女友達
カッツェの采配なのか、彼らの感謝の表れなのか、私はカッツェの部下達に煩い位に囲まれている。
それでは語弊があるか。
浅瀬に私はガーディアンの姿のまま座り込んでおり、その佇まいは海の大きな岩同然であろうが、カッツェの部下達は私の傍近くにまで駆けよって来ては、お菓子を食べる?から始まって、好きな映画は何ですか?とか、人間だった時は寝るときはパジャマでしたか?ナイトドレスでしたか?とか、どんどん砕けすぎだろうという質問までされる始末である。
まぁ、声を掛けてくるのが男の子ばかり、という点が過去の私を彷彿とさせるもの悲しさであったが。
私には女友達というものはいなかったのだ。
学校というものにも通えなかった私の周りにいたのは、侍女という雇われの話し相手だけだった。
だから私は彼女達一人一人を特別視せずに、誰とも同じようにして対応してきたのだが、そんな行動がかえって彼女達との溝を深めるばかりだった。
そんな私がハルベルトとだけは心を許せたのはなぜだろう。
「見てください、姫様。あの新人の近衛兵。なんて素敵なんでしょう。」
侍女の溜息声に私は彼女達の指し示す方向を見返して、そうだ、確かに私も彼女達と一緒に溜息を吐いたのだ。
近衛兵になりたてのハルベルトは、金色の髪と金色に輝く瞳が真っ白な制服に映えて、まるで絵本の王子様のような神々しさだったのである。
そして私は侍女達と一緒に溜息を吐いた事で彼女達に一歩近づけた気になり、もっと彼女達と秘密を共有したいと、ハルベルトに私から近づいて行ったのだ。
私が異性であるハルベルトに話しかけるには、侍女の付き添いが必須となる。
私の付き人当番に侍女達はなりたがり、私はほんの少しだけ女友達が出来た様な気になって喜んでいたのだ。
なんて幼い、浅はかで哀れな娘だろう。
でも彼は、いつも私には微笑んでくれていた。
金色の瞳には私しか映らない。
いいえ。
私の瞳にこそ彼の姿しか映っていなかった。
「姫様、お話があります。」
呼びかける声に私は白昼夢から覚め、私は私に脅えている女性を見返した。
彼女が私という存在に見るからに脅えているのは、彼女が私と同じだからなのかもしれない。
いや、これから同じになると言うべきか。
涙迄も湛えたその瞳は透明で美しく、私は彼女の告白を聞きながら、彼女の知りたかったことを答える事には気が引けた。
それは彼女には死刑宣告でしかない。
どうしてクラーケンが人だけを襲うのか、私が私のガーディアンに共食いしかさせないのはなぜなのか。




