表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

004


「生き残った?」


竜から命からがら逃げ延びた俺はその実感がわかないまま扉の前で立ち尽くしていた。


『はい。マスターは無事にダンジョンまで帰ってくることができました。もう大丈夫でしょう。』


その言葉を聞いた瞬間、安心感が全身を満たし俺はその場に膝から崩れ落ちるようにへたり込んだ。

そのまま力なく仰向けに倒れる。

ダンジョンの天井を眺めながら沸々と胸の内から何かがわきがってきた。


「ふ、ふふ。」


俺はその何かを我慢できなかった。


「ふふふ、はははは。」


これは歓喜の感情だ。

生き延びたことに対する歓喜。

強敵を出し抜いたことへの歓喜。


それを体で表現するように声を上げて笑っているのだ。

色々な感情がごちゃ混ぜになって俺は興奮していた。


今は何も考えずにこの興奮を噛みしめたい。

これほど生きることの幸福を感じることなどそうそうないからこそ、今はただただそれを実感していたかった。

俺はそうしてしばしの間ダンジョン内で一人笑い続けていた。


--


『マスター、もう満足しましたか?』


俺がひとしきり笑い終えるとアドバイザーがそう聞いてきた。


「ああ。」


未だ顔は笑みを浮かべたままではあったが俺はそう相槌を返した。

少しでも気を緩めればまた声を出して笑いだしてしまいそうだ。

気を引き締めてアドバイザーの言葉を待つ。


『一先ずは初戦闘の勝利、そして竜からの生還おめでとうございます。』


「うん。ありがとう。」


アドバイザーのその素直な祝福を受けて俺はまた緩む頬を抑えられなかった。

笑い声を上げそうになる思いを気力で抑えて感謝を口にする。

その光景は傍から見たら滑稽だっただろうが生憎とここには俺しかいなかった。


『つきましては戦闘での成果………レベルを確認してはいかがでしょうか?』


アドバイザーの淡々とした言葉で俺はハッと思い出した。

そうだそうだ。

俺はレベルを上げるために戦闘をしに外へ出ていたのだった。


「そうだった………ステータス。」


俺は座り込み、期待を込めてその言葉を口にした。

きっと、レベルが上がって物凄く強くなっているに違いない。

それはまさしくゲームをする子供のような心境であった。



=========================

赤真雄一 / レベル5

 

種族 : 魔王

クラス: 魔王


HP : 69,680/71,710

MP : 62,320/71,320(72,320)


ステータス:

 攻撃力  : 4,190

 防御力  : 3,650

 魔法攻撃力: 4,420

 魔法防御力: 4,290

 器用度  : 3,580

 敏捷度  : 4,390


スキル:

・魔王の肉体

・ダンジョン作成

・アドバイザー

=========================



本当に物凄く上がっていた。

え?

こんなに上がるものなの?

4つレベルがあだっただけで3倍以上になっているじゃないか。

HPとMPに至っては7倍以上に上がっていた。

俺がそのステータスに驚いているとアドバイザーが声をかけてきた。


『さすがは魔王ですね。ステータスの上昇幅が他のクラスに比べて段違いに大きいです。』


「やっぱりそうなのか?」


『はい。通常はレベル1つ上がっても10や20上がるだけです。4つレベルが上がっても100も上がりません。それが軒並み2,000以上上がっているのは魔王と言うクラス故ですね。』


「そうなのか。」


『はい。だからと言って油断はできません。未だレベル5で低レベルと言って差し支えの無い程度しかありません。これで慢心せずにこれからもレベルを上げていきましょう。』


俺はアドバイザーのその言葉に気落ちする。

このステータスでもまだ足りない。

そんなことはいまだ5と言う低いレベルだからこそ何となくわかっていたことだが、またあのような死闘を何度も繰り返すことになることを考えると気が重くなる。


「やっぱり、これでも足りないか?」


『はい。魔物の中には子のステータスよりも高いものもいます。人間の中にだって勇者のようなクラスは魔王とそん色ないステータスを持つこともあります。』


そうだった。

俺の敵は外の魔物だけではない。

あの場にいた俺以外の日本人たちだって俺を狙ってくるはずなんだ。

なんて言っても俺は魔王なんだから。

それにしても………。


「勇者なんてクラスもあるんだな。」


『はい。勇者とは魔王を倒すために選ばれたものに与えられると言われています。こうして魔王のクラスを持つマスターがいる以上、この世界に1人以上の勇者が必ず現れています。』


俺はアドバイザーのその言葉を聞いてあの時真っ白な空間にいた日本人を思い出していた。

あの中に勇者がいたりするのだろうか?

