余計な事
昨夜は脱皮を利用した。
共食いによって力を増したハルは、今までの古い皮を脱ぐことが出来る。
ハルの要らない薄皮で生春巻き状態にした虫を焼夷弾で焼き殺したのは良いが、脱皮したばかりのガーディアンはしばらくは海水から出ることは出来ない。
私は海の中に漂いながらカッツェ達を追っていたが、私の知らない間に港湾の人間達が様変わりしていた事には驚いた。
彼らに一体何が起きたのだろうとぼんやりと眺めていると、やはり私の知らない不思議な展開が目の前で起きたのだ。
「あんなの、クラーケンじゃ無いわ。」
ふわふわと上空に浮かぶ巨大な目玉は、クラーケンがイカだというのならば貝の形状だと言うべきであろう。
「あんなの、一体いつこの世界で生まれたのかしら。」
首を傾げる私に、カッツェの大声が響いた。
「あれはエノクのキメラじゃないか!」
「まぁ、外来種だったら駆除しなければ。まずは邪魔な飼い主から。」
私は触手の一本を硬質化すると、それを槍のようにしてカッツェ達を襲う砲台へと放り投げた。
私の槍は砲台を貫き、次は外来種、と思ったが、そういえばカッツェと約束したのはクラーケンに襲われた際だと思い出した。
それに、カッツェ自身があの外来種を倒す気満々なのだから、私が勝手をしてはいけないだろう。
そう、勝手な判断はいけないのだ。
昨夜はカッツェの言葉に私は泣きそうになったでは無いか。
――恋人も妻もいないのに、どうしてこれをくれたのかわからないって――。
「あぁ、ハルベルト。」
今は泣いた。
両手に顔を埋めて。
彼が反旗を翻す行動を取ったのは、きっと私のせいなのだ。
私が引きこもったのを、彼は私が幽閉されたと勘違いしたのだ、きっと。




