寂しい子守歌
私は海の中でうっとりとその歌声を聞いていた。
低い声は滑らかで、喉を震わす音はぞくっとするほど深く素晴らしい。
カッツェに今すぐ会いに行きたいが、彼の歌声をこのまま聞いて眠っていたいという気持ちの方が大きかった。
私はこの二日間、毎日が楽しいのだ。
ナノマシンによって変えられた体は感情までも凍らせてくれたからか、私はこの世界で悲しいや苦しいなど、――嘘ばかりだ。
私は時々しか目を開けない。
この体は休息を取ると決めたら、何十年も眠っていられるのである。
「でも、神様の采配ね。私が起きているその日に彼がやって来た。」
目を瞑りながらフフッと笑い声を立て、目頭から再び熱い涙が零れるに至り、私は彼らに出会ってから人間に戻って来ているのだと実感してしまっていた。
ここに落ちてから泣いた事など無かったのだ。
心が生き返っているのだろう。
それでは、彼らがここから消えたらどうなるのか。
「私が終わればいい。いくつも見て来たじゃない。ガーディアンの自殺方法。ただ眠るだけ。眠ったまま深海に落ちていけばいい。」
ただし、眠りにつくときにはカッツェのこの歌声を聞きたいと思った。
彼の歌さえあれば、幸せな頃を思いながら眠っていられる。
しかし私は布団を無理矢理に剥がされた。
大きな海流が起こって、そんな風に私は荒波に転がされたという事だ。
横になっていた浅瀬は岩や何やらでごつごつしており、痛みは無いがむぎゅうっという感じでいろいろな所が押された圧迫感に、私はかなり腹が立った。
せっかくのいい声にうっとりしながら最高の転寝をしていたというのに、このような無粋な真似をする者は何者か、と。
私はざっぷんと海上に飛び上がり、カッツェを今にも襲いかかろうとしていたクラーケンを目にする事となった。
「お前は何をしているのです!」
私は触手を三本も硬質化させ、その三本の凶悪な鉾をクラーケンの真横に一気に刺し貫いた。
クラーケンはオオオンと大きな方向を上げて海に沈み、私はカッツェに無事かと尋ねた。
彼は、あぁ、何という事だろう。
全く無事でない顔をしていた。
私は無意識のまま彼の元へと向かうと、彼に両腕を差し出して彼を抱きしめ、あぁ、彼は私を抱き返し、私に申し訳ありませんと呟いて涙を流した。




