20回目のNTR
結局、またこうなってしまった。これで20回目だ。
20回記念。といえるようなものではない。なぜなら、20回目のプロポーズ失敗だからだ。
しかも20回も親友にNTRされるという、俺はどんな業を背負っているのかと、天を仰ぎたくなる。
「ごめんなさい」
付き合って1年。少し早いかもと思いつつ、勇気を振り絞ったが玉砕した。理由を聞いてみると、
実は数か月前から俺とのことを迷っていたそうだ。今日のプロポーズで別れる決心がついたらしい。
なんだよこれ…。
中学時代の同級生である智美に振られたのはこれで20回目だ。
なんで20回目なのかというと、俺は振られた後に事故にあい、その都度、過去に戻っているからである。
この異常に気が付いたのは、もちろん、最初に過去に戻った時だ。
仕事に失敗し、職場での執拗なパワハラに疲れ絶望した俺は練炭自殺を図った。
ところが目が覚めてしまった。
【ああ、失敗したんだ…】
死ぬことすら失敗した絶望に襲われた俺はふと天井を見たときに異変に気付いた。病院でもないし、俺の部屋でもない。しかし見覚えはある。
起き上がってみると、見覚えがある実家の俺の部屋だった。俺は実家に運ばれたのか?何故?
ふと横を見ると、何度もやっていたゲーム機がある。
「馬鹿な。これは実家を出るときにもうすることがないと捨てたはずの…」
これは死ぬときに見る走馬灯というやつだろうか?窓から外を見ると、昔見た風景が広がっている。
どうせ夢なら。
俺はゲームを始めた。懐かしい。懐かしさに顔がにやける。
「何時だと思ってるの?明日は学校でしょ?」
扉が開くと同時に声を掛けられた。母親である。
「これは夢だろ?」
「何をわけのわからないことを言っているの。早く寝なさい」
やけにリアルだ。
「いやいや、学校ってどこだよ。今さら学校に行けと?」
「学生は学校に行くもんでしょ」
「は?」
なんだこれは。夢ってのはもっと俺の思い通りになるもんだろ。
「学校ってどこだよ」
「中学校に決まってるでしょ。わけのわからないことを言ってないで、早く寝なさい。」
そういいつつ、母親は扉を閉めていった。
中学校?馬鹿な。。。
部屋を見渡してみる。よく見ると部屋のものが記憶と違う。
あの時捨てた机があり、買ったはずの本棚がない。
過去に戻った夢を見ているのだろうか。やはりこれは走馬灯か。
ひとしきりゲームをやったあと、睡魔に襲われたので、俺はそのまま眠りについた。
朝起きると。
同じ部屋だった…。
何が起こっている。本当に過去に戻ったとでもいうのだろうか。だとしたら今はいつだ。もし、過去に戻ったのなら、株を買ったり、馬券を買ったり、やりたいことは山ほどあったのだが、
全く覚えてきてない。当然だ。こんなことが起こると思っていなかったのだから。
カレンダーを見る。2008年6月18日水曜日。10年以上前に戻ってしまっているようだ。
そうして、俺は2回目の中学生をやり直し、当時付き合うことができなかった智美と付き合うようになり、社会人となった。
そして、25歳のクリスマス。智美からの電話で俺たちは分かれることとなった。好きな人ができたらしい。
2年後、親友から届いた結婚式の招待状で俺は理由を知ることとなった。
結婚式の2次会で、俺は知りたくもない事実を知った。
大学を卒業してから、2股をされていたらしい。共通の友人たちは言おうとしたが言えなかったと謝られた。
「クソが」
こんな不愉快なことはない。俺は仕事に生きる!そう決めた。俺は順調にキャリアを積み、仕事面では充実した生活を過ごしていた。
しかし…
いつもの帰り道、横断歩道を渡っているところで、突然の衝撃とともに体が浮かんだと思ったら、次に目が覚めると、また、中学生時代の俺の部屋に戻っていたのだった。
「なんだこれは…。」
また、俺は過去に戻ったというのか。何のために?俺は人生をやり直せるのか?
3回目の中学生でも俺は智美と付き合った。
3回目は、卒業後に2股をかけられるという前回の経験を活かし、卒業後に同棲を持ち掛けてみた。
あっさりオッケーをもらえた俺は有頂天となり、幸せな毎日を過ごしていた。
しかし、同棲して3年後のクリスマス。
帰ってきた家で見たのは、親友と抱き合う智美だった。
そうして俺はまた智美と別れることとなった。
「クソが!」
俺は考えた。また、死ねば過去に戻れるのでは?
