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幼子のように

 俺は海を前にして何をするつもりだったのか。

 真っ暗な海にはさざ波の音はするが、さざ波を照らす月も星も見当たらない。

 銀色に輝くガーディアンだっていないのだ。


 俺が裏切り者の家系の子孫だと言われながらも自尊心を保てたのは、裏切り者でも英雄視されているハルベルトの血を引いている事と、一生独身だったハルベルトが唯一子供を成すほどの恋人が高祖母であったという昔話によってだ。


 会った事などあるわけも無く、昔話として聞いた事ばかりだが、高祖母は気性が激しいが愛情豊かで、とても美しくて思いやりのある良い母であったということだ。


 それが全部嘘だったのである。


 俺達はハルベルトに望まれるどころか唾棄すべき存在だっただろうし、オファニムを壊した張本人の子孫でしかないのだ。


 俺は真っ暗な海を眺め、ここに落とされたファビエンヌはどれだけこの真っ暗な絶望の中にいたのだろうと思いを馳せた。

 彼女は俺がハルベルトの子孫だと知っても、恨み言一つ言わなかった。

 それは彼女も彼を愛していたからなのだろうか。

 では、俺が彼女を不幸に貶めた女の血を引き、ハルベルトにも望まれなかった子供の子孫だと知ったら、彼女は俺をどのような目で見るのであろうか。


 俺は海を眺めながら、我が家に伝わる歌を口ずさんでいた。

 単なる子守唄だ。

 高祖母から子へ、そして孫へ、終には俺へと伝わったオファニムの子守歌だ。


 さぁ、眠れ。

 お前が安らかに眠れるように私が歌い続けよう。

 木々も星々も歌っているよ。

 歌がある限りこの世界はいつまでも続く。

 安心してお眠り。


 ざざんと大きな波が立ち、自らが輝きを放つ大きなものが現れた。

 それは見たことも無いクラーケンだった。

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