それともあの時は関係ないこの世界の人の中に勇者はいるのだろうか?


前者ならまだいい。

あの時集まっていた日本人は最終的に俺を殺すために押し寄せてくる運命にあるのだから。

しかし、後者の場合は日本人とは別にこの世界の人々も相手どらなくてはならない。

そうならなければ良いと願うばかりであった。


『マスター、どうかしましたか?』


俺がそんなことを考えているとアドバイザーが心配そうに声をかけてきた。


「いや、日本人じゃなくてこの世界の人が勇者になっていたら敵が増えるなって思っていただけだ。」


『その事でしたらご安心ください。』


「ん?」


『勇者のクラスがあろうとなかろうとこの世界の人はマスターの敵です。』


「は?」


俺はアドバイザーの話すその言葉が理解できなかった。

いや、頭が理解を拒否しているようなものだ。

だからこそ間抜け顔でそんな声が出てしまった。


『魔王とは人類の敵として認識されています。そのため勇者以外もこぞってマスターを殺そうと動くことでしょう。』


「え?なんで、魔王が人類の敵なんだ?」


『人類の間では魔王は魔物の主と認識されています。だからこそ魔物被害の多くは魔王が魔物を操って起こしているせいだと考えられているのです。』


魔王が魔物を操る?

なら俺もできるのか?

でも、ついさっきその魔物に襲われたぞ。


「魔王が魔物を操るなんてできないよな?」


『その答えは是であり否であると言えるでしょう。確かに全ての魔物を操るようなことはできません。しかし、魔王の多くは魔物を手足として使えるだけのスキルを持っていることがほとんどです。』


「そうなのか?」


『はい。マスターの場合は【ダンジョン作成】のスキルがそれにあたります。【ダンジョン作成】の<魔物召喚>で召喚された魔物はマスターの手足のように扱うことができるでしょう。』


確かに【ダンジョン作成】の説明を確認した際に<魔物召喚>という項目があった。

あれはそう言うことだったのか。

いや、今重要なのはそれじゃない。


「じゃ、じゃあ、日本人だけではなく世界中の人から襲われることになるのか?」


『はい、その通りです。もっと言ってしまえば日本人とこの世界の人々は手を取り合ってマスターを殺すために動くと思われます。』


世界VS俺の図式は覆せないことのように淡々とアドバイザーはそう言った。

そりゃそうだよな。

こっちに生活の基盤のない日本人は俺を倒すために必ずこちらの世界の人の手を借りようとするはずだ。

特に魔王がこの世界の人にとっても敵となればなおさらだ。


「俺に味方はいないのか?」


『………私はマスターの味方ですよ。』


それは嬉しいけどそうでは無くて。

確かにすごく嬉しい。

これほど心強い見方もいないだろう。

でも、俺は物理的に力となってくれる見方がいるか知りたいんだ。

そんな俺の気持ちが通じたのかアドバイザーは言葉を続けた。


『冗談は置いておいて。』


あんた冗談なんて言えたのか。

と言うか、今のは冗談なのか?

いや、本心だよな?

心からの言葉だと言ってくれ。


『マスターの場合は【ダンジョン作成】で魔物を生み出せますのでそれが味方と言えば味方ですね。』


確かにそれで戦力は増やせるような気がするが、味方と言うのはこう対等な同盟関係に当たる人を考えていた。

例えばだな………。


「俺以外に魔王はいないのか?」


『マスター以外の魔王ですか?確かにいるかもしれませんが、その方が味方になってくれるかは疑問があります。』


「………なんで?」


『魔王と言うのは欲望に忠実な考え方をする方が多いですから、互いに強調し合って敵に挑むなんてことはしないと思います。まあ、全員が全員そうではないので必ずしもそうとは言えませんが………。歯切れの悪い回答となってしまい申し訳ありません。』


「いや、それはいいけど。そうか………。」


味方はいない。

世界全てが敵。

その事実に俺は打ちのめされて絶望感に苛まれる。


自分と自分のスキルしか頼れるものがない。

なんて酷い世界なのだと俺は思うことしかできない。

そしてそんなものを押し付けてきたあの自称神を呪うのであった。


--


気を取り直そう。


さて、直近の驚異としてはやはりこの荒野に住む魔物だろう。

死闘の果てにウルフを倒すことができたが、あの竜にはいまだ勝てる気がしない。

と言うか勝てるようになれるのだろうか?

