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005


ステータスのスキルの欄に表示された【原初魔法】。


その、文字を見て俺はニヤニヤと顔を綻ばせるのであった。

それは俺が努力して手に入れた成果なのだ。

当初の目的など忘れてただ魔法が使いたい一心で努力した成果なのだ。

それを思うと達成感から喜びを抑えることができなかった。


しかし、いつまでもそれを続けているわけにはいかない。

これはあくまで武器なのだ。

レベルと同じく、この過酷な世界で生きていく上で寄る辺となる武器なのだ。

武器を手にしたからには更なる高みを目指して再び戦わなくてはならない。

死にたくないのであれば。


俺はそう決心するとステータス表示を閉じた。


さて、では早速。

………と言いたいところだが、俺は1つ気になることがあった。


「この【原初魔法】スキルの原初ってなんだ?単に魔法スキルじゃないのか?」


気になったことは頼れるアドバイザー先生にお任せ。

俺はそれをアドバイザーに問うことにした。


『はい。原初魔法とは最も古い魔法です。マスターがやったように魔力の操作とイメージのみで行使が可能です。一方で単純な【魔法】スキルは現代魔法と呼ばれこちらは詠唱により魔法を行使します。』


「へー、違いがあるのか。」


『はい。かつては原初魔法しかありませんでした。しかし、魔力の操作はとても難しい技術です。そのため、原初魔法は廃れてしまいました。』


なるほど。

確かに魔力の操作や放出は俺の才能をもってしても習得に時間がかかった。

常人にとってはとても難しい技術と言うのも納得できるぞ。

しかし、それで廃れるとは根性が足りないな。


『原初魔法の以降に発展したのが魔力の操作と魔法のイメージを魔法式や魔法陣と呼ばれるもので代用する方法です。これらは現代では古代魔法と呼ばれています。』


へー、魔法陣なんてあるのか。

それはそれでいかにもな魔法使いらしいな。


『これら魔法陣は事前に準備する手間がかかりました。そのため、現代ではこれも廃れています。今は魔法陣の代わりに詠唱を用いて魔力の操作と魔法のイメージを行う魔法、通称現代魔法が主流となっています。』


なるほどここで最初に言っていた現代魔法が出てくるのか。

しかし、そうなると………。


「アドバイザーは何故、俺に原初魔法のやり方を教えたんだ?」


『はい。原初魔法と異なり古代魔法や現代魔法は魔法に自由度がありません。画一的な効果しか実現できないのです。そのため、不毛の大地での戦闘では不足すると予想しました。』


あー、そうか魔力の操作や魔法のイメージが一緒ってことは誰が使っても同じ魔法が出来上がるのか。

あれ?

でも………。


「魔法の威力はステータスの魔法攻撃力で決まるもんじゃないのか?」


『その答えは是であり否でもあります。確かに現代魔法においては魔法攻撃力の多寡で威力が決まりますが、原初魔法においてはそれに加えて込められた魔力の量や魔法のイメージも影響を与えます。』


「なるほど。だからこその原初魔法な訳ね。」


確かにあの竜相手に威力はいくらあっても困らないだろう。

そう考えると無制限に威力が出せる原初魔法の方がこの状況には適している。


『納得していただけましたか?』


「おう。十分に納得した。」


『それは良かったです。』


俺の返答を聞きアドバイザーはそう口にした。

どことなく喜んでいるように聞こえたがきっと気のせいだろう。


さて、武器も手に入れたことだし………。


「なあ、今の俺であの竜は倒せるのか?」


『恐らく難しいかと思います。あの竜は下位のレッサードラゴンでしたがそれでも腐っても竜。マスターのステータスが後倍ほどになれば勝負になるかと思いますが今のままではただ蹂躙されるだけかと。』


「ちょっとまて。え?あの竜ってこの辺の最強格じゃないの?」


アドバイザーのその言葉に俺は聞き捨てならずそう聞き返していた。


『はい。成竜はその格でそれぞれレッサードラゴン、ドラゴン、グレータードラゴン、エルダードラゴン、エンシェントドラゴンの5段階に分けられます。マスターを襲った竜は一番下のレッサードラゴンです。』


