我が名は星壊しのカールツァイス
俺は銃を向けられながらフォルブスのいる広間に追い立てられたが、そこには助ける予定のファビエンヌが先客としていた。
彼女を見つけて一緒に逃げるという前半部分のクエストが無くなった事に、俺は幸運の兆しのように感じて自然と顔がほころんだ。
俺を見たファビエンヌ、現在は巨大ダンゴ虫のような姿になっているクラーケン様だが、頭の顔部分と思えるところに三角形の窪みができたので、彼女も笑っているなと尚更に気分は軽くなった。
「怖かった?もう大丈夫だよ。」
ダンゴ虫はぐにゃんと柔らかさを取り戻し、いつもの頭の丸いイカのような軟体に戻った。
俺はこっちの姿の方が可愛いと思う。
触手を口元だろうと思えるところに当てて、俺から背を向けて体を震わせていても、だ。
確実に俺の言葉に吹き出しているのだろう。
俺は俺達を招いた張本人に対して、片手を胸に当てて軽く腰を下げるという適当だが貴族っぽく見えるような礼をした。
再びファビエンヌが、なぜかワッツまでも噴き出していたが知るものか。
俺は広間中に響く様な大声を上げた。
「さて、久しぶりの風呂に、久しぶりの食事のお礼を申し上げます。もう一時間ぐらいゆっくりと眠らせてくれれば良かったのに、という不満はありますが、とりあえず感謝させていただきます。」
俺は単なる皮肉だったが、黒髪の若い男は顔を怒りで歪ませた。
「誰だ!こいつに飯を与えた人間は!腹が空でなければ、こいつを喰うことができないではないか!」
「最後の食事は人間世界の常識でしょう、公爵様。」
俺はワッツの台詞に笑い出した。
ワッツは第一印象が正しいと俺に言ったではないかと。
俺は一歩前に飛び出して、一番近くの衛兵から銃を奪うと周囲の衛兵すべての手から銃を叩き落とした。
彼らは銃を床に落とし、自らも床に転がって穴の開いた肩やひじの痛みに呻いている。
衛兵が俺に銃を向けたが俺は公爵様の生餌であるからして、彼らは俺を脅すだけで発砲など出来ない。
そんな制約がある人達に銃撃するなど俺は人でなしだが、今のところは窮鼠だという事で許して欲しい。
俺は銃を構え直すと、公爵の元へと駆け出していた。
俺は何も考えずに、目の前の権力者を殺そう。
その結果、この世界のバランスが崩れるのだとしても、俺の名前は星壊しで有名なカールツァイスだ。
彼が俺を認めていなくとも、俺が彼の子孫だと認めてくれた彼女の為に、俺は名に違わない行動をするべきであるのだ。