そもそも、俺ってこの荒野でどの程度の強さを持っているんだ?


考えても分からないから素直に聞いてみることにしよう。


「なあ、アドバイザー。」


『はい?』


「この荒野………不毛の大地だっけ?ここで生きている生物の中で俺ってどの程度の強さなんだ?」


『そうですね………。』


アドバイザーは少し考え込むように言葉を溜めて話始めた。


『ステータスで言うとだいたい中の下と言ったところです。』


「ぐ。真ん中より下か………。」


『はい。しかし、実際の強さで言うと下の下ですね。』


なんだと?

その言葉に俺は唖然とする。

そんなに弱いの?

いや、きっとこれもアドバイザー先生のおちゃめな冗談に違いない!

きっとそうだ!

そうだと言ってくれ!!


俺のそんな気持ちはよそにアドバイザーは話を続けた。


『武器となるものが無いのが致命的です。先ほどのウルフはたまたまうまくいきましたが木の棒や石ではほとんどの魔物は傷一つつきません。』


それは非常な現実であった。

あぁ、本当に俺はそこまで弱かったのか………。


「武器………、武器かぁ………。」


『そうです。武器です。』


まともな武器なんてこの荒野で手に入るのだろうか?

それこそ人間の町まで行かないといけないのではないだろうか?

しかし、弱いままで敵地に入り込むのは絶対にしたくない。

何とかならないものか………。


『まあ、攻撃手段としての武器なので必ずしも道具である必要はありませんが。』


「ん?どういうこと?」


『例えば………マスターの場合ですと【ダンジョン作成】スキルの<魔物召喚>で使役した魔物に戦わせるなどがありますね。』


なるほどそう言うのでもいいのか。

確かにそれなら何とかなるのか?

<魔物召喚>でこの辺に生息している魔物よりも強力な魔物を生み出す。

うん、行けるような気がしてきた。


『不毛の大地に生息する魔物よりも強い魔物を召喚できるかは運に左右されます。そのため確実な方法とは言えませんね。』


こうしてアドバイザー先生だってできるって言ってくれているんだ。

大丈夫だ(現実逃避)。

俺は冷や汗をかきながらそう自分に言い聞かせていた。


『あとは攻撃魔法を使えるようになる事で戦闘能力を上げることができます。』


「魔法?」


なに、その素敵ワード。

いや、この世界に魔法があることはあの自称神が漏らしていたけど、俺でも使えるものなのか?


『はい、魔法です。』


「それは俺でも使えるの?」


『練習すれば可能性はあります。』


俺は一気にやる気が体に満ちてきたのを感じた。

やるぞ!!

俺は魔法使いになるぞ!!


「練習ってどうやればいいんだ!?」


俺は意気込んでアドバイザー先生に教えを乞う。

今の俺には魔法を使えるようになることが重要なのであって、この荒野で生き残るためにと言う理由は頭から抜け落ちていた。


『1人でやるのは難しいのですか、まあいいでしょう。』


アドバイザー先生には何やら思うところがあるようだが俺のやる気が伝わったのか魔法を教えてくれるという。


『まずは自分の中にある魔力を認識するところからです。目を瞑って自分の中を漂う力を感じ取ってください。』


俺は言われたままに目を瞑り自分の体に集中する。

自分の中の力って言うとMPが0になったときに感じたあれかな?

その時のことを思い出して俺は体の中に漂う力を探す。


確かに漂うようにして俺の体の中心に何かを感じ取ることはできた。


「あの。」


『大丈夫。落ち着いて。魔法を使う上ではここが一番の難関なのです。なので、できなくても落ち込まずにとにかく集中するのです。』


「あのさ。」


『私はいくらでも待ちます。そもそも、魔法の取得は1日や2日でできるものではありません。この魔力を感じ取るだけで何カ月もかかることがあります。その間待ち続けますのでゆっくりとやってください。』


