ピクニック
私は誰かと一緒という事が久しぶりで、白い海岸線をのしのしとコミカルに歩くヤシガニたちの後をとても楽しい気持ちで付いていっていた。
あの機体はヤシガニに似ているからバーガスと呼ぶのだと、カッツェの部下の一人、イアン・マクベスという男に教えられた。
外見はわからない。
だって、今のところの彼はヤシガニの一匹でしか無いのだから。
イアンは私が安全だとカッツェに聞かされるや、猫に絡むノミのようにぴょんぴょんと浅瀬にいる私の方へと近寄って来て、次から次へと隊の内緒話を語って話しかけてくるのだ。
例えば、バーガスには全員が適当な名前をつけている、とか。
猫さんは私と契約が済んだ途端に私などいないもののように、すたこらさっさと先頭を駆けて行ってしまったというのに!
「俺のはティディです。」
「かわいいあだ名ね。」
「そうでしょう。一緒に寝るにはティディベアこそ最高です。バーガスにつける名前は女の子の名前でなければいけませんからね。」
「でも、その熊さんは男の子よ。」
「いえいえ、俺のティディは女の子ですよ。」
私はクマのぬいぐるみのティディという呼び名がどこから来たのか説明すべきか一瞬考え、姫様時代だった時の対応をすることにした。
適当に流す、だ。
「最高だって言ってもらえるあなたのクマさんは幸せね。」
「あなたを引き込めるベッドがあれば、俺こそ幸せになれる気がします。」
「まぁ。」
こんな巨大な化け物にまで口説いてしまえる猛者がいるのならば、あのハルベルトだってカッツェと呼ばれてしまうに違いない。
「ほら、隊列から外れすぎだよ。」
ぶっきらぼうな声を出したのは、ドロテア・エマーソンというらしい。
彼女のバーガスはカッツェと同じぐらいに一目で見分けられる。
それは、彼女のバーガスには彼女の名前が大きく書かれているからである。
私はこういう兵士は大好きだ。
私が名前を忘れたことで、気まずい思いをお互いにすることが無くなる。
「ドロテアさん、ごめんなさいね。」
「いえ、あたしの名前はトールです。ドロテアはこの機の名前ですね。」
「恋人、さん、なのかしら。」
「いえ。この隊はバーガスに女の名前をつけるのが習わしだと聞いていたので、適当に、ですね。」
「そう。」
なんて面倒くさい。
私は彼らと時代が違うのだと、ピクニックから退散することにした。
カッツェが待ってと叫んだ気もするが知るものか。
私はざぶんと海に沈んだ。




