挨拶がてら
まず、港を警護しているらしき大柄な男だと思う二人に対して、俺は両手をあげて声も上げた。
「敵意は無い!我々は友好を望んでいる。」
返事は一斉掃射だった。
俺はするりと操縦席に戻り、俺に撃ち込まれた弾は全て俺のバーガスの張っていたシールドでほとんどは対処できた。
残りは蓋の内側に二発めり込み、三発は大事なバーガス表面に傷をつけた。
「あぶねぇ。威嚇射撃も無しかよ。俺のガラテアを傷物にしやがって。」
「少佐。」
「制圧。一応殺さないようにして。」
「かしこまりました。一応留意します。」
リンドン少尉がジェニーン・ヴィグとトール・エマーソンの二機を引き連れて港の機銃を連射させながら前進し、だだっ広い埠頭へと乗り上げた。
俺に銃を撃ち込んだ二人は、当り前だが建物内へと逃げ込み、建物からは宇宙ステーションだったと確信させる迎撃施設がにょっきりと生えた。
「うわぁ、気を付けて。前時代的な砲台だが、現在の人道的兵器と違って殺傷力が遥かに高い。」
戦争にもルールがあって、その時々で規制される武器があるのだ。
「人道的兵器って考え方自体が矛盾ですけれどね。」
「言うなよ、ワッツ。そっちの車からのミサイル攻撃は可能か?」
「あれは頑丈です。時間はかかりますが船の玩具を使った方が良いですね。」
「任せる。聞いていただろ。とりあえず、煩いおもちゃが壊れるまで時間をつぶしてくれ。」
「バーガスにだって起動可能時間ってものがあるのに。」
俺に抗議の声を上げたが、彼女達三機は砲台からの掃射に避けつつも散開し、だが、海から現れた緑色の触手によってヴィグ機が海へと引き込まれた。
「あぶない!」
俺の機体はヴィグ機を掴みその場に鉾を突き刺した。
だが、とてつもない力には抵抗できずに俺達は海に引き込まれ、いや、寸前で俺達を引き寄せる力が消え、俺達は反動で逆方向へと転がった。
「ヴィグ!転がれ。的にされる。」
俺はヴィグ機を押して転がし、俺の機体の右腕は撃ち抜かれて粉々だ。
「少佐!」
「腕が一本、気にするな。全機、海を警戒しつつ後退!」
「海では無いです!上、上に!」
エマーソンの声に頭上を見上げれば、そこには大きな目玉を持った、いや、目玉そのものに苔が生えたようなクラーケンが浮かんでいた。
「あれはエノクのキメラじゃないか。」
アガレス星の人間を捕獲して殺すためだけに作られた、人を貪るだけの脳みそのない獣だ。
「ははは。元々の俺達の敵じゃないか。俺達は飼育場を強襲する予定だったじゃないか。それがこの一匹だ。倒せなければこの先は無い。相手はエノク兵だ。徹底的にやるぞ!」
しかし、キメラを援護する砲台は、もともとは戦艦対応のものである。
俺達にとっての難敵は砲台そのものだ。
反撃どころか砲台の狙いから逃げ一手の俺達に対し、目玉は俺達をぎょろりと睨みつけると、目玉部分が蓋だったのかと思う程にぱっかりと口を開け、苔のような触手を俺達に放った。
だが、俺は逃げるべきであろうが、逃げるどころか自分がすべきことさえを忘れた。
きらりと光った銀色のものが、砲台に突き刺さったのを目にしてしまったのだ。




