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またしても結婚がテーマ。10話程度です。
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「セックスってどんなんだろう?」
「…してみる?」
「したことあるの?」
「ないけど。」
「俺もない。どうしよう。」
「『好き』とか『愛してる』って言ってからくちづけて始めるのよ。」
「『好き、愛してる』」
「私もずっと好きだった。愛してる。」
その日ラルと私は単なる幼馴染から形を変えた。
ずっと産まれた時からの付き合いで、私はこれからもずっと一緒にいるものだと思っていた。
「クー…」
多分ラルもそう思っていたんだと思う。
そうすると、もしかして彼からしたら私の方が酷い裏切りをしたってことなのかなぁ?
今から考えても全然わからなかった。
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ラルと私は幼馴染だった。
王都内の庶民が暮らす下町。一戸建てではあるけど、庭付きまでは珍しいといった同程度の家々が立ち並んでいる区画だ。その中に私とラルの家もあって、そこの父親達は仕事、母親たちは家事に忙しく、上から下までの年齢の近所の子供はみんな一緒くたに遊んでいた。
私の両親は田舎から出てきて運良くこの地域に空家ができた時に入ることができた。父は比較的大きな商家の出で、継がないために家を出てきたが読み書き計算の他に商売の基本ができていたため、就職先も手堅い商会にできた。
ラルのお母さんは身体が弱く、彼が3歳のときに亡くなってしまったらしい。私も同い年なので記憶はないのだ。
彼のお父さんは王宮の下級とはいえ文官だったため収入は安定していたし、夜はほぼ帰れたが、日中はそうはいかない。仕事を辞めて田舎に帰るか悩んでいた時に
「今までと変わらない」
と私の母がラルの面倒も見ると言った。両親同士も仲が良かったし、彼のお母さんが元々伏せがちだったので、私の家にいるのにも慣れていた。現在の仕事は収入が安定しているし、ラルのお父さんはその申し出を受けた。
ラルは変わった子供だった。
悪い子というのじゃない。どちらかといえば大人しい部類の子だった。ちゃんと状況をわかっていて、母の言うことをちゃんと聞き、積極的に手伝いなんかもした。
ただ、時に空に目を奪われ食事もトイレも忘れてずっと見入っていたり(その時はお漏らしをしてさすがに恥ずかしかったらしく、次からはトイレには行くようになった)、蟻の行列をひたすら手で遮ってみたり、家中の紙を全て紙飛行機にして窓から飛ばしたりした。
紙飛行機の時はお父さんの本まで1ページずつ全部破いてやったので、すごく怒られた後、すごく心配されていた。お母さんが亡くなったストレスからの行動かと思われて。でもそんな大人たちの心配は私の一言で解決した。
「ラルのブームなんだから、気が済めば終わるよ。」
どういうことかと聞かれたが、むしろなんでそんな事を聞かれるのかがわからなかった。
ラルは昔から何かにハマるとずっとそれを続けてしまう。
今まではご飯の時間になれば口にご飯を入れてあげて、体力が尽きればその場で寝落ちして、その間に大人に知らせて運んでもらったりしていた。
大人たちはラルはよく外で寝落ちしているのは、小さい子にありがちな体力の限界まで遊んだ挙句に急にどこでも眠ってしまっていたからだと思っていたらしい。まぁある意味同じだ。体力の続く限りやっていたのだし。それがお昼寝が必要ないくらいの体力がついて、大人の目に止まる夜中になるまで続けられるようになっただけだ。
私は母からラルの面倒を見るようにと言われていたので、彼がそうなった時は邪魔せずにずっと側にいた。他の時は彼も他の子と一緒に遊んでいたし、特に気にされなかった。
だが彼は徐々に他の子達と遊ばなくなっていった。あまりにも2人でいるのでまた大人たちに聞かれた。
「ラルが飽きたからだよ。鬼ごっこも川遊びも虫捕りも雪遊びも。」
子供の遊びなんて単純だ。季節毎の遊びも年が巡ればまた同じだ。ある程度年齢が上がって出来るようになった遊びも、もうバリエーションが尽きて遊び飽きてしまったのだ。
その後はもっぱら本を読んだり図形を描いたりとインドアなものにハマっているし、家の中では1人でいてもそうそう危険はない年になったので、ラルがそうなっている時は私は他の子と遊ぶようになっていた。