表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MOON  作者: 冴木悠
13/26

第12話:約束



「ここは…?」



意識を取り戻し辺りを見ると花畑の中にいた。




「いてて…何か頭がガンガンする…」



起き上がると、さっきまで真上にあった太陽は傾きかけていた。



「やばっ、早く帰らないと」



でもその前にあの子に会って、さっきの言葉の意味を聞かないと。




―約束 したんだよね‥―



(どう意味だ?)



あの子と何か約束したっけ?ユスラれて遊ぶ約束はしたけど。


でもあの時のあの子の目…

心の奥深くを覗かれるみたいで、凄く恐ろしかった。


(とにかく 確認しないと)



辺りを見渡す。


少女の影はない。



(何処行っちゃったんだ?)



花畑の中を歩き回って探す。

すると少し先で少女の影を見つけた。




「あぁ、いたいた…凜ちゃ…」



名前を呼びながら近付こうとして足を止める。


少女じゃない。




目の前にいる女の子は髪の毛をポニーテールにして花柄のワンピースを着ている。


歳もおかっぱ少女より二つ三つ上か。


月詠の姿も見えない。




(誰だ あの子?)



おかっぱ少女の友達か?



しかし 近くにおかっぱ少女の姿は見えない。




「あの子…どっかで…」


ポニーテールの少女に見覚えがあるが、思い出せない。



(誰だったっけ?)



少女を思い出そうと立ち止まって考える。




(あの髪型、あのワンピース…どっかで見た事あるんだよな…)



すると突然少女が走り出した。


(どうしたんだ?)



走って行く先を見ると、腰まで達した栗色の髪をした儚げな女性が見えた。




(あれは…)



遠い記憶の中で会った事のある大切な人。


そんな気もするが、思い出せない。




少女が駆け寄る。


その少女を女性が抱き締めた。




私はとても気になって抱き合っている二人の側へ寄ることにした。




◇◇◇




「 大丈夫?」



「今日は具合がいいのよ」


優しく微笑み少女の頭を撫でる女性。



「じゃあ、一緒にお花摘んで」



少女が女性の腕をひっぱる。



「はい、はい」



女性は少女に言われるまま花畑まで引っ張られていく。



女性が花畑の中に座ると、少女が淡いピンクの花を摘んで女性に差出しだ。




「これ あげるっ」



「ありがとう」



嬉しそうに差出しだされた花束を受け取り、花の香りを嗅ぐ。



「いい 香りね。この花可愛いわね」



「でしょ、花言葉は《優しい思い出》だよね!」



(花言葉?)



そう言えば、おかっぱの少女も花言葉に詳しかったな……




「お利口ね」



目を細め微笑む女性。



「へへへっ、でねあれは《マーガレット》で花言葉は《誠実・真実の愛》ギリシャ語で《真珠》って意味だよね」




その様子を見てポニーテールの少女が誇らしげに語る。



「ねぇ、しんじつのあい ってなぁに?」



少女が首を傾げながら、女性に尋ねた。



女性は手を振って少女を自分の方に招くと、手をとって膝の上に乗せた。




「それはね、あなたを思う気持ちよ。大好きな人をず〜っとず〜っと大切にするって気持ち。どんな事があっても真っ直ぐに嘘のない心で見つめていくってことよ」



「それって、お父さんの事も?」



少女に優しくキスをする。


「そうよ、お父さんの事も。それから 此処にいる赤ちゃんの事も」



そう言って大きく膨らんだお腹をなでる。



「早く産まれないかなぁ?どっちかな?女の子?男の子?楽しみだなぁ」



少女も女性のお腹をなでる。



「あっ、動いた!」



少女は膝から下りると、女性のお腹に耳を近づけた。



お腹の中で微かに音が聞こえる。



暫くそのまま少女はその音を聞いていた。




???



お腹の音を聞いていると、頭の上に何か被せられた。

頭から取って見ると、白い花で作られた冠だった。



「かんむり?」



冠を見つめる少女。


その冠を再び頭に被せながら、女性が話す。




「このお花は《シロツメグサ》て言うの。花言葉は《約束》」




そう言うと女性は少女の小さな白い手を取った。


少女の小さな手は女性の両手にすっぽりと収まってしまいそうだ。



不思議そうな顔をする少女。




「お約束して欲しいの」



「お約束?」



少女が聞き返す。



女性は少女の瞳を真っ直ぐに見つめて続ける。


「そう。これからどんなに辛い事があっても必ず幸せになるって。あなたは姉ちゃんになるの。あなたがしっかり……」


キ―――――ンッ……



「ううっ、」



耳鳴りがする。



「言葉が聞こえない…」




耳に意識を集中させる。


微かに聞こえてくる声。



「…てあげるの。でも無くしたら駄目よ。あなたはちゃんと…」



キ――――――ンッ…



「…を持って生きて。けっして自分の…を……してはいけない。お願いよ…」




そして女性は洋服のポケットから何かを取り出して少女に渡す。




(なに?)



私は覗き込もうと身をのりだす。



「あ、つぅ…!」



と又例のペンダントが光始めた。


激しい頭痛と共に視界がぼやけていく。



(なによ、いったい何て…ったぁ…)



次第に頭痛が酷くなる。




そして完全に私の意識は消え失せた。




◇◇◇




ガタンッ!



はっ、として目を開ける。



「あれ、ここは…?」



目を擦って回りを見ると、同じ椅子が左右均等に並んでいる。



その座席から次々と乗客が乗降口へ向かう。



(これは バスの中 !?)


あれ?私さっきまで何処かの花畑にいて、あの二人の会話を聞いてたはずなんだけど…




「お客さん 終点ですよ」



この不思議な状況に頭を悩ませていると、車掌さんから声をかけられる。



窓の外を眺める。

駅が見えた。


空は茜色に染まり、薄らと白い月が架かっている。


頭にいっぱい?マークを飛ばしながらも乗降口から降りる。



駅前は家路を急ぐ人や、これから何処かに繰り出す人達で溢れていた。


(私 居眠りしてたのかな?そう言えば…)



ペンダント!!



確か強く光ったはず!


何か変わっているのかも…


私は胸元にしまってあったルナから貰ったペンダントを引っ張り出す。




しかしペンダントは以前と変わらず、鈍い銀の光を放ってそこにあった。


(おかしいなぁ?別に何も変わってないや…、やっぱり夢‥かな?)


私は再びペンダントを胸元にしまう。



(もう こんなに暗くなって来ちゃった。早く帰らなきゃっ)




私は行き交う人達の間をすり抜けながら、足早に家路へ向かった。






茜色に空を染め上げた太陽が地平線に沈むと、東の空には闇の訪れと共に金色に光る大きな丸い月が姿を現した。

次回からは又モダリスタの日々に戻ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