今日も楽しく気ままな生活
ここは、ハーンタイト大国 人族、人獣と魔物が共存する国。
生活の多くに魔法を使い、足りない魔力は魔法石、魔法鉱石で補い暮らしている。
魔法は、生活魔法から水、火、土、風、光と属性の分かれる魔法まで多岐にわたる。
生活魔法は、少しの魔力で使う事が出来、魔力が弱い者は、魔法石でその生活魔法に使う魔力を補っている。
私、ユイリ・アベーヌは6か月前 若き公爵 ウイリアムス・アベーヌと結婚した。
ユイリ・エイリアから、ユイリ・アベーヌへと結婚とともにファミリーネームが変わった。
本来であれば、実家のファミリーネームを残すことになるのだが、公爵家からの強い要望により、アベーヌの姓のみを名乗ることになった。
父であるボーンズ・エイリアの爵位は伯爵で、それなりのお貴族様だ。
魔力が比較的強い一族でもあり、兄や父もその魔力を生かし王宮に勤めている。
ユイリが16歳になった春うららかな日、父ボーンズが、
「ユーイ、結婚が決まった。」と告げてきた。
ユーイとは、家族がわたしを呼ぶ愛称だ。
とても気に入っていて、家族だけがわたしをユーイと呼ぶことに喜びを感じている。
これまで自由気ままな生活を謳歌していた私には、結婚は晴天の霹靂。
母が続ける。
「6歳の時、婚約したウイリアムスとの結婚です。」と。
確かに6歳の時、婚約をしたけど、それから10年婚約者であるウイリアムスに会うことも、手紙を交わすこともなく、デビュータントは、兄アレクセイにエスコートされ入場した。
つまり、婚約者というよりただの顔見知り。いいえ。顔もしらない。ほぼ他人です。
そんな人のところに嫁ぐと。
しかも、前触れもなく突然。
前触れは、婚約だとしたも音沙汰がなければ無いも同然だ。
これまでの私のお気楽生活は、幕を閉じることになった。
あっけない、独身貴族の幕引きだった。
貴族の令嬢として、教育を受けたユイリアは、貴族同士の結婚か意味は分かっていたので、理解はしていた。
けれど、
ユイリには、不安があった。
エイリア家の領地の多くに豊かな自然があり、その中で育ってきたユーイ。
公爵家の領内にこれほどまでに素晴らしい自然があるだろうか。
公爵家になじめなくても癒してくれる自然があれば、乗り越えられる気がしていたからだ。
父の結婚宣言から、6か月後。
ユーイは、公爵邸に花嫁修業と結婚準備のため滞在(ほぼ強制同居)することになった。
会ったこともない婚約者ウィリアムスと、私を知らない人たちの中で暮らすことに多少の不安があった。
けれど、公爵からの申し入れで実家のメイドと使いの者を同行させることが許された。
わたしに同行してくれるメイドは、 長年専属メイドをしてくれているルルと 実家の万能職 カイの2名だ。あとは、私の従魔である「ルース」。3人と1匹で公爵領へと3日かけて公爵邸に到着した。
到着日は、出発前、そして近くの街からギルドを通して連絡をしていた。
公爵邸は、煌びやかでもない、重厚感あるれる屋敷で、扉の前には、ずらりと並ぶ使いの者たちがいた。
その中に、6つ年上の婚約者ウィリアムスの姿はなかった。
予想は、していたけど婚約者エスコートされる事なく馬車を降りるユイリは、公爵家の自分自身の立場をよく理解した。
歓迎されない存在。
それが、ユイリが公爵家に持った第一印象だ。
馬車から降りたユイリに、
第二執事だと言う若い男性が挨拶をした。
ご主人様、ご不在につき私共でお迎えさせていただきました。
と。
事前に来ることは、分かっていてはず。
それに第二執事とは。
馬鹿にされたものだとユイリは思った。
よろしくと言葉短かに伝え屋敷内に案内される。
案内された部屋にユイリは、崖然とした。
第二貴賓室
婚約者として、迎え入れられたはずなのに
第一では無く、第二貴賓室がユイリの部屋として用意さていた。
第二貴賓室には、寝室はなくワンルームにまず周りがついていた。
ここが、第二貴賓室だと気がつく要因になった部分だ。
第一貴賓室には、寝室があり、メイドの部屋が隣接されている事が一般的な作りたで、明らかにこの部屋は第一貴賓室ではない。
この扱いがなぜなのか、第二執事の口から聞くことになる。
第一貴賓室には、現在ウィリアムスの幼馴染が滞在しているため、こちらの部屋を使うことになったと。
公爵夫人になるユイリよりも優遇される幼馴染。
それを不思議に思わない使用人たちにユイリだけでなくルルも苛立ちを隠せなかった。
口元を歪ませほくそ笑む公爵家のメイドたち。
明らかな悪意を感じる。
幼馴染が滞在中は、屋敷を自由に出歩くことも出来ないと第二執事から伝えられた。
これは、公爵の意思によるものだそうだ。
あったこともない公爵家からの心ない仕打ち、ならなぜ結婚を急いだのか。疑問が残ったが、王からの命令に背き続ける事に嫌気がさしたのだろうと察しをつける。