「あのさ。」


『はい?』


「なんか、それっぽいの感じ取れたのだけど………。」


俺がそう言うと先ほどまで饒舌に話していたアドバイザーは黙ってしまった。

静寂が当りを包み込む。


『もうですか?』


数秒の時間を有して再起動したアドバイザーが口を開いた。


「うん。たぶんとしか言えないけど。」


再び2人?の間に沈黙が訪れた。

俺は意味もなくなんか申し訳ない気持ちになっていた。


『………そんなこともあるでしょう。』


「ごめんなさい。」


『いえ、謝ることはありません。マスターがそれだけ優秀だったということを認識していなかった私にこそ落ち度があります。』


優秀。

そう言われると悪い気がしなかった。


『気を取り直して。次にやるべきなのはその魔力を自分で操作することです。そうですね試しに右手に魔力を集めてください。』


言われて俺は再び自分の体の内に集中する。

漂う力………魔力に意識を伸ばしそれを少しずつ移動させる。


………うまくいかない。

漂う魔力は水のようなもので一方に動かす様にしても波ができるだけで偏りはできなかった。


「ぐ、ぐぬぬぬぬ。」


変なうめき声を上げながら右手に力が入る。

いや、いくら力を入れようとも魔力の動きに何ら変わりはないのだけれど………。


『焦る必要はありません。魔法を使う上ではここが一番の難関なのです。なので、できなくても落ち込まずにとにかく集中するのです。』


おい!アドバイザー!

おまえさっきも同じ事言っていただろう!?

つまり何か?

魔法を扱う上ではすべての工程が最難関なのか?

それとも適当言っているだけなのか?


そんなアドバイザーの言葉に突っ込みつつも俺は必死に魔力の操作を練習した。


心なしか肩の力が抜けた気がする。

は!

まさか、アドバイザーはこのことを見越して!?

さすがアドバイザー先生だ!


………馬鹿な事考えていないで集中しよう。


えっと、魔力はどうも水のように形が無く、自由に俺の体の内を漂っているように感じるな。

一応、意思を込めると水を漕いだ時のように動きはある。

でも、漕いだとしても波ができるだけで体の一部分に集めることができない。

これは強くしても一緒。

より強く意思を込めても波が大きくなるだけで結果は変わらず。


………こんなのできるのか?


形が変わる気配すらないぞ。

いや、一応形は変わっている。

俺の意思とは関係なしに漂いながら形を変えていた。

しかし、それも一瞬で気が付くと安定した形に戻っている。


あー、もうイライラしてきた!!


俺は強い意思を持って自分の中の魔力を押し潰す様に力を加えた。

すると魔力の塊は飛び散るように体中を巡り、再び体の中心に集まり元の形を成した。


あれ?


漕ぐようにするのではなくポンプのように押し出せば行けるのでは?

俺は再び魔力を押しつぶすイメージで力を加えた。

次は右手に流れるように経路を確保して。

すると俺の中の魔力は俺の意思通りに右手へ流れていった。


「できたー!」


俺は子供のように喜びの声を上げた。


『もう、できましたか。やはりマスターは優秀ですね。』


アドバイザーのその称賛が素直に嬉しい。

しかし、まだ魔法は使えていない。

これで終わりではないのだ。

俺は達成感とともにアドバイザーの次の言葉を待った。


『では、次のステップに行きます。次は魔力を体の外に出します。やり方は先ほどの魔力操作と同じになりますが一つ注意として体外に放出する際に自分との繋がりを残しておいてください。』


俺は再び魔力を操作する。

一度コツを掴んでしまえば慣れたもので、すんなりと右手に魔力を集めることができた。

その魔力を掌から外に出そうとする。


………放出の仕方は操作と同じって言っていたからこんな感じかな?


右手に集めた魔力を再び押しつぶして外へ外へと移動させる。

順調に行っているように感じたその瞬間である。


―プシュー


そんな音が聞こえたような気がした。

掌から放出した魔力が一瞬のうちに空気に溶け込んでしまったのだ。

その魔力はもう俺が操作することはできなくなってしまっていた。


これじゃあ、繋がりが残っているとは言えないよな?

