007
『マスター、侵入者です。』
アドバイザーのその言葉を俺は一瞬理解できなかった。
侵入者?
どこに?
ああ、このダンジョンにか。
え?
大丈夫なの?
頭の中で疑問がぐるぐると巡っている。
俺は混乱の極みにあった。
『マスター、侵入者です。』
そんな俺を見かねてか、はたまた聞こえていないことを危惧してかアドバイザーが再度そう言ってきた。
いや、聞こえているよ。
ほんとほんと。
でも、何をするわけでもないじゃないか。
侵入者なんて怖い。
ほっといたら帰ってくれないかな?
『マスター、侵入者です。対処のご検討をお願いします。』
3度目の正直。
アドバイザーは再びダンジョンに侵入者が着ていることを伝えてきた。
次はご丁寧に俺に対応の催促までつけて………。
対応しないといけなのか?
そうだよね。
ここでは戦えるものなんて俺以外にいなのだから。
俺は肩を落としながら椅子から無言で立ち上がった。
『マスター、どちらに行かれるのですか?』
「え?どこって侵入者の対応に?」
アドバイザーだってさっき侵入者の対応をしろって言っていたじゃないか。
だからこそ俺はその侵入者の撃退に行くために立ち上がったんだ。
『マスター自身がいかれるのですか?』
「ん?どういうこと?」
『いえ、まずは情報収集から始めてはどうでしょうか?いくらレベルが上がってマスター自身が強くなっているとは言え、敵の数、実力も知らずに突撃するのは危険です。この場に留まり情報を集めましょう。』
アドバイザーのその言葉に俺は考え込む。
情報収集は重要である。
確かにその通りなんだが、この場に留まっても相手の実力はおろか姿さえも見えないではないか。
それでは情報収集なんてできないのではないか?
俺はその疑問を素直にアドバイザーに聞くことにした。
「情報収集するにしても第1階層、それも敵のそばまで行く必要があるだろう?特に実力を知るならば実際に戦ってみないと分からない。」
『ダンジョンの機能を使用すればこの場から第1階層の様子を確認することができます。』
「え?そうなの?」
そんなの初耳なんだけど。
そんな便利なことできたの?
いや、でも今までは必要なかったか………。
『はい。<第1階層管理>を使用することで第1階層の今の状況を知ることができます。少なくとも敵の姿や迷宮をどの程度進んでいるかなどはこれで確認が取れます。』
「なるほど。それでも実力までは分からないよね?」
俺は歴戦の戦士と言うわけではない。
相手の立ち振る舞いからそいつが強いのか弱いのかを判断することなんてできないぞ。
それともダンジョンマスターはそれが必須なんだろうか?
そうだとしたら俺にダンジョンマスターは務まらないな。
俺がそんな低い自己評価をしているとアドバイザーがその方法について提案してくれた。
『確かに姿だけで相手の実力を理解するのは難しいです。しかし、姿を見ればその人の装備などもわかります。装備の格でおおよその強さを推測することができます。』
なるほど装備か。
それは盲点だったな。
確かに上等な装備をしている戦士はそれだけ稼ぎもいいということだろう。
さらには装備の傷つきぐわいなどを確認することでどの程度使いこまれているか、つまりはどれだけ戦闘経験を積んできたかもわかるはずだ。
『また、このダンジョンには配下となるスライムが大量にいます。それらに侵入者の相手をさせることで実際の動きも見ることができます。』
ああ、そう言えばスライムに第1階層の警備を命令していたな。
スライム程度とはいえ侵入者の戦闘の動きを見れるのは確かに大きな収穫だ。
何ならスライムだけで撃退できるかもしれない。
俺が戦わなくてもいいかもしれないというのは朗報だ。
うん、戦いなんて避けられるなら避けるに越したことは無い。
なんて言ったって危険だからね。
危険は良くないよ、本当に。
『マスター、と言うことでまずは情報収集に注力することを提案いたします。』
俺のそんな思いは知ってか知らずかアドバイザーはそう言葉をまとめた。
俺自身もその方がいいと考えがまとまっていたところだ。
俺は頷きながらその言葉を肯定する。
「うん。それ採用しよう。で、どうやればいいの?」
