迷子
船内はイングジラル鉱石を採取するものにしては豪華だった。
勿論、格納庫辺りは普通に港の波止場のような、単なる作業場という雰囲気しかなかったが、その区画を超えて一歩入ると、そこはホテルのような絨毯敷きの廊下に花模様の水色のラインがある白い壁というような豪奢な雰囲気なのだ。
そして私はそのホテルのようなどこかのお屋敷のような世界を歩くにつれて、今日ほどガーディアンであった事を恨んだ日は無いだろう。
館内の狭い通路は私という人間の間隔では普通に通れるはずだったが、私という人間の姿ではないクラーケンは、とりあえず詰まってしまったのだ。
あと少しで、カッツェの傍に行けそうなのに、だ。
「もう!」
私はとても頭に来ていた。
生前はお姫様であったのだ。
人にかしずかれるのが当たり前の人が、適当に放置されて、狭い通路に詰まっているのに助けてもらえないなんて、これは絶対に間違っていると怒りを抱いてしまうのは当たり前ではないだろうか。
そうだ。
私は誘拐までされたのだ。
これはもう、相手方への気遣いなど放り投げて、少々暴れても良いのではないだろうか。
何しろ、銃を持った人間が私の方へと大挙して押し寄せているようなのだ。
「よし、全身硬化。左右の壁を破壊。」
私は言葉通りに体を硬化し、触手を蟹の足のような鋭いものに変えると、私を挟む左右の壁を一気にそれで貫いた。
壁は簡単に崩れ、私はほうっと溜息を吐いた。
さて、次は、と周りを見回すと、壊した壁の左側の部屋の扉が開いて、その部屋に黒服を着たカッツェの部下が入ってきたのだ。
彼は私に微笑むと、お父様がお待ちですよ、と声をかけた。
私は意味がわからないが、彼が進む後ろをついていくことに決めた。
彼が通った扉は通れないから壁ごと壊し、次の廊下も狭いから壁を破壊し、彼が扉を開けて中に入っていくのならばやっぱり壁を壊し、そしてついには私は彼が案内したかった場所に辿り着いた。
私が自分の死刑を宣言した広間。
玉座の間、だ。




