読書記録:「45歳から心の整理術」「夜のふくらみ」
「45歳から心の整理術」
こどもの習い事の待ち時間にさらっと読めるのをコンビニで購入。
様々な立場の人がコラム的に書いている。
有名どころの香山リカ(あんまり読んだことはないけど)心屋仁之助(ブログを見たことがあるくらい)をはじめ、二十歳過ぎに新書や文庫を何冊か読んだ加藤諦三、諸富祥彦の名前があった。
後は知らない人ばっかりだったかな。
折り返しの年齢になると取捨選択をめぐる課題が大きいのだろうか。
要点のみをピックした簡潔な感じ。これも読者層を意識してのものだろうか。
ハウツー的なもの、もしくは導入。
だけどここまで簡素だと本来の意図とずれて伝わってしまうものもあるんじゃないかとも思う。
理解を置いたまま表層だけをなぞっても効果があるものもある(フィジカルなものなど……いや、これだって意識がないと効果的にはうごかせないか)んだろうけど。
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「夜のふくらみ」窪 美澄
飛行機で何か読もうと思って夏に購入してそれきりだったのをようやくよんだ。
セックス以外のすべてを満たしてくれる男圭祐と結婚を前提の同棲生活を送っているみひろ。
圭祐はセックスなんかなくても他のもので、例えば”愛”なんかで関係は簡単に埋められるものだ、と考えみひろからの問題提起を軽く捉えようとする。
受け入れているようで拒否している、人というものが遠くどこまでも相手の思いに鈍くいられる圭祐といるのは真綿で締められるようだ。
このずれを、圭祐もみひろむきだしに表現できず、捕らわれ続け、どこかふわりと浮いて外れていて、地味に削られていく。
みひろを好きな圭祐の弟、裕太。
優しすぎて頼りない、流れに身をまかせるタイプの男。
狭い世界を舞台に世代を超えて繰り返される縦に長く描かれる窮屈な関係。
兄弟は見えている世界が違うのだ。
同じ家にいても、違う。
このずれは私にはリアルに思えた。
少しの成長の差、立場の差、フォーカスするものの違いが二人をずらす。
共有していると思っていた家族の記憶も。
兄弟は相手をひょいと掬いあげようとする手段も違う。
感性がまるで違うから。
気づけないほどにさりげなく自然にフォローする裕太。
大仰なまでにわかりやすく手を差し出すヒーローのような圭祐。
……圭祐はどう生きたらよかったんだろう。
小さな隔たりに引き裂かれている。
圭祐が全く外の世界で出会う女、ミミがすこし好き。
彼女が現状の地平からスタートしそれを肯定する立場をとるからだろうか。
無理やりにでも。
ただいまひとつ兄弟がみひろを好きな理由が私には感覚しづらい。
愛がわからない。
狭い世界に捕らわれているから?
守るべき存在にうつっていたから?
小さな小さな世界。
どこまでも少しぶれた、真綿で包まれたような感じが付きまとった。
掲載日2018年 01月23日 18時40分