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これで完結です。
「クー!」
コンコン、コンコン
なんだこのデジャヴは。
私はいつからか予知夢を見れるようになったんだろうか。とても気が重い。
「クー!早く開けて!早く!」
ドンドン!ドンドン!
気が重い、が、開けないわけにも行かなそうだ。
「夢ならよかったのに…」
仕方なく玄関に向かった。
ドアの向こうにはやはりラルが立っていて、夕焼けを背負って輪郭がオレンジに滲んでいた。
眩しさと切なさに一瞬目が眩んで、その後何度もまばたきを繰り返して目が慣れるのを待つ。
目を眇めつつやっとラルにピントを合わせると夢と同じように何かを抱えているのが見えた。
「…それ、何?」
現実でも彼は想定外の物を持っていて、ただ夢と違って本当に何かわからなかった。
白っぽく光り輝くモノが、抱えられた腕の中でウゴウゴ蠢いていた。
「クー!良かった、出てきてくれて。これ…」
蠢いていたモノから小さく千切れ、勢いよく空に向かって飛び出す。
屋根の上くらいまで届くと、パン!と綿花みたいに弾けた。
同時に聞こえた音は見た目とは違い破裂音ではなく、オルガンの音のように澄んだ音色だった。
それは1発では終わらず、昼花火のように次々と打ち上がり、弾け、夕焼けを浴びて色付き、その後ふわふわと落ちてくる。
と同時に音が単なる音ではなく、連なって旋律を奏でていることに気づいた。
パ
パ
パ
パーン!
パ、パ、パ、パーン!
パパパパン!
バパパパン! パパパパン! パパパパン!
だんだんと滑らかになり、単音から和音へ広がり形になったその曲はーーー
多分ものの数十秒間の出来事。
音楽が一節を奏でて終わり、続いて最後の音を出したモノがふわふわと地面に着地した。
改めて見ると、私とラルの周りには円を描くように沢山のオレンジ色に染まったモノが落ちていた。その形はまるで幾重にも重なった夕焼け色の花弁をもつバラの花。
「クー、遅くなってごめん。
俺、全然気付かなくてダメで。ごめん。
でもこれからはクーのことを一番大事にするし、子供も二番目に大事にする。
好き、愛してる。
だからクー、結婚して下さい。」
「バラの花束みたい。何個あるの?」
「108個だよ。クー…」
「ふふっ…綺麗ね。アランから、何言われたの?」
「プロポーズにはロマンチックさが必要だって。
あと、愛の言葉はオリジナルじゃなきゃダメだって。
クー…」
「アランってば…」
「ねえ、クー!」
「はい、喜んで。」
「えっ?なに?」
「『なに?』って、返事よ。プロポーズの。
私もラルのこと、ずっと好きだった。愛してる。
だからーーー」
ワァーーーーッ!
気付くと周囲には見知った人、人、人。道路にだけでなく、隣近所の家々の窓から庭からみんなが顔を出していた。わー!だの、ヒューヒュー!だの、おめでとう!だの、酒だー!だの、もう口々に叫んでいる。
生まれた時から私達を知っている人達に囲まれている状況にやっと気が付いた。
確かにあの音と光、大変注目を集めますね。
そしてその中心では二人の世界を構築した男女が公開プロポーズ。
しかも二人共知ってる顔。うわぁ見ちゃう見ちゃう。
そして男の言葉に女は返事を焦らし…手に汗握っちゃう!
ついに返事はーーー!!
で、盛り上がり、近所の祭り並みに飲めや歌えの大騒ぎになりました。
✳︎✳︎✳︎
その後、帰ってきた両親は目を剥いて驚いた。
そんな気配の微塵もなかった引きこもりの娘(働いているけどね!)が結婚する事になっていて、しかももう子供も出来ていると言う。
むしろ順番的に孫が先…
父は苦り切った顔でラルに言った。
「物事には順序というものが…」
ラルのお父さんも寝耳に水状態、しかもこちらは本人からではなく周囲から聞いて初めて知った分ウチより悪い。
そして、息子の世話を自分が頼んだという負い目もあるのでウチを訪ねて来てからずっと顔面は土気色だった。
「ご、ごめんなさい。
あの、俺、プロポーズってどうしたらいいのか知らなくて、調べてもあんまりわかんないし、だから魔法作るのに時間がかかって、それで遅くなって…ごめんなさいおじさん、おばさん…」
そんな問題じゃないのだが、元々ラルを半息子のように思っていた両親は甘かった。
あっさりと
「まぁ、結果は同じか。」
と許した。
それに嫁に行って欲しくないが、このままだと結婚できなそう、いやしかし孫は見たい…なんて複雑な親心を満たす最高の縁組だと気付いてウハウハになっていた。
それを見たおじさんもやっと顔色が蒼白くらいに改善した。
ゼクシ◯のパパパーンの曲=結婚行進曲です。
伝わりましたでしょうか?(;´Д`A
ちなみにラルはサルになっていただけで、ブームではありませんでした。
家に来なくなった10日間は、振られた仕事を終わらせるためにこんを詰めてやって窶れました。
なんてラル視点を書こうと思いましたが、中々難しい…
お付き合いいただきありがとうございました。




