイトで話題になってて、色んな憶測が飛び交ってるけどな…」
なになに…
[太古の呪いか!?]
[コレが日本の現状!!]
[日本の平和神話崩壊!!]
[自衛隊の出動要請は出たのか!?]
[なに踊らされてんだ?撮影か何かだろ?]
等々、無責任な書き込みが色んなサイトに書き込まれている…
うん…これはコレで日本人の現状が良く解るよ…
大きなニュースにはなってるみたいだよね…警官が撮影者を威嚇射撃無しに射殺しているのが他の人の撮影で判明してるんだよね…冷静に撮影して投稿までしてるって…ホント、人間ってコワいね…
「ま、当事者ぢゃ無いならこんなもんだと思うけど?」
僕の言葉に相田は眉を顰め、
「…お前、達観してんなぁ…」
って、そんな事無いんだけどなぁ…お爺様にされた教育のせいだな…確実に。
「常に冷静であれ…母方の祖父の言葉だよ。全ての事柄、全ての状態を客観的に見て判断しろってね…」
僕はお爺様の教育方針を相田に話してみた。
「…なんだそりゃ?そんな事普通に出来るのか?いや…お前は出来てるんだよなぁ…」
相田はうんうん唸り、考え込み…
「やっぱ無理だ!!言うは易し行うは難しの代表例みたいなもんだぞ?」
相田は自分には出来ないと結論付けていた。ま、確かに一朝一夕には無理だよね。僕も無理だったから自殺を選ぶ事になったんだから…
「死ぬ目に遭えば出来る様になるかもね。」
僕は自身の体験を口にしていた。
「なんだそれ?それこそ願い下げだっつぅの!!」
相田は正直な気持ちを吐露してくれた。
ま、普通は常軌を逸した訓練で身に付ける様なモノだからね。
「あははっ、普通はそぉだよね。」
僕はここに来てやっと笑顔になれた気がした。
相田ってムードメーカー?
「男二人で何を盛り上がってんの?」
隣の席で携帯電話と睨めっこしていた翔子さんが声をかけて来た。
「いや、皆んなのサイトでの書き込みを見てね。」
僕は相田の携帯電話を翔子さんに手渡し、あの書き込みを見てもらった。
「…うわぁ…みんな好き勝手書いてるね…コレってホントにそぉ思ってるのかな?」
目をまん丸に見開いて、相田の携帯電話を凝視する翔子さん…かわいい…ぢゃ無くて!!
「ほら、日本って銃社会ぢゃ無いから、現実味が無くても当然で、対岸の火事状態なのも仕方無いと思うよ。」
「確かにそんな感じを受けるよね…日本人って、ここまで危機感無いんだね…」
翔子さんは間髪入れずに感想を漏らしていたけど、確かに危機感無さ過ぎるか…
…その辺も含めて坂下当太の策だったとしたら…僕は相手を甘く見過ぎていた!?
いや、そぉ考える方がしっくり来る…
あの誘拐事件を潰した時、すぐ側まで来ていたのに、そこに思い至らなかった僕のミスだな…今回は多数の犠牲者を出した僕の敗北だな…
「なぁに難しい表情してんだよ?」
僕が考えを巡らせていると、相田が能天気な事を口にしていた。
「ん?あぁ…ちょっと考え事がね…」
僕がいぢめに遭った原因を作ったのは坂下当太だった…そしてあの時、駅で捕まえられなかった後悔が胸を抉るなぁ…
「ねぇ、もしかしたら、自分のせいとか思ってたりする?」
翔子さんは僕の顔を覗き込み、可愛く聞いて来た。
僕はその考えも有った…いや、その考え方しか出来ていない…
「違うのかなぁ?」
僕は自信無さ気に問い返した。
「違うよ?静也くんは何も悪い事して無いよね?」
僕は首肯して応えた。
「だったら気にするだけ無駄だよ!!徹頭徹尾悪いのはこんな事態を引き起こしたヤツなんだから!!」
翔子さんは悩む僕を気遣ってそんな励ましを言ってくれた。
ホント有難い事だ。
「…そぉだね…うん。あまりそこに捕らわれない様にするよ。」
そぉは言ったものの、これだけの事が出来るなら一条でもどぉも出来ないかも知れない…一応お爺様達家族には操られない様にはしてあるけど…
うん。取り敢えずは一人で考えるより、皆んなと相談するのが良いね。
その後、街は一応の平穏を取り戻したと学校側からの通達が有り、下校出来る様になった。公共交通機関も動き始めたと先生は言っていたけど、ホントに動かしてるのかなぁ…
「明日からしばらくお休みにするって…ま、これだけの事があったんだから仕方無いか…」
翔子さんは少し不安そぉにしていた。
そんな翔子さんの頭をぽんぽんと撫でながら、
「大丈夫だよ。絶対なんとかするからさ。」
僕は渾身の笑顔で翔子さんを安心させてみたかったんだけど、
「お前等なぁ…イチャつくなら二人だけの時にしろ!!爆発しやがれ!!」
相田が涙目になりながら僕にツッコミを入れていた。
うん。確かに周りの目が少し痛いかな?
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