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爺さんの日記に翻弄されている男

 俺はフォルネウスに落ちてから、爺さんの昔話の再現に驚いてもいた。

 爺さんといっても何代か前の男で、我がカールツァイスという家名を裏切り者の代名詞となした人物の事でもある。

 彼はまず故郷のオファニムを裏切ってレラージュに亡命し、そこでまた裏切ってのアガレスへの亡命という、戦歴は見事だが裏切りの連続という誇れない経歴の持ち主だ。

 よって、カールツァイス一族は彼の存在で人生が大変な所もあり、大体にして苦々しく感じている者が多い。


 しかし、俺は個人的にはこのハルベルトという男は好きだ。


 日記などとちまちましたものを、それも手帳に筆記具によってという方法で残していた男でもあるのだが、そこには渡り歩いた星々の事や、特に今の俺には大助かりなフォルネウスの事が事細かく書き込まれていたのである。


 少年時代の俺の冒険心は、彼の日記によって培われたのだろうと言ってもよい。


 さて、日記にあったガーディアンと罪人の関係だが、ナノマシンで人体改造を受けた人間と人間の手で作り出された化け物の共生でしかないのだが、ハルベルトによると罪人がフォルネウスで生き残れる唯一の方法なのだという。

 ただし、永遠の命を得られる代りに人間としての輪郭を失い、永遠にイングジラル鉱石を採取するだけの奴隷となる。


 彼は自分を守るために自分が守るべきだった姫がフォルネウスに堕ちた事を、死ぬまでの後悔として何度も何度も綴っている。


 それはもう、読んでしまった俺に見ず知らずの姫への同情と、ハルベルトの持っていた後悔も受け継いでしまう程に、だ。


 だが、俺自身としては、そんな姫君に会ってみたい気持ちも実は強い。


「うーん。だけど、神様へのお願いは考えてするべきものだろうな。」


 俺は目の前にそびえる巨大生物、銀色に輝く金属の巨大な脚を幾本も持った軟体生物を見上げながら呟いていた。

 クラーケンの存在は知っていたし、ハルベルトの日記でガーディアンというものも知っていたので、その人間を取り込んでいるというガーディアンにこそ会ってみたいという気持ちがあった事は否めない。


 しかしそれは相手が人間の感覚を持っている、という事が前提だ。


「目の前にいるのはクラーケンか。あるいはガーディアンか。だが、ガーディアンだとしても俺達に好意的だとは言い切れないんだって、俺はようやく気付いてしまったよ。どうしよう。」


 部隊は既に後ろに下がらせた。

 では、どう動くか。

 強大な敵には正面から行ってはいけない。

 虚を突くのだ。

 俺は目の前の巨大な存在に、ガーディアンであって欲しい、それも友好的な、と願いながらマイクのスイッチを入れた。

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