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ガラテア

 俺は夢を見ているのだろうか。

 俺は彼女にバーガスの持つ焼夷弾を手渡した。

 まあ、俺がバーガス専用の焼夷弾を持てるはずが無いので、弾のロックを外しただけだ。

 ガチリと弾丸が外れた音を聞いた彼女は、それを大きな触手で器用に取り出し、そして、自分の胸に弾が縦になる形で抱くようにした。

 そして、ずざざざざと音を立てて俺達のテントから後退し、真っ黒な海を背中にしてそこで立ち止まった。


 夢はここからだ。


 大きな弾丸の弾頭の上部分のガーディアンの皮膚が盛り上がり、なんと、そこからニョッキっと人の頭が出てきたのだ。

 それは真っ白の様だが空に輝く星々のようにネオン色に輝き、血の気の無くなった肌は真っ白だが銀粉をまぶしたかのように煌いている。


 ぐうんと頭が持ち上がり、長く真っ直ぐな髪を振り分けて現れた顔は、まだ幼さの残る少女の顔だ。


 美しいとしか言えない顔立ちだが、彼女は十代後半くらいにしか見えなかった。

 俺が彼女の美しさに溜息を吐く間に、彼女は殆ど全身、両足首はガーディアンの中にあるが、それ以外の部分を全て晒していた。

 小ぶりな乳房に俺の片手で納まりそうなほどに細い腰、それらが長方形の布を肩の部分で前後に縫い合わせただけの貫頭衣にも似た、囚人服専用のフォルネウス星の宇宙服に包まれていたのだ。

 囚人を表わす黒のラインは、蛇のように手足や胴体部分に巻き付くようにしてデザインされている。


 ハルベルトの日記によれば、刑から罪人が逃げ出そうとしたときに、その蛇のような黒いラインが囚人の肉体に貼り付いて拘束し、そこから即効性の毒か何かが囚人に注入されて囚人を一瞬で殺すのだそうだ。

 だが俺は、夜空の星のように輝く美しい少女がただただ美しく、体に巻き付いた蛇で世界を滅ぼせるリリスのようにしか見えなかった。

 いや、女神の姿をかたどったら動き出したという、夢の女である真っ白なガラテアなのかもしれない。

 ガーディアンという衣を脱いだ彼女は、涼やかな透明感のある声を出した。


「さぁ、虫たちよ、ここに食べ物があるわよ。」


 彼女の身体はぽうっと温かみのある光を纏い、すると、俺達のテントに貼り付いていた虫たちが一斉に剥がれて彼女へと次から次へと向かって行った。

 彼女を喰らおうとするが、彼女は眩い光を纏っているからか虫たちは直接に彼女に貼り付けない。

 そして、全ての虫によって彼女をぐるりと包み込み、彼女が真っ黒な繭にかえられてしまったその時、ガーディアンの触手全てが薄い魚の大きなひれのようになり、真っ黒な彼女をがっしりと巻き込んで拘束した。


「待ってくれ!それはやめてくれ!」


 俺は叫んでテントから飛び出しかけ、ワッツに後ろから掴まれて引き戻された。


「ガーディアン!」


 ガーディアンは大きな音を立てて海中に沈み、真っ黒な海はオレンジ色の大きな波を一回だけ起こし、その後は何事も無い静寂だけの真っ黒な海に戻った。

 空との境目が見えないくらいに、どこもかしこも真っ黒な静寂だ。

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