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何も話せずじまい

 せっかく再会できたのにもかかわらず、俺が彼女にかけた言葉は、大丈夫ですか?と、それだけだ。

 その上、俺はワッツ達に呼ばれて打合せをさせられて、結局クラーケンな彼女にしか会っていない。


 どうして俺は管理者になんてなってしまったのだろう。

 可愛い子ならばふらふらと口説きに行けるドローが羨ましい。


 そして、金色の髪を無造作風に流している色男と銀色に輝く美少女という組み合わせは、なんと絵になる光景であった事か。

 俺は彼女の美しさにハッとし、何か気の利いたセリフの一つでも口にして彼女に話しかけたいと息を吸い、気が付けば彼女は海に帰っていた。


「やばい、やっばーい。」


 さっきまで座り込んでいたドローが慌てた様にして俺の元へと駆けて来た。


「どうした、ドロー?」


「ガラテアさんが、虫に気を付けろって。あれはそこら中にいるって。」


 俺は勝手にガラテア呼びをしているドローにむっとし、さらに、ドローを脅えさせて消えたガーディアンを意地悪な人だと思ってしまった。

 俺も虫という単語でびくりと怖気が背中を走ったのだ。

 右腕だってがくっと重みが増した。


「あ、キア、気分がもっと悪くなったか?」


「あ、いいえ。大丈夫です。でも、どこで寝ればいいのでしょう。基地内は臭くて我慢できないし。」


「そうそう。臭くて堪らないよね。あのきれいなガラテアさんも怪我をすると臭いのかな。全然匂いも無い感じだけど。」


 エノク人の血とキメラの血は、何日も置いておいた魚の腐った強い匂いで我慢がならない程なのだ。

 アシュレイ・キアが俺の腕にぶら下る理由として、臭いで気分が悪くなったので一人で歩けないから、だ。

 俺がそれに異を唱えずに右腕に彼女をぶら下げたのは、臭いで気分が悪いので逃げ出す口実が欲しいので、だった。

 俺は大きく溜息を吐き出してから大きく息を吸い直した。


「もうすぐ日が暮れる。建物内に戻るぞ。」


「少佐。機械こそあの虫が入り込むって、あのガーディアンが言っていませんでしたか?」


「体内のナノがデータを書き換えるらしいからね。電力削減に扉も手動に切り替えられたこの一昔前の建造物ならば、虫の侵入は防げるでしょう。さぁ、戻るぞ。汚れのない部屋を見つけて、そこで全員そろって雑魚寝しよう。」


 俺の寝袋にアシュレイが入り込んでこないように、俺はワッツとリンドンと川の字になって寝ようと考えながら、部下達を建物の中へと追い立てた。

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