「あれで、一番下なのか?」


『はい。レッサードラゴンとは言えドラゴンであることに変わりはありません。ステータスは軒並み10,000を越えていると考えてください。』


アドバイザーのその言葉に戦慄する。

それは、確かに後倍は欲しいな。

むしろ今の3倍くらいないと戦いたくないぞ。

じゃあ、しばらくはドラゴンから身を隠しながら他の魔物を倒してレベルを上げるか………。


『マスター、レベルを上げるのはいいですがダンジョンの方も手を付けていった方がいいと思います。』


「ダンジョン?」


『何時までもこのただ広いだけの空間ではまずいでしょう?壁を作って迷宮にするなり、魔物を大量に生み出すなりしないと侵入者に対して無防備となります。』


確かにそうだな。

周りを見回す。

半径100kmに及ぶ巨大な空間ではあるもののそこに遮るものは何一つない。

魔物なんて1匹たりともいない。

確かにこのまま責められればひとたまりもないだろう。

しかし………。


「そんなすぐに侵入者なんて来るのか?」


『マスター。油断は良くありません。転ばぬ先の杖。先んじて動くことに悪いことはありません。』


んー。

確かにアドバイザーが言っていることには道理があるか。


「じゃあ、さっそくダンジョンのデザインをしてみようと思うよ。どうやればいいんだ?」


俺はアドバイザーの提言に従いダンジョンの作りこみを行うことにした。


『はい。と言っても基本は最初に階層を作り出した時と同じです。【ダンジョン作成】スキルの<第1階層拡張>を使えば今いる階層を作り替えることができます。階層作成時と異なるのはどのように作り替えるのか想像力が重要となることです。』


「想像力。」


何処かで聞いた話だ。

原初魔法に続いてここでもイメージの力が重要だという。

なんて言うかこの世界のスキルは適当過ぎないか?


『はい。想像力です。どのように作り替えるのかイメージが付いたら<第1階層拡張>と唱えれば自動的に必要分のMPが消費されてダンジョンが作り替えられます。』


「なるほど。」


『いきなりこんな巨大なダンジョンすべてを作り替えるようなMPはないと思いますのでまずは入口に近いこの一角だけでやってみることをおススメします。』


「そうだね。そうしてみる。」


確かに誰かさんのせいで半径100kmという広大な階層となってしまったからな。

この階層すべてを作り替えるのは今のMPでは不可能だろう。

うん。

本当にどっかの誰かさんには困ったものだ。

………ごめんなさい。


「さてと、気を取り直して………。」


俺はその場に座り込んでダンジョンの第1階層をどのようにするか検討を始めた。

どういう形の方がいいのか………。


『一応参考までに覚えておいてもらえれば構わないのですが、ダンジョンで敵対勢力が死んだ場合、マスターや他のダンジョン生物へ経験値が入ります。そのため、ダンジョンの方針としては撤退させるよりは全滅させる方をおススメいたします。』


なるほどそんな特典があるのか。

それなら致死率を上げる方向で考えたほうがいいのか?

