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虚構の勇者  作者: かに
第六章:勇者パーティとダンジョン
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6-31:砦の探索(上)

俺は暗い通路を進んでいた。


一階は、二階とは違って通路の左右に部屋らしきものがない。


左右とも、ずっと壁が続いている。そのため、ほとんど外の光が入らず、足元は暗い。ただ、ところどころ天井が崩れていて、そこから日光が差し込んでいる。そのため、灯りなしでも前が見えないというほどではない。


周囲を警戒しながら進んでいくと、明るい円形の広間に出た。天井が吹き抜けになっていて、上を見上げると青空が見える。その昔はガラスの屋根があったのかもしれない。だが、今はただの大穴だ。


円形の広間は、中央に台座らしきものがあり、その上に崩れた石の像がある。彫刻のようなものが置かれていた形跡があるが、ほとんど崩れ去っていて、元々それが何であったか想像することすらできない。


今しがたやってきた入口とは別に、三つの通路がつながっている。正面の通路の先には、今来た道とおなじような階段が見えている。右の道は、途中に壁があるようで、先がどうなっているか分からない。だが、方角的にはそっちは正面入口のはずだ。


となると、進むべきは左だろう。


左側の通路を覗く。その通路は、他の通路とは違って、光が差し込んでいない。少し先からは完全に暗闇になっており、先がどうなっているか分からない。


気配を探ってみる。


通路の先のほうには、怪しい気配はない。ただ、その通の真下あたりに、人間の気配がある。これは、さっきからずっと感じている気配だ。


俺は空を見上げた。


いざとなれば、ここから外に逃げられそうだ。ならば、もう少し進んでも大丈夫だろう。


できれば、人間の気配がある地下への通路を見つけておきたい。


俺は、暗い通路へと一歩足を踏み入れた。


「おっと、その前に」


ふとそのとき、ターニャさんの言葉を思い出した。


周囲を警戒しながら、空間収納から例の探索スキルで見つけられる石を取り出す。そうして、それを崩れ去った台座の内側のくぼみに埋め込む。ここなら、真上からでも観ない限り、誰かに気が付かれることは無いだろう。もちろん、探索スキルを使えば、簡単に見つけることができる。


俺は再び自分に隠蔽スキルをかけると、暗い通路を進んでいった。



この通路は、先ほどまで歩いていた通路とは違い、完全に日の光が入らない。そのため、文字通り一寸先は闇だった。火魔法を使えば、灯りをだすことは簡単ではある。でも、それはこの砦にいる連中に見つかるリスクを負うことになる。


幸いなことに、俺には探索スキルがある。スキルを使えば、周囲の地形はある程度わかるので。真っ暗でも進むことはできる。仮に魔物や敵対的な人間がいても、探索スキルで見つけることもできる。


そんなことを考えながら、俺はそのまま暗い通路を歩いていった。


どのくらい進んだのだろうか。


俺は円形の広間に出た。無論、周囲は完全な暗闇なので、広間の正確な形は分からない。探索スキルで調べただけだが、さきほど天井に大穴が開いていた広間によく似ている感じがした。


やはり正面と左右に通路があり、中央に台座がある。


台座の上には彫像のようなものが設置されていた。この彫像は、先ほどの広間の台座とは違って崩れてはおらず、彫像の形を保っている。


俺は三つの通路を順番に調べた。


左右の通路は暗くて先がわからない。探索スキルでも、何も反応はない。


一方で、正面お通路の先は、日の光が見えている。


ならばと、先が明るく見える通路へと進んでみる。


すると、その先には最初に入った円形の広間と同じ、吹き抜けの天井の広間があった。中央にあったらしき彫刻は、やはり台座ごと崩れている。


その円形の広間にも、左右に通路がある。そして、その通路の先には、いずれも階段が見えていた。


・・・なるほど


俺は、何となくこの階層の構造が分かった気がする。


広間の左右の通路は階段で、前後方向の通路は出入口につながっているようだ。


とすれば、下に行く階段は真っ暗な円形の堀場の、左右にあった暗い通路の先だろう。


俺はそう目ぼしをつけると、再び暗闇の円形の広間まで戻った。探索スキルだけを使って移動することにも慣れてきたこともあり、さきほどよりずっと早く、円形の広間までたどりついた。


試しに、左の通路へ入ってみる。すると、ほどなく灯りが見えてきた。近づいてみると、そこには上りの階段があった。


周囲を調べてみても、下りの階段はない。


「下りは、反対側か?」


広間に戻り、反対側の通路も調べる。しかし、その通路の先にあったのも、やはり上り階段だけだった。


・・・どういうことだ?


一階であと調べていないのは、正面の入口へと続く通路の先だけだ。実は、正面入口に入ってすぐの場所に、くだりの階段があるのだろうか。


俺は考えながら、暗い円形の通路まで戻る。


そこでふと足をとめ、中央にある彫刻を見つめた。


いや、実際には、真っ暗なので、目では見えていない。


俺は台座に近づいた。


何とはなしに、その彫像に違和感を感じたからだ。


探索スキルで調べただけではあるが、その彫像はこの砦にあるものにしては、やけに新しい感じがした。形がはっきりと分かるわけではないのだが、表面が妙に滑らかなことが気になった。もし長年ここに置かれているなら、少なからず風化されて、表面がざらざらになっていそうなものだ。


「鑑定」


彫刻を鑑定してみる。


結果は「古代の石像・魔道具」だった。


それ以上のことは分からない。鑑定スキルがもう少し高ければ、魔道具の種類も判定できただろう。しかし、レベル3の鑑定スキルでは、この魔道具の機能までは分からないようだった。


ただ、これがただの石像ではないことは分かった。


・・・灯りをつけて調べてみるか?


俺は勇者の剣をしまい、腕を組む。


目で見ることができれば、その機能の想像がつくかもしれない。だが、こう暗くては目視することも叶わない。


俺は、わずかに日が差し込んでいる通路を背にしてみた。そうすれば、光がわずかにでも反射して、形が分かるかもしれないと思ったからだ。


だが、やはり石像の形を確認することはできなかった。


・・・うーん、だめか。


灯りをつけずに確認するには、あとは触ってみる方法しか思いつかない。手触りで、形が分かるかもしれない。


俺はそう思い、彫像へ手を伸ばした。


だが、その時のことだった。


「なに!?」


突如として勇者の盾の紋章が輝いた。


そして、まるでそれに応じるかのように、中央の像が青白く光る。そのとき、一瞬だけその像の形が見えた。


その像は、大鷲の形をしていた。


「これは!」


体がふわりと浮いた。そして、視界が白くかすむ。


この感覚には覚えがあった。


「・・・やられた!」


どうやら、俺はどこかに転送されたらしい。


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