『はい。基本的には他のダンジョンの機能と同じく<第1階層管理>と唱えてください。目の前にダンジョンのマップが表示されるはずです。』
「こうかな。………<第1階層管理>。」
すると目の前にホログラムのウィンドウのような画面が表示された。
どうやらダンジョン第1階層のマップのようであった。
我ながら物凄くでかいダンジョンだ。
俺はその画面をじっと見つめていた。
画面にはマップ以外に2種類のマーカーが表示されていた。
それぞれ青と赤のマーカーだ。
青のマーカーは数が多くダンジョン中に点々と散っている。
一方、赤のマーカーは10個弱しかなくすべてが第1階層の入口付近に集まっていた。
「なあ、このマーカーは何なんだ?青と赤の。」
『それはそれぞれ配下の魔物と侵入者を表しています。青が配下の魔物、赤が侵入者です。』
「なるほど。」
これを見ると侵入者はいまだ入口からそう動いていなかった。
これなら迷宮を抜けるはまだまだ時間がかかるだろう。
その様子に俺は一安心するのであった。
「なあ、この状態だと侵入者の装備とか見れないんだけど、それはまた別の方法があるのか?」
『はい。マップ上で確認したいところを指で選択してください。するとその場所の現在の映像が映ります。映像の角度などは任意で変更することができます。』
アドバイザーにそう言われ俺は早速赤マーカーが集まっている場所を選択した。
するとその場に新しいウィンドウが表示され、そこには侵入者の姿が映っていた。
「おお、これは便利だ。」
赤マーカーでわかっていたことだが侵入者の人数は9人。
殆どのものは鎧に身を包み、剣や槍、盾などを装備していた。
鎧を着こんでいないものは全身を覆うローブやマントのようなものを着ていた。
こちらは杖のようなものを持っているため、恐らくは魔法使いなのだろう。
確かにこれらの情報から敵の実力が分かるかもしれない。
『マスター。それでは、しばしこちらで監視を続けましょう。』
「ああ、そうだな。」
アドバイザーのその言葉に従い俺はウィンドウに移る映像に集中するのであった。
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>>Side:侵入者 ダンテ
不毛の大地で魔物どもを狩っていたら突如として現れたダンジョン。
そのダンジョンの扉を開き中へと入った俺たち冒険者パーティは入口付近に危険が無いことを確認して休憩をしていた。
「おい、ダンテ。どうするんだ?このままダンジョンアタックするのか?」
軽薄そうな見た目の男、盾剣士のルスタンが声をかけてきた。
「そうだ。おまえがリーダーだ。おまえが決めろ。」
重く響くような声色でそうルスタンの言葉に賛同した男は槍使いのユージンだ。
「そうですね。私もリーダーの決定に従います。」
落ち着いた声色でそう言うのは盾メイス使いの男マルセルだ。
彼らの言う通り俺………ダンテはこのパーティのリーダーをしていた。
俺は皆を見回しながら答えを考えていた。
不毛の大地が強力な魔物の領域とはいえ俺らは長年ここを狩場として活動してきたのだ。
当然、未だに戦うだけの余裕はあった。
何よりダンジョンの攻略者には莫大な報酬と栄誉が与えられる。
ダンジョンアタックが危険なものであることは重々承知であるがここで引き返すのは気が引けた。
それは個々に集まる9人全員の共通認識だったのか他のメンバーも期待に満ちた目を向けてきていた。
そんな彼らの期待を背負って俺は口を開いた。
「ダンジョンを攻略しよう。」
その言葉に皆沸き立った。
短剣使いの男ロレンスは長身の魔術師の男オーベールとハイタッチを交わし、弓使いの女ピラールは魔術師の女メルタと笑いあいながら談笑していた。
唯一、不安そうな顔をした治癒術師のパウラだって聖印を握りしめて気合いを入れていた。
俺の言葉を受け取った皆の反応を見ながら俺は腰を上げた。
「じゃあ、行くぞ!」
「「「「おう。」」」」
その掛け声とともに俺らはダンジョン攻略を始めた。
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ダンジョン攻略を初めて1時間ほどが経過した。
