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人質にはそれなりの扱いをするべきだ

 私は大きな格納庫に転がされていた。


 それでは語弊があるな。


 無理矢理に連れ込んだは良いが、クラーケンである私を収容するのは格納庫しかなくて、私は連れ込まれたその場所から次に移動させられることも無く、忘れ去られたゴミのように放って置かれているという状況だ。


 うわ、言い直した方が自分の身が可哀想だ。

 誘拐されて放置されるって、物凄く軽い扱いだ。


 では、私が誘拐されたのではないと仮定しよう。


 ええと、きっと、イングジラル鉱石を収容しようとしたのだが、私というクラーケンを引き込んでしまったという事なのだ。


 うわぁ、さらに私が可哀想になってしまった。


 あぁ、そのうちに宇宙に捨てられて、私はスペースデブリになってしまうのだ。

 宇宙のゴミになってしまったクラーケンって、私が最初で最後で、そして、死に方としては半分お笑いで、これでは死んでも死にきれない情けなさだ。


「うぅ。百年以上生きてきて、最期は単なるゴミ扱いなのね。」


 呟いた途端に、ごうっとダクトから乾いた空気が送風され始めた。

 物凄い強風で熱いくらいの乾いた空気という、ドライヤーに当てられているみたいな状況だ。

 ほら、そのせいで、私のハルがどんどんと水分を失って乾いていってしまっているではないか。


「わぁ、それは駄目よ!」


 私は、というか巨大なイカはぐいんと起き上がると、周囲をきょときょとと見回した。

 私の目は透視の出来る仕様に変わり、格納庫の壁の中、配線のある所を探した。

 私がハルと繋がっていられるのは、ナノという小さな機械があるからだ。

 ナノがあるという事は、私は機械に干渉できる、という事なのである。


「あ、あった。船のマザーに直結しそうなのが。」


 私は一本の触手の先を硬質化させると、壁の中の通信ケーブルらしきものを目掛けて触手をびよーんと伸ばして刺し貫いた。


「よし。ジャック開始。」


 昔の私では不可能だろうが、脳の一部が機械となっている今の私では、情報処理という芸当も出来るのである。

 どうやるのか自分でも理解できないが、私の意思がそれを望めば望んだ通りの結果が出るのだ。

 私の脳みその私の意思と関係ない部分、脳みそは八十パーセントは眠っているという通説の眠っていた部分が動いているのかもしれない。


 が、とにかく、私の脳みそは船のマザーに直結する前に弾かれ、もう!、で、サブパネルの方は取り込めたので、格納庫の空調を止めてスプリンクラーを完全に開放した。

 ハルは何も言わないが、ハルは喜んでいるに違いない。

 水を浴びた事で、この子はかさかさからポヨポヨに戻ったのだ。


「ふう。では、次はどうしようかな。元気になったら散歩よね。」


 格納庫の扉は開いた。

 私はケーブルから触手を外すと、自由への扉へと進んでいった。

 サブパネルの情報でカッツェの姿が見えたのだ。

 取りあえず彼と合流するのが一番だろう。

 彼は私を守ると約束したのだもの。

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