なら、失敗か。


俺はその結果に落胆する。

まあ、最初から一発でうまくいくとは思っていなかった。

根気よく試していこう。


その後、何度も何度も俺は魔力の放出を試した。

どれくらいの時間がたっただろうか。

数分だろうか、数時間だろうか、数日と言うことは無いと思う。

俺は【魔王の肉体】が疲れないことをいいことに長時間にわたって集中してそれをやっていた。


そしてついにそれを成すことができたのだ。

俺は右の掌に放出された魔力の塊が球状になって浮いているのを感じ取っていた。


なるほど。

ポンプのように押し込んでしまうと霧散してしまう。

意志の力で魔力自体を包み込むようにして塊にすることで霧散することが防げるのか。


俺はその結果に満足して口を開いた。


「ようやく、できたぞ。」


『さすがです、マスター。今日中にここまで来ることができるとは思ってもいませんでした。素直に脱帽です。次が最後のステップとなります。』


俺はアドバイザーのその言葉に遂に魔法が使えると心躍らせるのであった。


『最後のステップは放出した魔力を変化させることです。ここで重要なのは想像力です。どのような形に変化させるのか、その細部にわたるまでしっかりとイメージできれば魔法として発現します。イメージの弱い場合は魔法としての強度が弱くなるばかりか、発現しないこともあります。』


アドバイザーは最後に『ご注意を。』と言って発言を終わらせた。

俺はそれを聞いて早速魔法の練習に移った。


魔力を感じ取り、操作して右手に集め、掌から放出し、それを変化させる。

イメージは炎。

あの竜が吐いていたブレスのような火の玉を俺は想像した。

すると次の瞬間………。


俺の右手は燃えた。


「熱っ!熱い!!」


俺は慌てて右手を振るうも炎は消えなかった。


『ま、マスターすぐに魔力を霧散させてください。』


アドバイザーの言葉を聞いて右手に集めていた魔力を手放す。

すると魔量の霧散に合わせて炎も消えた。

いったい何がいけなかったのか?


『マスター、何を想像したんですか?』


「え?えっとあの竜のブレスを想像したんだけど………。」


『なるほど、それであの炎ですか。いくつか問題がありましたがとりあえず魔法の取得おめでとうございます。』


「あ、ありがとうございます?」


『それでは今の魔法の問題について説明しますね。』


そう口にするアドバイザーの口調はどこか起こっているような、呆れているような声色であった。

俺はそれを聞いて何かやってはいけないことをやってしまったと反省するのであった。

いや、自分を燃やすような魔法を使ったんだから反省するのは当然か………。


『まず1つ目は込める魔力が多すぎたことです。マスターはMPの量が他よりも多いので先ほどの100分の1でも十分な威力の魔法になります。』


「え、そんなに少なくていいの?」


『はい。次に2つ目。炎に変化するところまではいいですが炎の動きまで想像力が及んでいません。そのため、炎はその勢いを強めてすぐ近くのマスターを襲いました。最低限、炎をその場に留まらせる、そして前方に向けて打ち出すまでは想像しないと同じ結果となるでしょう。』


「あ、あはは。」


確かに想像するときに燃え盛る炎をイメージしただけでその炎の動きまではイメージしていなかったな。

俺は引きつった笑みでその言葉を受け止めるのだった。


『最後。これは先ほどの魔法の問題点ではありませんが………。初めて魔法を使うのであれば危険性の低いものを使うことをおススメします。変化させるのも炎よりは風や光であれば先ほどのような身の危険はなかったでしょう。』


「………おっしゃる通りです。」


確かにその通りだ。

俺は直前に体験した危険から攻撃するなら無意識に炎をイメージしていたが、別に魔法の練習なら攻撃魔法に限定する必要はないじゃないか。

むしろ初めてなら安全なものから試せばいいのに。

馬鹿だった………。


俺がそんな自己嫌悪に陥っていると再びアドバイザーが口を開いた。


『それでも初めて魔法を使ったことに変わりはありません。マスター、改めておめでとうございます。』


「おう。」


アドバイザーのその言葉に自分を責める気持ちもどこかへ消えていった。

そうだ、俺は魔法を使えるようになったんだ。

俺は少し誇らしげにそのことを思うのであった。


『恐らく新たに魔法スキルを獲得できたと思います。ステータスの確認を提案します。』


「え?そんなことでスキルって手に入るのか。………ステータス。」



=========================

赤真雄一 / レベル5

 

種族 : 魔王

クラス: 魔王


HP : 65,120/71,710

MP : 42,320/71,320(72,320)


ステータス:

 攻撃力  : 4,190

 防御力  : 3,650

 魔法攻撃力: 4,420

 魔法防御力: 4,290

 器用度  : 3,580

 敏捷度  : 4,390


スキル:

・魔王の肉体

・ダンジョン作成

・アドバイザー

・原初魔法

=========================



アドバイザーに言われてステータスを表示した。

そこには確かに【原初魔法】と言うスキルが追加されていたのだった。


よろしければブックマーク登録と評価をお願いいたします<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