俺らの戦闘を行くのは短剣使いのロレンスだ。
彼は斥候としての技術も習得しており、ダンジョンに仕掛けられている罠を探しながら進んでいた。
しかし、ここまで罠の類は1つとして見つかっていない。
いや、罠だけではない敵の姿すら見当たらないのだ。
あるのはどれだけ広いか分からない迷宮のみ。
既にパーティメンバーの中には緊張感を保てなくなっているものまで出てきている。
「なあ、ダンテ。ここは本当にダンジョンなのか?」
緊張感を切らしたルスタンが話しかけてきた。
「恐らくな。」
「つってもよ、宝はおろか罠や敵に至るまで何もないダンジョンなんて存在するのか?」
「だと言ってもこれほどまでに整備された洞窟なんて言うのも考えられないだろう?」
「そうですよ。それにダンジョンの発生原理はわかっていません。ならこのダンジョンはまだ発生したばかりでそれらが出来上がっていないのかもしれません。」
俺とルスタンの会話にオーベールが入ってきた。
確かにオーベールの言う通りダンジョンの発生原理やその存在意義はわかっていない。
どうしてできるのか、そしてなぜ存在しているのかは分かっていないのだ。
ただ分かっているのは魔物が増えすぎるとある日突然外にあふれ出すということだ。
だからこそ冒険者ギルドではダンジョンの完全攻略、すなわちダンジョンの破壊を推奨している。
「そうなのかもしれねぇけどよ、ちょっと拍子抜けすぎるぜ。」
「まあまあ、そう言わずに。」
なおも文句を言うルスタンをオーベールがなだめる。
俺はそれを横目に周囲を警戒するのであった。
しかし、一向に何もやってはこなかった。
「あの、少し休憩しませんか?」
おずおずとパウラがそう言った。
「なんでだ?まだ1時間ほどしか探索していないだろう。」
「はい。しかし、すでに皆さま集中力が切れているように感じたので。幸いに今は敵の影も見えず安全に休むことができます。」
彼女の言うことは確かにもっともだ。
ルスタンを皮切りにパーティ内ではすでに集中力を保てずに談笑を始めてしまっていた。
このまま強力な敵が近づいてきた場合、奇襲を受けてしまう恐れがある。
確かにそれは危険だ。
だがしかし。
「忠言感謝する。しかし、未だ1時間しかたっていないのだ。今休憩していては何時まで経っても攻略できないだろう。だからこのまま進もう。」
「そうですか。」
「ああ。皆聞いてくれ!パーティ内の集中力が切れている。何時襲撃を受けるか分からないダンジョン内にいるということを思い出してほしい。」
俺は休憩はしないまでもそう口にすることで皆の警戒心を煽った。
これで少しでも危険が減らせると信じて。
皆俺の考えに同意してくれたのか談笑を止め、周りの警戒に注力しだした。
そんな時だった………。
「あ。」
戦闘を行くロレンスから声が上がった。
皆の注意がそちらに向いた。
「何かあたのか?」
「いや、罠とかじゃないよ。大丈夫。」
そう言葉を発するロレンスの表情は何かに集中しているようであった。
ジッと通路の一点を見つめていた。
「これはたぶん魔物の痕跡だ。」
パーティ皆の緊張感が高まるのを感じる。
何時その魔物に襲われてもいいように皆が武器を構えた。
「大丈夫。近くにいるわけではないから。」
その言葉に警戒心は残しつつも皆武器を下ろした。
俺も剣を鞘に納める。
「そうか。何の魔物なんだ?」
「これはおそらくスライムだ。」
「スライムかよ………。」
皆の心の内を代表するかのようにルスタンがそう呟いた。
その言葉を皮切りに何人かのメンバーから呆れるような声が聞こえた。
確かにダンジョンの魔物で最弱のスライムと聞けば肩の力が抜けるのもわかる。
しかし、そこまではっきりと緊張感を切ってしまうのは問題だ。
それに注意を促そうと口を開いたとき俺の隣にいたメルタから声がかかった。
「スライムとは言え注意を怠ってはいけません。上位種となれば十分にパーティが全滅する要因となりえます。リーダー。」
メルタが俺の方に向き直った。
俺はそれに頷くことで返答した。
「皆、道具の確認だ。ポイズンスライム対策の薬は十分に持っているか?」
俺のその言葉を皮切りに皆道具を確認していく。
何種類かの上位スライムは薬などの道具で対抗することができるからだ。
