第11話:花言葉
今回と次話はいつもとちょっと違った感じで書くもりです。どうぞ見てやって下さい。
花畑へ着くと、少女は黒猫と大の字に寝転がっていた。
走って来た私に気づいて少女が口を開く。
「このお花畑素敵でしょ。私とお母さんで作ったんだよ」
そして よいしょっ、と言って起き上がると、少女は自分の隣の地面を叩き座るように催促した。
少女の隣へ座る。
「お母さんはお花が凄く好きでね、色々な事知ってるんだよ」
少女が微笑む。
「色々な事って?」
そう尋ねると、少女は向かって右側にある青紫の花を差して話し始める。
「あのお花は《アヤメ》花言葉は《良い便り・信じるものの幸福》そしてあのお花は《アジサイ》花言葉は《移り気》それからあれは…」
少女は右側にある花から順番に、目の前にある花の花言葉を教えていく。
……あの、私小学生の課外授業受けに来た訳じゃナインだけど…。
戸惑いながらもどうする事も出来なくて、少女を見つめる。
少女は幸せそうに語る。
……まぁ いっか、楽しそうだから。
そのまま付き合ってあげる事にする。
花言葉を語る少女は先程の生意気でこまっしゃくれた態度とは変わって、何の変哲もない歳相応な幼い子供の顔をしていた。
(嬉しそうだな、よっぽどお母さんが好きなんだね)
そんな少女の顔を見て私まで幸せになる。
「でね、あれは《クレマチス》花言葉は《高潔・心の美しさ》あとは《旅人の喜び》」
「《旅人の喜び》?」
私が初めて問い返すと少女は目を輝かせた。
「そう!変わってるでしょ?私も聞いたんだお母さんに (なんで?)ってそしたらね、昔旅人の安全を祈って宿の玄関にこのお花が良く植えられてたんだって。それから来てるみたい」
「そうなんだ。物識りなんだね、凜ちゃんは」
頭を撫でる。
「違うの!物識りなのはお母さん!」
そう言う彼女の目はキラキラしていた。
(やっぱ 可愛いな)
生意気な事言っても、やっぱり子供は子供。大好きなお母さんのお話になると嬉しいんだね。
子供嫌いな私でさえ抱き締めたくなっちゃう。
今すぐにでも、このまま愛らしい少女をギュ〜してグリグリしたい衝動に駆られる。
(いかんいかん、これでは本当に変質者だっ!まじで通報されてしまう!)
抑えろっ! わたしっ
私はこの汚な衝動を抑える為に、地面に咲いている花に触れる。
「じゃあ、これは?確か《シロツメグサ》って言ったっけ?」
少女に尋ねる。
!!
シロツメグサを見た途端に少女の表情が曇る。
(??私何か悪いこと聞いた?)
戸惑ってしまう。
「………《約束》」
少女が小さく呟いて下を向く。
「約束?」
「そう、私とお母さんの」
少女はそう話しながら下を向いたまま手元で何か作業をしている。
私はこれ以上聞くのは止めた方が良いと思って、横を向いて口を閉ざした。
◇◇◇
「できた」
少女はそう言うと、横を向いて膝を立てて座っている私の頭に何かを被せた。
?
頭に手をやる。
頭にはシロツメグサで作った花の冠が被せられていた。
「これ…」
驚いて少女を見つめる。
「こうやってお母さんと約束したんでしょ?」
(?)
「どういう事?」
少女は優しく笑う。
「約束したんだよ」
少女は私を見返し頭を撫でる。
その瞳は澄んでいて、私は引き込まれそうになる。
「‥って どういう事…???」
そう言った途端、胸に提げていたペンダントが蒼い光を放って光り始めた。
「な、なに??」
私はその強い蒼い光に包まれると、意識が遠退いていった。