1 ゲームの完成
作者は出版業界の文末処理を楽にする為の決まりを守ってません。閉じ括弧の前に。があります。要は「……。」のようになってます。嫌な方はこの小説をスルーして下さい。
「やっと完成した……。いやぁ、やっとだな!」
小野塚 俊明は、歓喜の声をあげた。
彼はゲーム製作に憧れていた。プログラムを勉強して1から……などという難しい方法ではなく、ゲーム製作ソフトを使って作るお手軽な方法だが、それでも、今まで完成したゲームは1つもなかった。
家庭用ゲーム機で出たゲーム製作ソフトはほぼ網羅。収録されているサンプルゲームをプレイしては感動して、実際に自分で作り始めるも、イベントを1つ2つ作った所で挫折を繰り返す。パソコンを手に入れてからも、無料の物も有料の物も手に入れては、似た事の繰り返し。
これではいかんと心機一転。壮大な物語ではなく、1つのダンジョンでアイテムを手に入れて、それでクリアとなるゲームを作る事にした。そんなのはつまらないと思う気持ちもないではないが、完成しなかったどころか、1つの町を作るので精いっぱいだった過去の事を考えたら、挫折しない為には必要だと考えた。
ネタ元は、フリーゲーム配布サイトや個人がやっているイベントだ。初心者には完成させやすく、上級者は作り込めるであろうテーマを見て、真似する事にした。
それが上手くいき、やっと完成させる事が出来たのだ。
内容はこうだ。ドジで怠惰な男の見習い魔法使いクロートゥルは、魔法薬の材料になる薬草園の世話をサボり、1つ枯らしてしまっていた。間の悪い事に、その薬草を師匠が使うと言い出した。
バレたら恐ろしい目にあわされると慌てたクロートゥルは、師匠用の難しい魔法書を何とか読み、復活させる魔法薬を習得。必要な材料を取りに行き、何とか薬を完成させる。だが不審に思った師匠が薬草園に来ていて、枯らしたのがバレていた……というオチ。
選択肢を設けて、上手くいけばバレずに済む展開も考えたが、そうやって膨らませると、過去の二の舞になると諦め、叱られるオチのみにした。
それが功を奏したのか、やっと完成させる事が出来たのだ。
「収録素材しか使ってないし、報われないオチだから、遊んでくれる人が居るかも分からないけど……。やっと出来たぁ……。」
小野塚は感動しながら、最初からプレイする。テストプレイの意味もあるが、完成させられた感動のままに、完成品を楽しんでいるだけだ。
創作物に対して、我が子のように大事にする人間も居れば、作る過程が楽しいだけで、完成品には興味もなく、物によってはあっさり捨ててしまう人間もいる。小野塚は前者のタイプだ。今まで作ってみた物はほぼとってある。
きっとこのゲームもそうなるのだろう。今まで挑戦してきてやっと完成したゲームだから思い入れもあるし……。
まさかそれが、あんな事になるなんて、この時の小野塚は想像もしていなかった。
この1話は、作者の実体験なのでエッセイみたいなものですが、2話からは創作になります。