俺も自分の道具袋の中身を確認する。
薬の類は普段から十二分に準備している。
問題ない。
皆も同様で、確認を終わらせ大丈夫な旨を俺に伝えてきた。
それを確認して俺たちは再びダンジョンを進み始めた。
--
ダンジョン攻略が始まって6時間が経過した。
ここまで罠、魔物を一切見ていない。
見つけることができたのは先ほどのスライムの痕跡だけである。
さすがにこれだけの時間歩き続け皆疲れがたまっているようであった。
俺たちはここで休憩をとることにした。
皆思い思いに腰を落とし休憩する。
ダンジョン内とは言え危険は見当たらないから火を焚いて湯を沸かす。
カップに注がれたお茶の香りがが疲れを流してくれるような気がする。
「なあ、このダンジョン攻略する価値あるのか?」
不意にルスタンがそう呟いた。
「攻略する価値とは?」
「だって、敵はおろか宝すらないんだぜ。攻略してもうまみが無いじゃないか。」
確かにルスタンの言う通りここまでダンジョン内に宝と言えるものはなかった。
それはダンジョン攻略の醍醐味の一つが欠けていると言えるだろう。
しかし………。
「それでも攻略することに意味はある。こんなダンジョンでも長い間放置し続けていれば魔物も増えいずれ反乱を起こすかもしれない。そうなってからでは遅いのだ。」
「そうですよ。」
俺の言葉にオーベールが賛同する。
「そうだね。それに、宝が無くとも攻略さえすればギルドから褒賞がもらえるからね。まるっきりタダ働きにはならないよ。」
さらにロレンスが賛同の声を上げた。
彼の言う通りギルドから莫大な褒賞がもらえる。
それだけギルドしいては国はダンジョンを危険視しているのだ。
そのことに同意するように皆頷いていた。
「肩透かしと思うのは僕も同じだけどね。そんなことより褒賞のことを考えようよ。」
ロレンスが言葉を続けた。
褒賞のことか………。
「褒賞のことですか?例えば、貰ったら何に使うとかですかね?」
俺の考えていることをパウラが代弁してくれた。
「そうそう。例えば………僕なら新しい装備かな。この短剣もいいけど他にもいろいろと使ってみたいしね。ユージンは?」
「俺か?俺も装備だな。冒険者として生き抜くために金を使うのは当たり前だ。」
「装備もいいですが私はお酒を買いあさってみましょうかね。たまの大金は趣味に費やすのも悪くないと思います。」
何の酒を買うのか考えているのかにこにこと笑いながらマルセルがそう言った。
「お酒いいわね。私も趣味に使うかもしれないな。」
そんなマルセルに同意するようにピラールが声を上げた。
彼女もマルセルに負けず劣らず酒好きだ。
ダンジョン攻略の褒賞なんて貰ったら2人して店1軒のお酒を飲み干すのではないだろうか。
俺がそんな心配をしているとメルタが口を開いた。
「私は魔導書ね。褒章が手に入ったら休暇を貰って帝都まで行くからそのつもりで。」
「私も魔術書は心惹かれますね。メルタさん、買いに行くときは私も同行いたします。」
メルタはちゃっかり休暇の取り付けまでして趣味に費やすと口にした。
そして同じく魔術師であるオーベールもそれに便乗した。
そんな2人に呆れていると皆の視線が俺に向いた。
「俺か?俺はそうだな………しばらくは貯金かな。つい最近剣を買いなおしたばかりだし。」
自分のことながらなんとも夢の無い回答だ。
そんなつまらない回答を聞いて皆も呆れたような表情をする。
でも、仕方ないだろう。
実際買いなおした剣は高級品と言っていいレベルの名剣なのだ。
それは懐事情も悪くなる。
「全く我らがリーダー様は夢がないね。俺は遊びつくすぜ!莫大な金を使って女を抱きまくるんだ。」
俺の回答を笑いながらそんな下品な答えを返してきたのはルスタンだ。
そんな彼の回答を女性陣は呆れたような目で見ていた。
いや、あれは呆れているというより汚物を見るような目だろう。
女性陣からそう思われていると気が付いていないルスタンはなおも話を続けた。
「どうせなら帝都の高級娼婦の方がいいな。メルタ達同様褒賞が手に入ったら俺も休暇を取って帝都に行くからよろしくな。」
その答えを聞いて今度は全員があきれ果てるのであった。
