表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/42

怖い人間

 カッツェはあっという間に港を制圧した。

 敵の兵器をそのまま敵に返して制圧の道具にしてしまうなんて、なんて人でなしな男なのか。

 童顔でハルベルトよりも純粋そうな男であったのに、ハルベルトにはできないだろう陰険な戦法を使えるだなんて、私は彼に脅えるだけである。


 ただし、ここに住んでいた者達があの目玉の餌にされていたと聞いて、私はカッツェをよくやったと心の中で褒め称えた。


 さて、再会しての彼が開口一番、ありがとうでなく、私へ大丈夫と聞いて来たのは、私の砲台壊しを私の手先が狂ったからと彼が思い込んでいたからだった。


「昨夜はすまなかった。でも、君が生きていてくれて良かったよ。少佐がかなり心配して腑抜けになるくらいでね。もちろん、僕もだよ。君のような華奢な可愛い子が大怪我をしたのではと、気が気でもなかった。ねぇ、お願いだ。頼むから今度からあんな危険な事をしないでくれ。」


 私の手を握って懇願するのは、飛行機乗りだというジョッシュ・ドローである。

 カッツェはどうしたのかというと、私が大丈夫と答えると、さっさと建物の中に入ってしまって姿を消してしまったのだ。

 私は彼らが埠頭に立ててくれたテントのお陰で、こうして素顔になった彼の部下達と邂逅は出来るのだが、私はカッツェとこそ話したいのである。


 いや、話せたとして聞けるだろうか。

 ハルベルトの最期を。

 子孫がいるのだから、彼が家族に囲まれて幸せだったのはわかり切っている。

 私の渡した魔よけを子孫に与えたのだから、彼が私を忘れなかったのも事実であろう。

 では、私は何を聞きたいのか。

 あるいは、それにかこつけて話したいだけの、人寂しいだけなのか。


「ガーディアン、いえ、ガラテアさん。」


「え?」


 私はドローの言葉に驚いて彼を見返した。


「本当にきれいだ。」


「はい?」


「あなたは男の見る夢のガラテアそのものです。」


「あの、わたくしは化け物ですのよ。あなたよりもかなり年寄りですの。」


「美しければ年の差なんて僕は気にしません。」


 ハルベルトのように金色に輝く男は、ハルベルトと違って外見通りに華やかな言葉をいくらでも女性にかけれる様だ。

 私はそろそろ彼の手を振り払おうかと考えたその時、建物からカッツェがようやく姿を現した。

 彼の右腕にはブロンドの髪を肩先に揺らしている可愛らしいアシュレイがぶら下っていて、彼は彼女に気さくそうな笑顔を見せて見下ろしている。

 目元の笑い皺がなんてセクシーなんだと思ってしまった私も品が無いが、そんな私の視線に気が付いたのか、笑顔だった彼は顔をはっとした表情に変えた。


 恋人とのひと時を邪魔されたと感じたのかしら。

 私はドローに視線を戻すと、そのハンサムな彼にさようならと言った。


「さようならって。」


「もう家に帰る時間。今夜こそ虫を気にせずに眠りたいのでは無くて?」


「え、昨夜あなたが全部殺されたのでは。」


「あれはそこらじゅうにいるわよ。駆除しきれないくらい大量に。だから、虫って呼ばれて嫌がられているの。おやすみなさい。」


 脅えた顔をしたドローはするっと私から手を離し、彼から解放された私はガーディアンの体の中に戻った。

 嘘は言っていない。

 あれはどこにでもいる。

 湿った土のある所には。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