基本的にダンジョンに来るのはすべて敵だから全部を殺すつもりでデザインしよう。

生物を殺すには………。


その後、俺はダンジョンの作成に没頭した。

疲れない【魔王の肉体】をいいことに何日にもわたって作ってはMPの回復を待って、また作ってはMPの回復を待って、を繰り返していた。


--


何度も作業を繰り返し俺はダンジョンの第1階層に迷宮を作り出した。


『マスター、またずいぶんと最大MPを削るものを作りましたね。』


その迷宮を見たアドバイザーのその声は多分に呆れを含んでいた。

それもそのはずだ俺が作ったのは半径100kmの空間に全10階で組み上げた大迷宮なのだから。

未だトラップなどのギミックは盛り込んでいないがそれでも維持するために俺の最大MPの半分近くを削っていた。

それほどの力作を作り上げ満足気な顔をする俺にアドバイザーはなおも呆れたような声色で話しかけてきた。


『それで、マスター。居住区画などは考えているのでしょうか?』


………。

考えていなかった。

ここ数日は【魔王の肉体】で疲れないことをいいことに休みなしで作業していたから必要なかったけど、普通は居住スペース必要ですよね。

どうするか。

いまさらこの迷宮に手を入れようとは思えない。

それならいっそ………。


「んー、第2階層作ってそっちを居住区兼謁見の間にしよう!」


『居住区はいいですが謁見の間ですか?』


「うん。俺って魔王でしょ?なら、必要でしょ?謁見の間。」


俺の言葉にアドバイザーのため息が聞こえるようであった。

何も言っていないのに呆れた目をされているような気がする。

それを気のせいだと思いながら俺は早速作業を開始する。


「えっと。………<第2階層作成>。」


自分の内からMPがごっそりと失われる感覚があった。

俺は続けて<第2階層拡張>で内部のデザインをしていく。

居住区画とそれと話して謁見の間を作り上げる。

謁見の間は絢爛豪華な装飾を施して荘厳な雰囲気を作り出すことを忘れない。

最後に第1階層と第2階層をつなげて完成だ。


「できた!早速入ってみよう。」


第1階層から第2階層に移動する。

すると目の前には巨大な扉が現れた。

豪華な意匠を施されたその扉はいかにも権力者が住まう場所であることを示しているようであった。

その扉を開けて中へと入るとそこは広い部屋となっていた。

部屋を奥に行くと十数段の階段が現れ、その階段の一番上には豪華な玉座がある。


俺は階段を上るとその玉座に腰を下ろした。


「どうだ?」


『マスターのセンスは認めます。しかし、伽藍洞とした謁見の間を見て虚しさを覚えませんか?』


確かにアドバイザーの言う通りであった。

この部屋の装飾にはこだわった。

壁も天井も、柱も梁も精緻な彫刻を施しており、荘厳な雰囲気を漂わせていた。

しかし、その豪奢な様相が余計に寂しさを引き立てていた。

だからこそアドバイザーの意見はもっともなのだが、俺はそれを認められずにいた。


「た、確かにその意見は否定しないよ。うん、ちょっと寂しいかもしれないね。でもね………。」


『マスター?』


「はい。ごめんなさい。調子乗りました。もの凄く虚しいです。」


俺のその言葉にアドバイザーが向ける目がいっそう呆れたものになるように感じた。

目なんてないはずなのに………。

俺は玉座の上で体を小さくするのであった。

いや、こんな威厳の無い魔王がいていいのか?

誰か変わってはくれないだろうか?

いや、本当に。

切実に。


俺がそんなことを考えているとアドバイザーが新たな提案を出してくれた。


『仕方ありません。マスター、ちょうどいいですから魔物を召喚してはどうでしょうか?』


「魔物を召喚?」


『はい。魔物の召喚です。』


そう言えば【ダンジョン作成】スキルに<魔物召喚>の項目があったな。

あれのことかな?

確かに魔物でもいれば少しはこの寂しさも和らぐかな?

何より魔物の軍勢をこの謁見の間に並べてみる風景は壮観なものになりそうだ。


俺はそう思うと早速アドバイザーにやり方を聞いた。


「その魔物召喚のやり方を聞いてもいいか?」


『はい。魔物召喚には2種類あります。1つ目は一定のMPを消費してランダムに魔物を召喚するパターンです。弱い魔物だろうと強い魔物だろうと一定のMP消費で召喚できる反面、ランダムなので目的に合わせた召喚が難しいことと、維持コストも召喚するまでわかりません。』


なるほど。

ソシャゲのガチャみたいなものかな?

一定のMPを支払ってランダムに魔物をゲット!!

初回は10連無料!とか初回はSSR確定!とかならないかな?


そんな馬鹿な事を考えている間にもアドバイザーの説明は続く。


『2つ目はすでに召喚したことのある魔物を指定して召喚するパターンです。こちらは狙った魔物を召喚できる反面、消費するMPは魔物の強さに依存します。また、1度でも召喚、もしくは召喚後に種族進化した種類の魔物しか呼び出すことができません。』


何となくは意味が分かるが………種族進化ってなんだ?