やけになった俺は自死を選択した。
「当たりだ…。」
記憶にある部屋だ。カレンダーを見ると2008年6月18日水曜日。何の記念日でもないのだが、またこの日に戻ってきた。
俺は考えた。智美と付き合っても、長続きしているようで最終的にはフラれるようだ。
だったら、智美と付き合うのを止めてみよう。そう俺は考えた。
4回目の中学生活で、俺は唯と付き合った。しかし高2の夏に別れてしまった。
そして、大学入学後、初めての講義で隣の席に座った女子から声がかかった。
「久しぶり。xxだよね。元気してた?」
智美だった。
「おぉ。この大学だったのか。久しぶり…。」
動揺しつつ、俺は無難な返事をした。
「付き合わない?」
3か月後、智美から告白された。智美から告白されるとは思ってなかったため、
おれは、考えた結果、付き合うこととした。
楽しかった。
今回の人生では、親友だったあいつとは、関わりを持たずに過ごしていた。
だから、苦しい思いをすることはないと考えていた。
「この垢、お前の彼女じゃない?」
見せられらた、SNSのページを見せれて、俺は3度目の絶望を味わうこととなる。
鍵付きの投稿で、キスする2人の写真が載っていた。
智美とあいつだ…。
「なんで…。」
俺は声が出なかった。今回の人生では関わっていなかったはずなのに。
過去に戻ったところで、またこの苦痛を味合わされるのか?回避しようとしても回避できないのか?
何だ。顔?性格?趣味?付き合い方?何故にいつもあいつなんだ?
取られるにしても、他の奴であってもおかしくないだろ。気が狂いそうだ。
今度は考えた。金だ!株や競馬、宝くじ。色んなもののうち、暗記できる範囲で暗記して自死しよう。
5度目の人生は、金の力で幸せになってやる。
そうして、俺は5度目の中学生に戻った。
しかし…。
何故か、俺は智美と付き合い、あいつにNTRされる。5度目もNTRを味わった。
そうして、今、俺は20回目のNTRを食らった。
どうすればいい。どうすれば、この狂おしい思いをしなくていいのか。
女は智美だけじゃない。そう思って、智美以外と何人とも付き合った。
しかし、最終的に心が満たされず、智美と付き合ってしまう。
17回目の時など、高校生で親同士の縁から婚約するという、時代錯誤な出会いを果たしていた。
20回も同じ女を親友にNTRされる。これがどんな気持ちかわかる人が居るだろうか。
一度であっても、殺してやりたいほどの怒りを得るだろうに、それが20回である。
もちろん、この人生では初めてなので、経験としては1回のはずだが、前の人生の記憶を
持っている俺は20回の経験をしている。
憎い。
ただひたすら憎い。
智美とアイツ。いっそ、事故を装って、中学時代に再起不能にしてしまってもよいのではないか。
20回もこんなめに合わされると、俺の思考も危なくなってきている。
おれは20回も生きているのか?それともひたすら続く走馬灯か?
本当は植物人間となってベッドで寝ている俺が見ている夢なのではないか?
そんなことを考えながら、向かいの席にいる智美の顔を見た。
暗く沈んだ顔の智美。
俺は智美を置いて、店を出る。
21回目を迎えるのはもうごめんだ。
俺は、もう戻りたくはない。幸い、何もせずに怠惰に生きていくだけの金は貯まっている。
毎回、同じように株を購入して、同じように利益を得ていた。
俺は決めた。可もなく不可もなく、毎日を適当に楽しもう。そう決めた。
「今日はここに行こうかな」
風俗サイトを見ながら、適当に好みのタイプの感じの女の子を探す。先にホテルに行き、女の子が来るのを待った。
ピンポーン
「はーい」
女の子とが来たようだ。俺は部屋の扉を開ける。
「寒いですねー。こんにちわー。」
聞き覚えのある女の声。
顔を見ると、智美だった…。
「なっ…。」
「こんにちわ!。入りますねー。」
俺の様子を気にもせず、智美は陽気な声で部屋に入ってくる。
何だこれ何だこれ何だこれ何だこれ何だこれ何だこれ。何がどうなって智美が?
混乱する俺をよそに智美は会話をしてくる。
「お兄さん、お仕事帰りですか?今日は私を指名してくれてありがとう!」
「…」
俺はまだ振り返ることができなかった。
ザクッ!!
背中が熱い。痛い。痛い痛い痛い。立っていられない。俺は床にへばってしまう。
何が起こった?目が開けない。
「うぐっ。」
声にならない。薄れゆく視界の中、智美が笑ったような気がした…。
「そんな…」
また、俺は過去に戻ったようだ。ループするしても、限度があるだろう。
いい加減、気が狂いそうだ。いや、もう既に俺は狂っているのかも知れない。
狂った俺が見ている夢なのかも知れない。
翌朝、繰り返してきたように学校に行った。
変わらない校舎。変わらない教室。
今回は俺はどう過ごそうか。もう、そろそろ限界だ。同じことを何度も繰り返す。
こんな苦痛はない。
「xxー。」
振り返ると智美が居た。
この時点では智美と俺は単なるクラスメートで、大した関係性はない。とはいえ、同じクラスだし、おかしくもないか。心を静めながら智美のほうに俺は振り返った。
「痛かった?ごめんね?」
智美は確かにそう言った…。
基本的にはモヤモヤして終わるホラーものですが、スッキリできるか分かりませんが、ニ編ダラダラ流します。読んでいただければ幸いです。
2回目
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21回目
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