幸運のトランプ[4コマ漫画つき]
姉弟シリーズ、第2弾。
今回は、姉が主役です。
ひとがおそれるもの。さまざまなものに、おそれをいだいて、我々は生きている。
するどいもの。
はげしいもの。
暗いもの。
そして、未知のもの。
希望にあふれているのと同じくらい、失望に食い荒らされている、まだ見ぬ日々。
イマダ、コズ。
我々は、それを「未来」と呼ぶ。
仕事で長期不在がちの両親ゆえに、ふたりぐらしの期間が長いこの姉弟。そんなわけから、年齢的には、大人になりきらぬ少女のわりに。姉は、じつに現実的な性格である。それは、ときに物質的で、打算的とまで。まぁ、姉弟のたったふたりではあるが、一家をきりもりする身としては、しかたのないことなのかもしれない。
そんな姉でも、相応に。同年代の少女なみに、好きなものだってある。ささやかなおしゃれに、人気のスイーツ。そして占いも、そのひとつだった。
あたるもなんたら、はずれるもなんとやらとはいうが。幾つもの分岐点に、幾つもの選択肢。そして、それらを選び採る行為者たち。複雑に絡まり、織り成される糸により、未来という画が描かれる。そんなものを、100均で買ってきたカードや、安物のガラス玉で。しかもずぶずぶの素人が、的中させることができるなんて、ほんとにお考えかい?
いや、できないなんて、野暮を言うつもりもないがね。
それはともかく。たとえ、どんなに精度の高い占いがあったとしても。おそれをいだくべき、未だ来ぬ画を描き出して。未知のものへのおそれを振り払う、その助けになり得たとしても。
それと引き換えに、占いは常に。またひとつの、新しい疑問を我々にもちかける。
果たして、この占いはあたっているのだろうか?
あんたも占ってあげようか、との姉の誘いも。弟にとっては、あまり魅力的なものではなかったらしい。あちらで恐竜図鑑など、ひらいている。
しかたないわね、と。姉はみずからのかかえる、他愛もない。だが、けっして、くだらないなんて、他人から断ぜられるすじあいのない。そんな悩みをほどく糸口を、並べたトランプに問いかけはじめた。
伏せられたプラスチック製のカードたち。謎めきながらも洗練された、幾何学模様をめくれば。没個性な、そちらとはちがって。こちらには、一枚ごとに異なる暗示が刻まれている。
4つのマークに、13の数字。そして、それらを嘲笑う道化師の存在。
デッキの構成だけでも、シンプルながらミステリアスなカード群。だが、それだけではない。ふふ、こいつは特別製だ。
幸運のトランプ。姉はそれに、未だ来ない画へのこたえを問いかけているのだ。
カードの引きは悪くないものの。逆位置だったり。置かれた座標だったり。スペード、ダイヤ、ハート。欲しいところで、欲しいカードが顔を出さない。
眉間にしわを寄せていた姉は、なかば諦めかけて。最後の1枚。どうせ、あんたも期待はずれでしょ。なげやりに左下からめくりあげた。
いつもなら、ほら、やっぱり。
しかしながら、今回は。ところがどっこい、だったらしい。
しかめつらが、おどろきまじりの笑顔にかわるのを見るのは、いつだって爽快だ。温存しておいた、ミルクプリンを食べちゃおうかしら。
これまでの凶兆をくつがえす、吉兆の1枚は。未来への不安やおそれと戦う少女にとって、気休めよりも頼もしいものであったにちがいない。
最後の1枚。
クローバーはよつばだった。
これも、4コマのネームが元ネタの、セルフ・リメイクだったりします。
一読していただけたなら、嬉しいです。