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虚構の勇者  作者: かに
第六章:勇者パーティとダンジョン
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6-44:神殿の激闘(上)

「姫様!」


ターニャさんが飛び出す。



ガキーーーン!!



次の瞬間、大きな金属音がして、ターニャさんが大きく跳ね飛ばされたのが見えた。


「ターニャ!」


ターニャさんはごろごろと地面を転がるが、すぐに起き上がる。即座に地面を蹴ると、王女へとせまる少女の円形の武器を受け止めた。少女の武器は、彼女の瞳と同じ、炎のように赤い光に包まれている。


「お主の相手は、拙者でござるぞ。」


再び少女の円形の武器と、ターニャさんの短刀が激突した。


「くっ!」


だが、明らかにターニャさんが押されている。


「パル姫は強化に集中するのだ!」


大量の結果を展開しながら、アン団長が叫ぶ。


「は、はい!」


それで我に返った王女が、再び魔力を集中させはじめた。乱れていた力が、急速に戻ってくるのを感じる。


しかし、それでもターニャさんのほうが、やや押し負けている。


少女の手数の多さが半端ない。ターニャさんは超人的な身のこなしで、攻撃を躱しつつ反撃を加えようと隙を伺うが、先ほどまでと違って少女側には全く隙が無い。


秘龍儀ヒアリグ・ドラケン・火龍参ノ術『業火』」


ターニャが、まるでドラゴンの吐くブレスのようにみえる、大きな炎の塊を少女へ発射した。だが、少女は全く退かない。


超秘龍儀スぺリアル・ドラケン・氷龍絶ノ術『永劫凍結システム・ホールト』」


「なんと!」


その声を聞き、逆にターニャさんが大きく飛び退すさった。


彼女の発した炎のブレスは、少女が出現させた氷の壁に当たると、火の玉がすべて凍結してしまった。それどころか、凍り付いた火の玉から、氷の柱がターニャさんに伸びていき、ほんの僅か直前までターニャさんがいた位置に、巨大な氷の玉ができる。



「絶ノ術・・・その技は、既に継承者が絶えたはずでござる。お主、何者でござるか?」


少女はその問いに答えることなく、ターニャさんへと襲い掛かった。


「ぐっ!」


威力を受け流すが、二人の攻撃の威力と速度には、目に見えるほどの差がある。そのままターニャさんは弾き飛ばされてしまった。そのすきに王女へ飛び掛かろうとする。


「土龍二ノ術『石壁』」


転がりながらも、ターニャさんが術を唱え、小さな金属の塊を投げる。すると、突進する少女の前に厚い石壁が出現した。


だが、少女は構わずそれに自らの拳をぶつける。



ズガーーン!!



轟音とともに、石壁が砕け散った。


「くうっ!」


ターニャさんがぎりぎりのところで、少女の攻撃を短刀で受ける。石壁で威力が下がった少女の攻撃を、ターニャさんはどうにか受け止めた。しかし、彼女の額からは一筋の血が流れ落ちる。


「ターニャ!」


再び、王女が声を上げる。


「姫様は、拙者が守るでござる!」


彼女の握る二振の直刀が、青白く輝く。



ドガガガガガガガ!!



突如として、大量の石礫が上空から少女へと降り注ぐ。隙をついて、俺が横から撃ち込んだ土魔法だ。少女は大きく飛び退り、ターニャさんから距離をとる。


「かたじけない。」


「すみません、たいした援護ができなくて。」


「十分でござるよ。」


彼女はにやりと笑うと、再び少女へと飛び掛かった。



「おい、強くなったぞこいつら!」


ニコが大声で叫ぶのが聞こえた。


彼は巧みに槍を使い、少女の接近を阻止してはいた。だが、少女の膂力が、その見た目に反してすさまじい。ニコは、自分で思っている以上に大きく槍を弾かれ、槍の取り回しが思うようにできなくなっていた。


じりじりと距離をつめられ、耐えきれずにゆっくりと後退していく。


少女の持つ両刃の剣は、まるでSF映画に出てくるレーザーソードのように赤く輝いている。


「結構やべぇ。どうすんだ!?」


「泣き言を言っている場合か。何とか押し戻せ!」


アン団長が叫ぶと同時に、少女が大きく跳躍した。


「くそっ!」


ニコが槍を上空に突き出す。しかし、少女はそれを紙一重で避けた。


「なんだと!?」


少女はすでに、槍の間合いの内側に入っている。すでに、槍は役に立たない至近距離だ。真っ赤に輝くやいばが、ニコに襲い掛かる。


「ニコ!!」


俺は思わず飛び出した。


そのとき、ニコは左手を大きく前に突き出したのが見えた。それは、やぶれかぶれの突き技かのように見えたが、そうではなかった。少女が振り下ろす真っ赤な刃の内側に、ニコは左手をすばやく滑り込ませる。


そして、その持ち手ごとニコが掴み取る。


「くらえ!『六合神槍・破山邀撃』!!」


槍を握る右手が、突如として青白く光った。



ズガーーン!!!



