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結婚行進曲  作者: 葛葉
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03

少し短めです。

 

 一方私はというと、幼い頃からラル係になりずっと隣についていることが多かったため、持ち運びができて隙間時間にもすることが可能な趣味を持つに至った。


 刺繍、編み物、洋裁、ビーズ…手芸一般を色々彷徨ったが最終的にはレース編みになり、それは今は仕事と名を変え、現在では複数の工房におろす売れっ子作家になっている。


 締め切りさえ守れば自宅でもどこでもでき、時間も融通が利いて、女一人でも長くやっていける仕事だ。



 仕事の中でもとりわけ私の指名で受注が多いのがウエディングベールである。

 基布となるベールにクロッシェレースのブレードを縫い付けていく。作業の説明はこれだけだし、挙式に使うのもベールは30分かそこらしかない。


 だが侮るなかれ乙女の夢。


 いつか見た結婚式、子供ながらに植え付けられたそれは追い求める理想となり、現在作られていない入手困難な型のベールの注文も多い。ドレスにこだわるのはもちろん、その特注のドレスに合わせるベールにもこだわるという面もある。


 これ程多くのドレスがありながら、それに合わせる市販のベールはウエディング専門店でも数種類しかない。ドレスはデザインがすぐに変わり、次々に新しいものが作られる。逆にベールはそんなドレスの流行り廃りに一々合わせなくてもいいように、無難かつシンプルなデザインを使い回すことが多いのだ。



 花嫁の象徴たるベールに強い印象を持つことは多い。

 私自身もその口で、憧れからウエディングベールを作り始めた。

 好きこそ物の上手なれ。執着はこだわりと情熱を生み出し、幸い才能もあったのか私はそれらを作品に昇華させることができた。


 基布の透け感、レースとの微妙な色合わせ、幅、モチーフ、軽やかさとベールにした際の肩や背中への落ち方。

 経験からくる私のその絶妙なフォルムは絶対に市販品とは一線を画している自信がある。ニッチな需要だが、注文は一定数あるし、私がフルオーダー品を納品してクレームがきたことはない。


 また、最近はサムシングボローとして私のベールを使う際、少し印象を変えるために手直ししたりといった注文も入ってきて、安定していた。



 プラス彼のお父さんからお小遣いという名の彼のお世話代もいくらかずつもらっている。

 いい加減大人になりみんな働いたり結婚したりで疎遠になっていく中、私と彼はそうして週に何度も会っていた。昔と変わらず食事を食べさせ、新たに彼の部屋の片付けや洗濯なんかもするようになっていた。



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