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結婚行進曲  作者: 葛葉
13/15

夏の夜の夢03 恋する阿呆は死ぬほど馬鹿をするもんだ

 

 無意識のうちに塔に帰ってきて、寝たんだか寝てないんだかわからないけど、明るくなった部屋で座っていた。


 なんで?

 なんで?


 頭の中でずっと同じことが繰り返しているけど、本当には考えられていない。


 なんで?

 なんで?


 表面上は静かにパニック状態だった俺を正気に戻したのはアランだった。


「ラル?どうした?」


「アラン…クーが、もう俺とは『セックスしない』って。」


「はぁ⁈いつのまにそんなことに!?てゆーかなんで⁈なんかしたの⁈」


「子供が出来たからだって。」


 そう。そうだ。

 俺、子供に負けたんだ。

 子供が出来たからもう俺はいらなくなったんだ。


 またもや繰り言のような思考に囚われて、アランが何か言っていたのも聞こえなくなっていった。




 ✳︎✳︎✳︎




「おい、最低野郎。」


 バッシャーーーン!


 水をかけられ意識が浮上する。

 呆然としつつも見上げると、アランがまた言った。


「お前だよ、最低野郎。返事くらいしろ。」


「なんだよ、最低野郎って。」


 だんだんと頭がハッキリしてきて、同時にムカついてきた。


「ホントのことだろ?最低野郎。」


 よし、わかった。

 なんだかわからないが、悪口を言ってきたってことは俺も怒っていいってことだな。

 ほぼ八つ当たりだが、この持って行き場のない気持ちをぶつける口実と対象ができた。

 立ち上がろうとすると


「クーに話、聞いたぞ。最低野郎。」


「クーに?」


 絶句するとはこの事だ。


「クーが俺のこと最低野郎って言ってたの?」


「いや。でも話を聞くと、お前は最低野郎だ。なんで子供が出来ることしといて、出来たらおしまいなんだよ。」


「おしまいってなんだよ!子供が出来たからって、もう俺はいらないって!捨てられたのはこっちだぞ!」



「あーはいはい。子供が出来ても責任もとらない最低野郎は捨てられても当然ですねー」


 控えめに言って驚愕した。

 ガツンと頭を殴られたような衝撃だった。

『責任』

 そうだ。俺の子供だ。

 俺とクーの子供なんだから、俺も行かなくちゃ。

 ダッシュしようとしたところをアランに掴まれて、思わず舌打ちする。

 が、教えてくれたのはアランだ。

 そうだ、お礼も言っていない。


「アラン、ありがとう。教えてくれて。俺、クーに『責任とる』って言ってくる。」


 そう言ってまた部屋を出ようとするも、アランは離してくれない。


「アラン何?急ぎ?俺、早くクーに…」


「いや、今のお前は最低野郎ではないけど、馬鹿野郎だから行ってもダメだ。」


「……なんで?」


 普段はそんなことないのに、今日はアランからはディスられてばっかりだ。でも真面目な話をされている。クーに関わることならば聞かなければならない。


「お前、今クーに会いに行って、どうするつもり?」


『どうする』?って…


「『責任とる』」


「だから、そう言って具体的に何すんの?」


「……」


 責任。責任?


「結婚する。」


「馬鹿野郎。」


「なんだよ!?」


「お前ホント馬鹿。ちょっとは自分で考えてから言えよ。」


「……」


「そういうとこだぞ、多分。今回クーに愛想尽かされたのって。」


「!!……自分で考えないところ?」


「クーのことを、な。自分のことばっかりで。

 だからクーは1人で子供守ろうと覚悟したんだろ。

 本来ならお前がクーと子供、2人を守らなきゃならないのに。」


 そうだ。

 こうして身体を重ねたら子供が出来るなんて当たり前だ。

 子供が出来たら責任とるなんて当たり前だし…てゆーかその前に俺がクーに世話をかけないなんて当たり前で、俺が子供の世話をしなきゃなんないんだ。

 あ、産まれてくる前にやっぱり結婚しなきゃ。

 クーはいつもウエディングベール作ってる。

 あれで結婚式したいに決まってる。

 あれ?

 さっき結婚するって言っても馬鹿野郎って言われた。

 なんで?わかんない。


「アラン…なんでさっき結婚するって言っても馬鹿野郎って言ったの?」


 恐る恐る聞くと、ふーっと深いため息をつかれた。

 やっとそこまできたか、と。


「お前さ、『子供の責任とるために結婚しよう』って言われてクーはどう思うと思う?」


「……『やっと気付いたか、遅い』って思うと思う。」


 それも謝らなきゃ。


「お前は根本的に間違っている。」



 なんで?

 なんで?


「教えて下さいアラン様!」


 俺はもうお手上げだ。いや、今俺は両手を床についている。平身低頭。無条件降伏。


「まずはプロポーズに決まってるだろう!」



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