すさまじい衝撃音がした。


次の瞬間、赤い剣を持った少女の体は、大きく吹き飛ばされていた。地面を転がり、土埃がまきおこる。


「残念だったな。俺は接近戦もできるんだぜ?」


ニコはそう言いながら、跳ね飛ばされた少女のほうを睨む。言葉とは裏腹に、表情には余裕がない。彼の視線の先にはは、土埃の中から立ち上がる、赤い目の少女の姿があった


あれほどの衝撃を受けたにもかかわらず、少女のほとんどダメージを受けていないように見えた。それが分かっていたのか、ニコの口調にも余裕はない。


少女は、すぐに反撃しては来ず、少し離れた場所で立ち止まった。


「何だ?」



少女が腕を引き、剣を振りかぶって構える。まるで、槍投げでもするかのような態勢だ。


「投げる、のか?」


だが、彼女はそのまま剣を、力まかせに突き出す。


その赤い刃は、そのままニコに向かって勢いよく「伸びた」。


「うおっ!!」


はらりと金色の毛が落ちる。


ニコは、ぎりぎりのところでその真っ赤な刃を避けたものの、わずかに頭上をかすったようだ。


「おい!伸びるとか、反則だろ!!死ぬかと思ったぞ!」


ニコが叫ぶ。だが、少女はすぐに剣を回転させ、反対側の刃を再び伸ばした。


「二度もくらうか!」


槍先で伸びる刃を受け止め、そのまま力づくで上へと刃を逸らす。


刃はそのまま伸び続け、ついに天井に刺さってしまった。


「ふ、伸ばしすぎだな!」


少女が剣を動かせなくなったとみて、ニコは槍を構え、突進しようとする。


だが、少女は強引に、そのまま剣を振り回した。



ガガガガガガガガ!!



天井の岩が切り裂かれていく。


「うそ、だろ?」


ニコが天井を見上げた時には、すでに切り取られた天井の一部・・・大きな岩の塊が、彼めがけて落下しはじめていた。


「まじかよ!!」


「ニコ!!」


俺は思わず叫んだ。


ズガガガガガガ―ーーン!!



凄まじい音とともに、その大きな石の塊が、広間の床に激突する。ふたたび、もうもうと土煙が立ち込めた。


「洒落にならんぞ・・・」


パラパラと破片が落ちる中、ニコが槍を持って立ち上がるのが見えた。


「無事か!?」


「あ、ああ、なんとかな。助かったぜ・・・」


ぎりぎりのところで、俺の土魔法が間に合い、大きな石壁で落下する岩の塊がニコに直撃することは防げたようだ。だが、ニコの顔や腕にはいくつもの傷跡がみえる。少なからず防げなかった石の破片が、彼に傷を負わせたようだ。


「だけど、長くはもたねえな・・・」


ニコは、土煙の向こうから、じりじりと迫ってくる少女を睨む。彼女の赤い瞳と、真っ赤に燃えるような双刃の剣が、異様な光を放つ。


「少年!」


アン団長が大声で俺を呼んだ。彼女は彼女で、テンペランティスが無制限に放ち続ける光の矢を、ひたすら結界魔法で防いでいる。だが、彼女の赤いローブもいたるところに傷があるのが見えた。よく見ると、彼女の足元にはいくつも穴があいていた。


明らかに、彼女は矢の攻撃をいくつか受けている。


「アン団長、まさか、みんなの守りを優先して・・・!」


「大丈夫だ。自分の仕事をしろ、少年!」


彼女は振り向くことなく、そう告げた。俺は、ぐっと剣の柄を握る。


「分かりました・・・あと少しです!」


「よし!」


アン団長の声を聞き、俺はお削ぎ広間の中央へと走った。


次話で本省の本編は終了の予定です。

閑話を1.2話挟んで、以後は次章となる予定です。

(すべては予定です・・・)

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