「種族進化ってなんだ?」


気になったことは即聞こう。


『種族進化とはその名の通り魔物が同種上位の種族に進化することです。例えばレッサードラゴンが経験を積んでドラゴンに進化するなどですね。必ず同種の上位種に進化します。ウルフがドラゴンに進化したりはしません。』


へー。

なるほどポ〇モンみたいなもんか。

でも、それって進化なのか?

世代を隔てない同一個体における変化は進化じゃなくて変態な気がする………。


『マスターの場合は今まで魔物を召喚していませんので1つ目のパターン………ランダム召喚となります。』


「なるほど。説明ありがとう。」


良く分かった。

つまりは俺の運しだいであのドラゴンよりも強力な魔物が手に入るってことだろう。

それは気合いが入る。


「じゃあ、さっそく。」


俺は玉座から立ち上がり気合いを入れて魔物召喚に挑む。

その時………。


『マスター、未だ説明は終わっていません。』


「あ、はい。」


アドバイザーに言われ俺はすごすごと俺は玉座に戻った。


『と言っても、後は召喚に直接関係はありませんが情報として覚えておいてほしいことをいくつか説明して終わりです。』


むー、それなら止めなくてもいいじゃないか。

せっかくいい感じに行けそうな気がしたんだけどな………。


そんな風に拗ねていてもアドバイザーは無視して説明を続ける。


『召喚された魔物はマスターと同じく魔素の体を持っています。そのため食事や休息は不要で老いもしません。また、ダンジョンの魔物はダンジョン延いてはマスターに服従します。これは知性を持つ魔物も同じで、そう言った魔物が裏切ったりする心配をする必要はありません。』


「へー、知性を持つ魔物なんているのか?」


『はい。マスターが遭遇したレッサードラゴンも高い知性を持っています。言葉を交わすかは個々の魔物ごとに異なる様ですが。』


なるほどね。

あんな凶悪な見た目でも会話できるのか………。

それなら話し合いでどうにかならないかな?

ならないですね、はい。


「さて、これで説明は全部かな?」


『はい。』


「じゃあ、さっそく召喚しよう!」


俺は立ち上がり手を掲げた。


来い!

俺の最強の僕よ!!


そう念じながら俺は口を開いた。


「<魔物召喚>!」


体の中からMPが減る感覚がした。

謁見の間の中央に強い光が生まれる。

その光は部屋全体を包み込み視界全てが白に塗りつぶされた。


しかし、それも一瞬。

光は次第に小さく収束する。

そしてその場に残ったのは………一抱え程のゼリー状の何かだった。


何だあれ?

そのゼリー状の何かはぽよぽよと音を立てながら跳ねている。

どうやら生物のようだ。


まさか、あれか?

かの有名なスライムさんってやつか?


「なあ、アドバイザーあれって………。」


『はい。あれはスライムですね。』


「そうか………。」


いや、スライムが弱いなんて誰が言った。

それもこれも全部あの国民的RPGのせいだ。

きっとこの世界のスライムは強いに違いない。

俺は期待を込めて再び口を開いた。


「なあ、スライムって強いのか?」


『いえ、最弱ですね。木の棒を持った人間の大人なら危なげなく倒せる程度です。』


俺はその場に崩れ落ちた。

まさか、記念すべき初召喚が最弱のスライムとは………。

この気持ちをどうしたら………。

いや、まだだ!!


俺は立ち上がり再び手を掲げた。


『マスター!?』


「<魔物召喚>!」


再び謁見の間を強い光が包み込む。

真っ白なその光に期待を込めて俺は見つめ続ける。

そして、光が収まるとそこには………2匹目のゼリー状の生物がいた。


く、くそ!

まだだ!

まだ、俺のMPは残っている!!


「<魔物召喚>!!」


3度目の正直。

眩い光の中に強大な魔物が生まれることを信じて俺はその言葉を口にした。

期待した結果は得られなかった。

謁見の間の中央には3匹目のスライムがいた。


えぇい、まだだ!

