悪口。
侑の体調はどぉなってるのでしょぉか?
「あれ、静也くんの仕業でしょ?何をしたの?」
集中治療室を出た僕に翔子さんが小声で話しかけて来た。
「ん?うん。時間を七時間巻き戻してみたんだよ。ま、その間の記憶も巻き戻されるけどね。」
僕は今回使った能力を掻い摘んで説明した。
「そっか…死んでても出来る事なの?」
なんか難しい事言い出したぞ…
「多分だけど、それは無理ぢやないかな?そこまで万能だとかなり怖いよ?」
そぉ、魂とか、霊魂だの魂魄だのが有るか知らないけど、それまで巻き戻せるか解らないから、安易な事は言えないね。
「そっか…なんか安心したよ。ありがと。」
何が安心なのか解らないけど、コレで良かったのかな?
その後、全員で静かに医師の判断を待っていたら、十分程で医師が集中治療室から出て来た。
「医師!!息子は!!侑はどぉですか!?」
翔子さんのお父さんはそぉ言い、医師に詰め寄っていた。翔子さんのお母さんと侑二さんと翔子さんも心配みたいで、真剣な表情で医師の判断を待っていた。
「あ〜…その…非常に稀有な事ですが、本人は何故ここに居るのかが解って居らず、襲われた時の記憶が無く、身体の方も傷が全て無くなっている様な感じでして…明日、精密検査をして、その結果次第では即日退院も有るかと思います。」
なんか歯切れが悪いけど、特に異常が見当たらないと云った感じかな?ま、怪我をする前まで時間を巻き戻したんだから当然の見解だ。
「…良かったぁ…」
涼ねぇはそぉ呟き、その場に座り込んでしまった。
涼ねぇと侑さんの関係性はちょっと見えないけど、やっぱりかなり心配していたみたいだ。
「えと…つまり、侑さんは何事も無かった様な感じで、大丈夫って事か?」
「みたいだな。何はともあれ一安心って所か?」
鈴木君と佐藤君はイマイチ状況を掴み切れて無い様だけど、概ねその通りだから余計な事は言わないでおく事にした。
「高木、佐藤、鈴木、ありがとな。世話になった。アニキにはオレから説明しとくよ。」
侑二さんは高木君達にお礼を言っていた。聞いた話では、三人がたまたま駆け付けて、警察に通報しつつ相手を取り押さえたみたいな感じだったから、そのお礼かな?
「いえ、オレ達も侑さんとは面識も有りましたし、涼音さんとも幼馴染ですから、お礼なんて…先輩もお気を付け下さい。ヤツ等の仲間が先輩も狙わないとも限りませんので。」
高木君は謙遜しながらも、侑二さんを気遣っていた。
あっ、そっか!!侑二さんも工業高校に行ってて、三人の先輩に当たるんだ!!そりゃ仲良しな感じもするよね。
「あぁ、心配しなくても大丈夫だろ。実際に行動に移すヤツは今回のヤツ等だけだろぉからな。」
なるほど…逆恨みを行動に移すか移さないか…その差を見極めたのか…でも…
「確かにそぉでしょぉけど、誰かに何かを吹き込まれるって事は有るのでは?光秀みたいな感じで…」
高木君は何を言って…光秀?あっ!!明智光秀か!!なんでか知らないけど、いきなり信長を襲って討ち取ったって云う!!
「…なるほど…有るかもな…でも、そぉなるとオレより翔子が…」
その心配は当然だな…僕でもそぉ感じるから。
「それこそ余計な心配だと思いますよ。彼女には有能なボディガードが居ますから。」
高木君はニヤリとして、僕の方を見た?
「コレがねぇ…」
侑二さん…コレって…
「ま、見た目だけなら、小柄でヒョロい感じですが、空手の有段者を一方的にボコれるくらいには強いんですよ。ボコられたヤツを見ましたが、かなり良いガタイしてましたよ。」
あっ、相田の事か…確かに相田は百八十センチくらい身長もあるし、ソレに見合った身体をしてるからなぁ…
「…まぢ?」
「まぢです。」
侑二さんと高木君はユーマでも見る目で僕を見て来た。
なんでそんな風な目で見るかなぁ…
そんな感じでそのまま居るのも病院に迷惑っぽいので、一旦帰る事になった。
「ぢゃぁオレ達はそのまま帰ります。侑さんにもお大事にとお伝え下さい。」
高木君達と涼ねぇは翔子さんの両親に挨拶して、タクシーで帰って行った。翔子さんのお父さんは、タクシー代を先に運転手さんに渡していた。
「坊ちゃん、どぉでしたか?」
ここ迄運転してくれた運転手さんはタバコを吸いながら声をかけて来た。
「本人は意識を取り戻しましたが、明日精密検査をして、問題が無ければ退院だそぉですよ。」
僕は正直に現状を教えてあげた。
「そりゃ良かったですね。どぉします?会長の所に戻りますか?」
ん〜…僕はそっちに戻っても良いけど…
「先に水野さん達を家に送り届けて、僕はお爺様の所に戻ります。侑さんが意識を取り戻したのですから、僕は居ない方が気を使わないで済むでしょ?」
家族の団欒に僕は不要だよね。
「そぉですね。では水野様、お宅にお送りさせて頂きます。」
運転手さんは車のドアを開けて、翔子さん家族を乗車させ、僕は勝手に助手席に乗る。
「水野さんのお宅は、僕の家の隣のマンションだから。」
僕は向かう先を運転手に教える。
「了解です。」
運転手さんも僕の家は知っているので、そのまま発車し、安全運転でマンションに送ってくれた。
「帰りは安心して乗っていられましたよ。」
苦笑いで翔子さんのお父さんは運転手さんにお礼を言っていた。
「はははは…あんな運転は急ぎの時にしかしませんよ。」
運転手さんは荷物を出しながらそんな事を言っていた。
本当にそぉだと良いけどね…
翔子さんは車中でグッスリ眠っていて、今は侑二さんにお姫様抱っこされている。
「では、僕もコレで失礼します。」
僕は翔子さんのお父さんに頭を下げてお暇の挨拶をする。
「静也君もありがとぉ。また明日、結果だけでも連絡するよ。」
僕は既に心配はして無いんだけど、
「はい。侑さんには良くして頂いてますので、そぉして貰えると嬉しいです。」
と、翔子さんのお父さんと握手をして、僕はお爺様の家に向かう車中でいつの間にか寝落ちしていた。
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