いくら考えても目の前の状況は、
腹が立って仕方がない。
花嫁修行も週に2度程度だとその場で伝えられ、それほかの時間は、この部屋で過ごすことになる。
なんのためにここに来たのか。
幼馴染の名前は、ジュリア様と言うそうで、歳の頃はわたしより二つ上だと言う。
一年の大半をかな公爵邸で過ごしている幼馴染に違和感を感じるが、この状況下ではどうでも良い事だ。
ウィリアムスとジュリアは、幼い頃ならお互いを励まし合い過ごしてこられて、家族同然なのだとか。
そんなことは、本当にどうでもよかった。
なら、幼馴染と結婚すればいいし、ユイリの自由気ままな生活を壊さないでほしかった。
伝えられる情報全てに憤りだけが残った。
夕食どきになっても、公爵家の使用人から食事の連絡はなかった。
次の日も、そしてその次の日も。
ユイリの食事は、ルルとカイが厨房で用意してくれていた。
公爵家に私の存在は忘れられていた。
3日が経った頃、
こんな事があるのだろうか、初めて会う
第一執事から別館へ移動してほしいと、言う命令があった。これも、公爵様の意向だそうだ。
私な返答を待つ事なく、運び出される荷物。
荷物の多くの荷解きを故意的していなかったので、移動は簡単だった。
本来であれば、婚約期間は別館で過ごすことになっていたそうだ。
手違いでこの部屋に通されたと。
花嫁修行に来たのに別館。
客扱いどころか、邪魔もの扱い。
これが、王が命じた結婚という者だろうか。
この結婚に明るい未来はないとユイリは悟り、カイに実家への手紙を託した。
これまでの扱いや受け入れられていないこと、公爵に会えていないこと、婚約を無効にしたいことを書いた。
ギルドから手紙出すついでに、カイに街でこれからの食事に必要な材料の調達も依頼した。
これまでも出ることはなかった食事だが、
別館ともなれば、厨房にあった材料すら別館には用意されていない事が予測できたからだ。
別館への移動は、1時間程度で終わった。
移動を手伝ったメイドたちは、別館に残る気配すらなくなかったのはルル1人だけ。
薄汚れた埃っぽい別館。これが未来の公爵夫人に与えられた部屋だった。
予想はしていたが、これは流石に有り得ない。
曲がりなりにも伯爵令嬢だ。
怒りすら覚える中で、ふと閃いた。
自分たちで自由に暮らせるのでは?と。
お父様に出した手紙で、何らかの変化があることは確かだが、直ぐに婚約を破棄できるわけではない。
早くて3ヶ月はかかるだろう。
周りに森などなかったが、街へは馬車を使えば30分程度で着く。
そこから森までは1時間程度。
自然に触れ合える距離だ。
そうだ!これまで通り自由気ままに過ごそう!!
思い立ったが吉日。早速行動する事にして、部屋の掃除をしていたルルに話呼んだ。
戻ってきたカイは、大きな荷物を抱えて裏口から入ってきた。
ユイリとルルに、外にこの別館を観察するようなメイドと使用人がいたと報告を受けた。
この報告を聞いたユイリは、
何も言わずに風の魔法を発動させ外からはこの屋敷の声が出て漏れないようにした。
言葉を紡ぐことなく魔法を発動させられるのは、魔力が特に強い者だけだ。
ユイリの家族は、言葉を紡ぐことなく簡単な魔法であれば発動させる事ができた。
カイとルルに、自由気ままに過ごすために
またギルドにお世話になることを伝える。
ギルドにお世話になるつまり、冒険者として依頼をこなすと言うことだ。
ユイリたちは、実家にいた頃も冒険者としてギルドに登録し、お小遣いを稼いでいた。
時間を持て余し、十分過ぎる魔力を発散させることが目的で、ユイリ、ルル、カイ、ルースはパーティを組んで登録していた。
実家の家族たちもこれは承知の上だ。
ユイリの魔力は、膨大で溜めすぎると暴発しかねない。その為、冒険者として依頼をこなして魔力の調整を行ってきた。
しかもパーティランクはAで数少ない上位冒険者になっていた。
冒険者として5年前にパーティを組んで地道にクエストをこなしてランクを上げていった。
カイは、剣で、ルルは、魔法で、ラースは、高位魔獣でとても戦力になる。
花嫁修行修行ということで、ラースは近くの森に滞在者している。慣れたら呼び寄せて一緒に暮らす予定だったが、この公爵家に馴染む必要が無くなったのですぐに呼び寄せることにした。
風に乗せてラースを呼び寄せる。
半刻もしないうちにラースが庭に現れた。
呼び寄せられた、ラースはとても嬉しそうに尻尾を振っている。ユーイは、ラースがを抱きしめ、おまたせと伝えた。
私の体の二倍以上有るルースは、フェンリルという高位魔獣だ。
シルバーウルフと間違えられた時は、そのまにしておく。訂正が面倒だからだ。
冒険者として、また依頼を受けるなら早い方がいい。明日、ギルドに行き依頼を探すことにしようと話しい、今日はそうは広くない埃っぽい別館の掃除をする事にした。