こうなったら意地だ!!

何度でも繰り返してやる!!


「<魔物召喚>!、<魔物召喚>!!、………<魔物召喚>!!」


俺はその後、数十回その言葉を繰り返した。

結果は全敗。

俺の目には数十匹のスライムがぽよぽよと飛び跳ねる光景が映っていた。


今度こそ俺は膝から崩れ落ちた。

そして、地に手を付けて己の不運を嘆くのであった。


『い、いや。マスターの運もすごいですね。ここまで続けてスライムを引き続けるなんて………。』


普段なら軽率な行動をたしなめることを言うアドバイザーも思わずそう慰めてきた。

少し引いていないかおまえ。


『元気出してください。スライムと言っても中には上位種も混じっているみたいですよ。』


俺はその言葉にハッと顔を上げた。

え?

スライムだけじゃないの?


「上位種?」


『はい。一部のスライムはスライムの上位種ですね。例えば薄紫色のスライムはポイズンスライム、鈍色のスライムはプレイグスライム、そして金属製のスライムはメタルスライムです。』


「それらは強いのか?」


『はい。どれも通常のスライムよりも何倍も強いです。特にプレイグスライムに至っては災害級の魔物と言われ1匹で都市1つを落とすともいわれています。』


なに!?

そんなに強いスライムがいたのか。

俺はじっくりとスライムの群れを観察した。


半分ほどは薄い空色をした通常のスライムであったが、確かにもう半分は他とは異なる色を持っていた。

それらがすべて上位種だとすると結構な戦力なのではないか?


「じゃあ、これだけいればドラゴンも倒せるかな?」


『いえ、それは無理です。』


俺の期待は脆くも崩れ落ちた。

まさに一刀両断ともいうべき速度で否定された。


『例えレッサードラゴンであっても勝つことは困難です。先ほど災害級と言ったプレイグスライムは疫病をまき散らすスライムです。人間にとっては脅威でもドラゴンにとってはそうではないですからね。』


た、確かにその通りだ。

ぐぬぬ。

もっと召喚したい。

強いのが出るまで召喚し続けたいと思うが第2階層の作成と度重なるスライムの召喚ですでに俺のMPは空になっていた。


『ドラゴンは無理ですが人間相手ならそれなりの驚異となると思います。なので当面はこれらスライムを使ってダンジョンの防衛をしていくことを提案いたします。』


「仕方がないか………。」


アドバイザーの提案を俺は渋々受け入れるのであった。


--


玉座の間を埋め尽くすスライムの群れを見て俺は考えていた。


「そう言えばスライムって言うこと聞くのか?こう言っちゃなんだが知性らしいものを感じられないんだが。」


そもそもスライムには物を考える頭はおろか脳みそに当たる器官すら見当たらなかった。

半透明なゼリー状の体の中央に石ころのような器官があるのみだ。

あれが俗にいうスライムの核と言うやつなのだろうか?


『はい。スライムには特別高い知性はありません。野生のスライムは食欲に従って徘徊するのみです。しかし、ダンジョンで生成したスライムは別です。あれらは生み出したマスターに絶対服従。ちゃんと言えば言った通りの仕事はしますよ。』


「そうなのか。」


意外と賢いじゃないかダンジョン産のスライムは。

なら、コストも安いし大量に生み出しては労働力として使うのもいいかもな。

こっちの世界には労働基準法なんてなさそうだし。


『まあ、それでも所詮はスライムなので限界はありますけどね。あまり複雑なことを頼んでも理解はできないと思います。素直に第1階層を徘徊させて侵入者がいたら排除を命じるくらいがいいと思います。』


なんだ。

スライムのくせに賢いじゃないかと見直したけどそんなことは無かった。

それでも、ここに置いておくよりはずっとましか………。


俺は素直にスライムたちに第1階層の警備を命じた。

玉座の間は再び伽藍洞となった。


1匹ぐらい残しておくべきだったかな?


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