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小さなわらわら

「おや、驚いた。完全にクラーケンのご飯状態ね。」


 私が目にしたのは燻る船から次々と灰色の蜘蛛に似た機械が生まれ出る場面であったが、それらはのそのそと、それはそれは静かに眠気を誘う程のゆっくりさで動いていた。

 彼らを見下ろすクラーケンの興味を引かないようにとの行動であろうと、私は一目で分かって感心はしたが、そのうちの一機が鈍い金属音を立てたことで彼らの前進は終了した。


 見たことも無い灰色の機械が動く様は面白かったが、私にとっての興味はそれだけでしかない。

 彼らはきっとあの一機がクラーケンに食べられ始めたそこで逃げるのだろう。

 それが正解だ。

 四メートルほどの攻撃機械であろうと、痛みを感じない二十メートルの化け物に太刀打ちできる筈は無いのだ。


「え、うそ。一機が攻撃し始めた。」


 私は驚くだけではない。

 その機体がクラーケンを倒したと勘違いしているからと、クラーケンからその機体目掛けて飛び出してきた分裂したクラーケン本体を、この自分の腕、ガーディアンの腕であるが、それで薙ぎ払ってしまったのである。


 あら、いけない。

 私はこの世界の生殺与奪に一切関わらないと決めていたはずなのに。


 けれど、私のガーディアンが飢えていたのは私も知るところであり、私は私のガーディアンの捕食の為にちょうどいいと考えを改めて、この子の食欲を解放することにした。


 私のガーディアン。

 名前はハル、だ。


 彼は自分の名前が化け物に付けられたと知ったら、きっと、あのハンサムな顔を歪めて物凄く嫌そうな顔をするだろう。

 金色の髪の毛に金色の瞳をした、金色の騎士のあの人。

 もうとっくに死んだであろう、あの人、だ。


「さぁ、ハル。久しぶりのご飯よ、たんとお食べ。」


 ハルはギュイィィィンと空気を吐き出す音をだして私への返事に代えた。

 クラーケンは共食いもする。

 別の遺伝子を蓄えた仲間を食べたほうが、人を喰らうよりも強大な力を得られると知っている個体だけであるが。

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