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僕の彼女の鞄の中は  作者: やゆよ
隠し事
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記憶の真相

「はぁ…」


「なんか、疲れちゃったね…」


りせちゃんと、僕の家のベッドに寝転がった。

寝ながら天井を見つめる。父さんはどうなったのだろうか。本当に刑事さんを刺したのなら今頃連行されているだろう。僕の家族は、バラバラになってしまった。まあ、心の面から言えば一度も1つになったことなどないのかも知れない…


「ねえ、お父さんに言われたこと、まだ引きずってる…?」


りせちゃんは僕の方を向いて聞く。

母さんが不倫をしていたこと、僕が母さんを殺したと疑われていること…全て嘘に決まっているのに…頭が痛くなりそうだ。


「うん…でも、それはずっと言われてきたことだから…」


「お父さん、ひどいね。実の息子を殺人鬼呼ばわりしてたんでしょう…?」


りせちゃんは僕の首に手を回して、頭をゆっくり撫で始めた。なんだろう…すごく落ち着く…


「僕は母さんを殺したりしてない…母さんも、僕のことを愛してくれていた…母さんが自殺した日、僕は自分の部屋にいた。突然リビングから大きな音がしてね、ああ、また父さんは母さんを殴ってるんだって。

でも、いつもみたいに叫び声とか聞こえなかったから…何となく、いつもより静かだったんだよね。それで、不思議に思ってリビングに行ったら…母さんが、ベランダの手すりに手をかけて…」


ふと、りせちゃんの手がさっきより速く動いているのに気付く。というか、段々速くなっていく。りせちゃんの方を振り向くと…ガラス玉のような目でこっちを見ながら、笑っている……


「ねぇ…私がどうしてこんなに死体好きなのか、話したことあったっけ…?」


「え?いや、無いけど…」


どうしたの?突然、と思ったけど、りせちゃんが僕の胸に顔を埋めて来たので、びっくりして声が出なかった。どきどきする。りせちゃんの髪からなんだか、いい匂いがする…


「私ね、小さい頃、人が死ぬのを間近で見たんだ。その時のことが、今でも忘れられないの…

あれは私が小学校3年生の時。その頃から、自分がちょっと変わったものが好きっていう自覚はあったの。ドラマとか、人が死ぬ所が特に好きだった。できるだけ死体の描写を細かく見たい。でもお母さんに気味悪がられて、ちょっと悲しかったな…


そんな時期に、事件が起きた。

その日は習い事に行ってて、家に帰るのが遅かったんだよね。いつも自転車で行ってたんだけど、その日は自転車がパンクしてたから歩いてたの。夜の真っ暗な道。ちょっと怖かった。


それで…あるマンションに通りかかった時、上から何かが降ってきた…と、同時に、目の前で、パァンって…何かが落ちてきた。何かと思ったよ…ふっ…ふふっ…


死体だった。


そのすぐ後、周りでビタンッとか、ピチピチッっていう音がした。血や細胞や、身体の小さな破片が雨みたいに降り注いだ。


ねえ、死んじゃったの?って聞いたんだけど、相手は人というより肉の塊。


死んでしまった人は話せない…幼いなりにわかってはいたけれど、当時はやっぱりまだ実感が湧かなかったんだろうね。


目の前で人が物に変わってしまう。

目の前に突然、死体が出来上がる…激しく打ち付けられて、もう全部が、ぼろぼろの物体…辺りに漂う濃い匂い…鼻が曲がるような……汚れたアスファルト…木っ端微塵になった肉や臓器の塊……


そこで悟った。もう、普通に生きられない。心配してくれていたお母さんには本当に申し訳なかった。でも……抑えきれない………こんなの見せられて、黙っているなんて無理…!!もう、どきどきして仕方がなかった…!!!


その時、ちょっと魔が差したんだよね。どうしても目の前にある死体に触れずにはいられなかった。ある程度形が綺麗だった左手の薬指と小指を鞄に入れて持って行っちゃった。ほんのり温かかったよ。


それで、帰る時、やっと上を向いた…どこから来たんだろうって。そしたら…


人がいた。


ベランダで下を見ながら笑っている、小さな男の子。」

やっと1話の記憶を回収しました。長かった…

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