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火高の腹部からはどんどん血が流れ出す。が、山界が持っていたナイフは切れ味があまり良くなかったためか、刃の先端から3cm程にしか血が付いていなかった。3cmもナイフが入れば十分すぎるほど痛いだろうが、そこそこ混乱していた火高は、ああ、あまり刺さらなくてよかった、くらいに思っていた。

しかし血の量が尋常じゃ無い。おそらく何か、太い血管や臓器を傷つけてしまったのだろう。


山界は混乱している。呼吸が荒く、カッと開いた目も焦点が合っていない。と、突然、玄関のドアが外に開いた。驚きのあまり、山界が外へ倒れかける。


「部、部長…」


玄関にはりせの父である、刑事部長が立っていた。


「こ、これは…何…ごとだ…?」


刑事部長が口を開くや否や、山界がすごい剣幕で、叫び声を上げ、刑事部長の首にナイフを突き立てた。


「おおお、おい…!お前、警察だな…?俺はこいつを、刺した…!言う通りにしなければ…お前も殺す!!!く、車で、息子のところへ連れて行け!星賀に会いたいんだ…!!」


山界は完全に常人の思考回路を失っている。


「わ、わかった、わかった…外に…車がある…怪しまれないように、その…怪我人を…なんとかしません…か?」


さすがは部長ともなると、修羅場慣れしている。なんとか火高に近くにあったタオルで腹部を抑えさせ、車に乗り込んだ。不幸なことに、マンションに人が少ないせいで通報してくれる人間に出会わなかった。


刑事部長は隙を見て形勢逆転を狙っていたものの、火高の出血に足を引っ張られ、思うように行動できない。結局、そのまま車を運転し始める。山界は運転席の後ろからナイフを突きつけ、同時に隣に座る火高を監視している。


と、その時、刑事部長の電話が鳴る。


「おいっ!出ろ!!出るんだ!!!」


山界が激しく怒鳴る。


「む、娘からだ…

り、りせ…?悪いが後にしてくれないか…?今、ちょっと忙しくてな…」


そこまで話すと、山界が強引に携帯電話を取り上げて話し出した。


「おい!!お前、この男の娘だな?おやじの命が惜しければ、一人で○×の倉庫の裏まで来い…!通報したらすぐに殺す…」


『え?あ、お父さん、なんか事件に巻き込まれてるのかな?うーん…いいですけど、あの、今隣でこの電話を聞いている人間がいるんですけど、その人も一緒にいいですか?』


「ぐちぐちうるさい!!そいつも連れてこい!!絶対に通報するなよ!!!」


山界が荒々しく電話を切る。

りせもさすが、刑事部長の娘だ。事件慣れしている。


ーーーーーーーーーー


「りせちゃん、今のって…」


「お父さん、またなんか巻き込まれてるっぽい。全く…娘を事件に巻き込むなんて、それでも父親なのかな…」


りせちゃんは携帯をしまいながら、ため息をついた。

えええ…お父さん巻き込まれてるのにそんな冷静なのね…僕は何事も無かったように倉庫に向かうりせちゃんを追う。

どうして刑事部長がインターホンも押さずに扉を開けてしまったのかというと、それは、2人の叫び声とか色々が外に漏れ聞こえていたからではないでしょうか。(適当)

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