夏の夜の夢04 狂人、恋人、詩人はみな想像力のかたまりだ
アランが女性代表的な何かになっているけど、ポンコツか天然かの2択なのでツッコミ不在。
部屋の外に捜索範囲を広げても、コミュ障が選択肢に上るか否か…
「…プロポーズ?『責任とるから結婚しよう』って言うよ?」
そう言うと、アランは吠えた。
「お前はプロポーズを舐めてんのか⁈プロポーズは女の夢だぞ?一生に一度しかない!特別な!」
そうか、そうなのか!
でもどうしたら舐めてないプロポーズになるんだろう?
もう俺は縋るようにアラン様を見上げるしかない。
もちろん手をついたポーズはキープ中だ。
「…仕方ない。お前にはこれ以上は無理か…。
いいか、プロポーズにはロマンチックさが必要だ。
お前は手ぶらで!シチュエーションも整えないで!何がプロポーズだ!」
「⁈」
「それとな、『責任とる』ってなんだよ。そもそもその言葉にロマンチックさがないことも問題だが、『責任とる』って俺が言った言葉だろう?
一生に一度のプロポーズの言葉はオリジナルじゃなきゃダメなんだ!」
俺は悶々と考え始めた。
未知の概念と遭遇した上に、オリジナリティが必要って…詰んでる。
「あと、さっきお前が言ったことも当たってはいる。」
さっき?
「本当は子供が出来る前にプロポーズして結婚式しなきゃなんだから、これ以上遅くなることは許されない。」
さらに納期は本当はもう過ぎてるとまで言われて絶望感ハンパない。
……いや、これは俺の招いた事態。
絶望なんて俺がしていい筈がない。
クーに謝らなきゃ。
そしてクーに最高のプロポーズをするんだ!
✳︎✳︎✳︎
ロマンチックさ、ロマンチック…
手ぶらで…プレゼント?ロマンチックなプレゼント?
花? 宝石?
クーの好きなもの…ウエディングベール?
かつてないほど集中し、プロポーズを考える。
シチュエーション…ロマンチック…プレゼント…
サプライズ?
驚き…音? 光?
ロマンチック…雰囲気…曲?
頭の中で点滅する点が散らばり、その単語を拾い集め形にしようとする。
ロマンチック…ときめき…煌めき…
星? 夜? 黒?違う。
煌めき…太陽? オレンジ?
もう少し。
あとはそれらをつなぐ何か。
つなぐ…まとめる…紐? 袋?違う。
まとめる…つなぎ…つなげる…つながり……
そうだ!
✳︎✳︎✳︎
俺は新たな魔法を開発し、クーの家に走っていた。
ロマンチックさの要素、すなわち花、宝石、ウエディングベール、プレゼント、音、光、曲を全部注ぎ込んだ。
その分ちょっと不安定になって今にも弾けそうになっているが、そこはつなぎを万能物にして抑え込んでいる。
気持ちがせいて、クーの家のドアを叩き続ける。
あとは最後の要素。
オレンジ色を入れるためのこの夕日が落ちる前にしなければ!
最早ドンドンドンと強盗かなんかと勘違いされそうな感じにドアを叩いていると、中から不機嫌そうなクーが出てきた。
一瞬怯みそうになるが、怯んでる暇などないと自分を鼓舞する。
「クー!良かった、出てきてくれて。これ…」
間に合った!
今までなんとか押し留めていたソレを解放する。
そして最初の音が鳴り始めーーーーー
全てが鳴り終わった。ここからが本番だ。
「クー、遅くなってごめん。
俺、全然気付かなくてダメで。ごめん。
でもこれからはクーのことを一番大事にするし、子供も二番目に大事にする。
好き、愛してる。
だからクー、結婚して下さい。」
ドキドキした心臓の音が耳元で聞こえる。
うるさいな。
クーの返事を聞き逃したらどうしてくれる!
「バラの花束みたい。何個あるの?」
「108個だよ。クー…」
クーの表情は読めない。
これは、どうなんだ?
まだジャッジは続いてるってことか?
「ふふっ…綺麗ね。アランから、何言われたの?」
「プロポーズにはロマンチックさが必要だって。
あと、愛の言葉はオリジナルじゃなきゃダメだって。
クー…」
ねえ、どうなの?
それって必要なの?
「アランってば…」
「ねえ、クー!」
アランは今どうでもいいだろ⁈
「はい、喜んで。」
「えっ?なに?」
「『なに?』って、返事よ。プロポーズの。
私もラルのこと、ずっと好きだった。愛してる。
だからーーー」
周囲からクーの返事をかき消すような歓声が上がった。
クソ!最後まで聞こえなかった!
でも、いいんだよな?
返事はイエスでいいんだよな?
はにかんだクーの笑顔を見ていると実感が湧いてくる。
やった!
よかった!
成功だ!
最高だ!
後で心の中で謝った。
間違いなく一番の功労者であるアランに『どうでもいい』なんて悪態をついてごめんなさい。




