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たくや

「あれ…?たくやの車かな…?」


僕たちは疲れている。

刑事さんや父さん、りせちゃんのお父さんはどうなったのだろうか…そういえば、火高さんと言ったっけ。あの刑事さんはお腹を怪我してた。普通に怪我しただけじゃあんなに血は出ないだろう。


はっと気付く。

僕が事件ちゃんを見たときに感じた刺激臭は、あの刑事さんのものだったんじゃ無いか…?

ぐちゃっという音も、あの高さから模型が落ちれば中身が潰れる事も考えられる。しかも、あの時は模型から血が滲み出ていた。あれだけ液が入っていれば本物の体のような音がしたっておかしく無い。

いや…本当かどうかはわからない…僕は自分の都合のいいように、あれこれ想像して納得した気になっている。

それほどまでに、りせちゃんのことが好きになってしまった。りせちゃんがいない毎日なんて今は考えられない…


一人で悶々と考えながらりせちゃんと手を繋いで歩いていると、近くのスーパーにたくやの車が止まっているのに気付く。

僕からが近くを通る直前、たくやが店内から戻ってきた。


「おう!久しぶりだな。お前ら元気か?」


元気だ、なんて言えるはずもなく。

ははっ、という乾いた笑い声しか出なかった。たくやははきはきとした声で話す。


「なんだ?元気無いな。というかこんなところで何してるんだ?今から俺帰るけど、乗せてやろうか?」


僕の家はここから歩いて20分くらいかかる。

りせちゃんも全く会話しようとしないし、とりあえず乗せてもらうことにした。

運転中も特に会話は無い。気まずさに耐えられなかった僕は、とうとう聞いてしまった。


「ゆめさん、最近どう…?」


僕は運転席に座るたくやに向かって聞く。


「うーん…今は実家で過ごしてるみたいだ。しばらくは休学するかもって。やっぱり辛かったんだろうな。殺され方が普通じゃ無いしな。まあ、時々電話したりしてるけど、声は明るくなってきたし、そんなに心配はいらないかもな。」


「そうか…よかった。かのは…さんは…?」


たくやは外を眺めたまま小さなため息をついた。


「かのはにも会いに行ったよ…あいつ、すごいやつれててさ…ちゃんと別れてきたよ。あいつがその方がいいって言ったんだ。

あいつさ、お母さんにした事、やっぱり後悔してたみたいだ。そりゃ、実のお母さんを傷つけたら、いくらサイコパスでも苦しかったんだろな…こうやって罪を償えるって思うと、心が落ち着くって言ってた。

その時の笑顔がさ…俺が見た事ないくらい軽くて安らかだった…きっと苦しかったんだろうな…」


たくやは涙目になっている。たくやの方を向かなかったけど、声でわかった。やっぱり苦しかったんだろう…

ここ数日、事件のことを話すのは良くないかな、と思って連絡を取っていなかった。もっと早く話を聞いてあげればよかったな…


「でもまあ、これでよかったんだよ。」


感情を必死で抑えるような声。

たくやはそう言って笑った。たくやの方を見る。


泣いている。


僕は、なんと励ましていいのかわからなくて、黙ったままで隣に座っていた。


家に着くまでの時間が、信じられないほど長く感じた。僕らは家の前で降ろしてもらい、たくやにお礼を言った。


「たくや、ありがとう。」


「いいんだよ。また連絡くれよ?」


うん、と笑い合った。さっきまで本当に余裕がなかったけど、ちょっと心が落ち着いた気がする。ありがとう、たくや。


たくやに手を振った。

4章はこの部分で完結です。読んでくださった方、ありがとうございました!


このお話は次の5章で完結です。

5章はりせちゃんや僕の秘密が暴かれ、今までのお話が繋がっていきます。ハッピーエンドがいい人はこれ以上読むのをお勧めしません。


恐らく皆さんが思っているよりたくさん伏線を張ったので、回収がんばります。


これからも「僕の彼女の鞄の中は」をよろしくお願いします!

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