僕は
「その子は私のことを見て、死体を盗んだ私を見て、ただただ笑ってた…」
りせちゃんは何年も前の衝撃的な事実を淡々と語る。なぜりせちゃんは、ここまで死体が好きになってしまったのか。
「ねえ…その男の子って…」
僕は固唾を呑んだ。
まさか、な。
すると、りせちゃんは、僕の腕の中からにょきっと顔を出して、僕を見つめる。
「ねえ…私…やっとあなたに会えた…」
りせちゃん…?
「なのにあなたは、何にも覚えていなかった…」
ねえ、待って、りせちゃん…
「ねえ…!本当は、全部覚えてるんじゃないの⁈」
「り、りせちゃん??どうしたの…?何か、勘違いしてない…?」
するとりせちゃんは、身を乗り出して僕の頬に両手を当てる。いや、どちらかというと掴むという感じだ。
「そう…そう…!そうそうそうそうそう!!!!!その顔!!!!!!その顔だよ!!!!!!
さすが私が恋い焦がれた、死体から産まれた子…!どこまでも私を夢中にさせてくれる…あの時お母さんを突き落としたのはあなた。確かに見た。この目で。私、見たの。
あなたと寝てると、いつもあの時の衝撃を思い出す…
体が叩きつけられる時の鈍い音、何かが飛び散る音、辺りの美しい血飛沫…ほら、その驚いた表情も、あの死体そっくり…」
「…」
「ねぇ、私のこともっと見つめて?
もっと愛してよ。
可哀想な飛び降り死体…はぁぁ…大好き…」
りせちゃんはそう言って、にやっと笑った。
鳥肌がぶわーっと立つ。
咄嗟にりせちゃんを突き放した。
「もう…!!なんなんだよ!!りせちゃんも僕のこと、疑うの…?りせちゃんだけは……僕が殺人なんかしないって信じてくれてたと思ったのに…お前もかよ!!!!」
「ねえ?なんで?私はあなたに会えてほんとに嬉しかったんだよ…?なのにどうして…隠すの?ねえ…?どんな気持ちでお母さんを殺したの?私に教えてよ?」
りせちゃんがゆっくり、ゆっくり近づいてくる。りせちゃんの笑顔。偽物の笑顔…僕の大好きな笑顔が向けられていたのは、僕じゃない。死体になった、僕のお母さんの面影…
「ねえ…!!!」
りせちゃんは僕の服の裾を掴む。
僕は恐怖で後ずさる。
が、りせちゃんはそのまま、僕に勢いよく飛びつき、腕で覆って抱きしめた。
「ねぇ!!!ーーーくん…!」
あれ?
僕の名前、そんなのだっけ…?
そういえば最近、誰かに名前を呼ばれた記憶がない。いや、だけど、名前を呼ばれずして生きていくなんてできない…
色の無かった記憶が、徐々に鮮やかになる…
〜〜〜〜
『ーーー!また、何か殺したの…?』
〜〜〜〜
『受付番号3番でお待ちのーーーさん。』
〜〜〜
『おい、ーーー。お前が母さんを殺したんだろ?』
〜〜〜
『ーーー!お前のせいで家族はめちゃくちゃだ!』
〜〜〜
『ーーー…!お前なんて…!産まなきゃよかった…!!!』
寒くて暗い夜。真っ暗な夜。強い風が吹く。
僕はベランダで、何かを見下ろしている。落ちていくのは…
ズキンッ。頭が痛くなる。
あれ?
え?
あれ?
あれ?
あれ?あれ?
あれ?あれ?あれ?
あれ?え?あれ?え?
あれ?あれ?あれ?僕、誰?
え?誰?
あれ?あれ?どうなってる?
え?あれ?誰?僕?どうなってる?
え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?
え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?僕?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?僕?え?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?僕?え?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?僕?え?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?僕?え?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?僕?え?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?僕?え?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?僕?え?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?僕?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?え?誰?あれ?あれ?どうなってる?え?あれ?誰?どうなってる?え?あれ?あれ?あれ?あれ?え?あれ?え?あれ?あれ?あれ?誰?僕?え?
ここまで書くのに、主人公の名前を呼ばないという縛りが1番大変でした。




