逮捕
22時16分、容疑者、逮捕。
りせちゃんが通報してから20分ほどで、警察が現場に到着。壊れたままの星賀と、呆然としているかのはさんは無事に逮捕され、僕たちは任意で同行することになった。
「この事件の協力者の方は、先程署の方に自首されたそうです。ご協力、ありがとうございました。」
警察の人がお辞儀をした。よかった。頃川さん、ちゃんと自首したんだ…
実は僕たちは昨日、頃川みどりくんのお母さんに会いに行った。僕はまだ監禁されているのかと思っていたけど、星賀の家に入った時はいなかった。もうみどりくんは亡くなったし、解放されているだろう、と、りせちゃんは推理した。
家に行ってみると…最初は全くインターホンに出なかったんだけど、僕が星賀の真似をして脅迫してみたらすぐに出てくれた。荒業で申し訳無かった…
頃川さんは、ゆめさんがお姉さんの遺体を見た時のように、あるいはそれ以上に生気が無かった。あまりにも痩せて、表情も暗かったので本気で幽霊かと思ったくらいだ。
それから事情を説明して家にあげてもらい、自首するように説得した。
『そんな…自首なんかしたら…ゆみ先生みたいに痛めつけられる…拷問される…それ…が、怖くて……子どもをこれまで…散々虐待…してきたのに…私、何言ってるんでしょう…』
頃川さんはそう言って泣いた。やっぱりゆみさんは、死ぬ前に酷く傷付けられていたようだ…頃川さんは恐怖から、息子であるみどりくんを手に掛けてしまった。
りせちゃんは、母親として責任を取るためにも、明日の夜までに自分で自首して下さい、星賀くん達は私がなんとかするから、と説得した。自首したということは、ちゃんと心に響いたのだろう。よかった。起こってしまった状況は何もよくないが。
ひとまず僕らは警察に今まで起こったことを説明した。今まで通報しなかったのは、りせちゃんが脅されているからではなく、僕たちが殺すぞと脅された、という事にした。車の中で口裏を合わせておいてよかった…バレた時の事を考えると何もよくないが。
とりあえず、事件は終わった。容疑者は捕まった。よかった。自分の弟が容疑者だなんて、何も、よく、ないが…
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「水肩さん、例の届け物事件、容疑者が捕まったんですよね。よかったですね。」
「おう、火高。それが何にもよくねぇよ…状況整理が大変だ…」
水肩は火高が差し入れた缶コーヒーをわりぃ、と言って受け取った。星賀やかのはの写真が貼り付けられたホワイトボードを眺める。人物から人物へ、たくさんの矢印が交錯している。
「こいつがこいつを脅して、こいつはこいつの兄弟…ここは同級生…そしてこいつの姉がこいつの保育園の……あああああ!!もうわけわからん!!!」
水肩は缶コーヒーを一気に口に入れる。甘党の水肩はそれがブラックコーヒーだと気付かず、にっが、と渋い顔をした。それを見た火高は鼻で笑っている。
「水肩さん。山界星賀は兄に対し、昔の事件の記憶を思い出して欲しかったと言っていたんですよね?」
「ああ。犯行中も言っていたと白蛾かのはが供述している。その事件ってのが…」
「山界星賀の母親の、自殺ですね。山界星賀は母親を殺したのは兄だと。」
「そうなんだよ。でも捜査資料を見る限り、自殺しかあり得ないんだよな…近くにいた子どもも、1人で飛び降りたと証言している。子どもが飛び降り自殺の現場をたまたま見ちゃうなんて、災難だよなぁ…」
「まあ、そんなことはともかく。山界星賀の殺したっていうのは、心理的にという意味でしょうね。何か、母親の負荷になることがこの家族にあったんじゃないですか?父親の暴力以外に。」
「おい火高、そんなことってなんだよ。全く血も涙もねぇな…お前は…」
火高はふふっと笑った。
長かった事件が完結しました!
読んでくださった方、ありがとうございました。
事件の詳細についてはこれからのお話で補足しつつ、新しい事件を勃発させたいと思います。
これからも「僕の彼女の鞄の中は」をよろしくお願いします。