そして、皆の視線はまだ答えていないパウラに向いた。
何となく予想はしているが仲間外れは良くないと彼女の答えも聞く。
「パウラはどうするんだ?」
「私ですか?私は教会や孤児院への寄付です。」
予想通りだった。
敬虔なるリシエ教信者である彼女は間違いなくそれら教会組織に寄付をするだろうと思っていたさ。
直前に答えたルスタンとの差に皆苦笑いを浮かべるのであった。
皆一様に報奨金の使い道を決めていた。
だからこそここでダンジョン攻略を断念するわけにはいかない。
そう決意させるものであった。
「ルスタン。」
「ん?」
「一応確認するが、ダンジョン攻略は続けるぞ?」
「おう。」
先ほどまでダンジョン攻略に懐疑的だったルスタンも同じ気持ちのようだ。
それを再確認できてよかった。
俺はぬるくなったお茶に口をつけた。
>>Side:侵入者 ダンテ End
--
俺はダンジョン第2階層の居住区画で侵入者たちの様子を見ていた。
侵入者の数は男6人、女3人の9人だ。
皆、剣や槍で武装していることからタダの村人ではないだろう。
彼らの言葉から冒険者と言う単語が聞こえた。
冒険者ギルド。
ファンタジーの定番だ。
彼らはそこに属しており、そのギルドがダンジョン攻略を推奨しているという。
だからこそこうして今もダンジョンの最奥を目指して進み続けているのだ。
現在迷宮の踏破率は1%にも満たない。
それでも彼らの雰囲気から諦める様子は感じられなかった。
しかし、俺はそれに焦ったりすることは無かった。
正直彼らの姿を見てもあの竜に感じたような危機感を感じられなかったのだ。
それは彼らの実力ゆえなのか、それとも単に人間だからなのかは分からない。
それでも危機感がないがために焦りを感じることもなかった。
これは油断………なのかな?
正直分からない。
アドバイザーが言っていた様に人間はすべて魔王の敵なんだ。
ならばどんなに弱くても危機感を持つべきなんだろうな。
そんなことを考えているとアドバイザーから声がかかった。
『マスター、侵入者はどうでしょうか?』
「ん?今は休憩しているよ。」
『そうではなくて、マスターから見て脅威に感じるでしょうか?』
「今のところは分からないな。まだ、戦闘をしているところを見たりはしていないからね。」
俺は目の前のウィンドウを除きながらそう言った。
正直に脅威と感じないと言っても良かったがそれでは危機感が欠如していると取られかねないのでやめた。
『そうですか。私の方で分かったことがいくつかあります。説明してもよろしいでしょうか?』
「うん。お願い。」
『はい。まず、彼らのパーティは魔術師3人います。うち1人は装備から見て治癒術師です。』
「治癒術師?」
アドバイザーのその言葉を俺は聞き返していた。
字面から何となく意味は分かるがどういった役割なのだろう。
『信仰魔法を扱い治療や支援を主に行う魔術師のことです。』
信仰。
あの自称神を信仰しているのかな?
それならきっと邪教徒に違いないと偏見の籠った目でその女性を見た。
『説明を続けます。これはこのパーティ全員に言えることですが恐ろしく装備がいいです。皆ミスリルやアダマンタイト、オリハルコンと言った上位の金属の素材を使っています。金属装備以外のメンバーも上位の魔物からとれる素材ばかりを使用しています。』
「つまりは?」
『つまりはこのパーティは熟練のパーティだと言えると思います。装備の使いこまれ方を見ても間違いないかと。』
熟練のパーティ。
その言葉に俺は緊張感が沸き立つ思いをする。
そうか彼らは強いのか。
そんな強い冒険者を相手に俺は勝てるんだろうか?
そんな疑問とともに不思議と高揚感を覚える。
俺の胸の内には緊張感と高揚感が渦巻きあっていた。
本日、新作小説を投稿いたしました
タイトルは「可愛いスライムで始めるVRMMO~魔物だからっていじめる人には容赦しません~」(https://ncode.syosetu.com/n8428gi/)
VRMMOゲームを題材とした小説となります
こちらも見ていただけると幸いです<(_ _)>
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