反撃
「子どもの方は、ゆみさんを誘拐する時に母親とお迎えに来てて、偶然見られちゃったんだよね。だから、後始末がめんどくさくて殺した。それだけだよ。ねえ兄さん…これだけ身近な人間が死んだのにまだ何も思い出してくれないの…?」
星賀はにやにやしながら僕たちに自分の罪を告白した。と、突然、りせちゃんが吹き出した。
「あっははははははははは!!!!
お兄さんを怖がらせたくて殺した?そんな単純な理由じゃ無いよね?ここまできてがっかりさせる気?
さっきから一人称が僕になったり俺になったり…本当のあなたはどっちなのよ。お兄ちゃんが怖くて、嘘をつくのが下手になったの?そんなに怖いの?馬鹿みたい。ふふふっ…
ねぇ、母親を脅したんでしょう!!
知ってるよ?この母親、頃川みどりくんを虐待してたんだよね?
あなたは純粋に脅して殺しを楽しんでたんじゃ無い…母親を懲らしめようとしてたんじゃない…?
そうだよね?そうなんだね!!!当たり!!うっふふふふふふふ!!!!!
さすが兄弟!言い当てられた時は同じような反応するんだね♪私だって伊達にお兄ちゃんと付き合ってる訳じゃ無いんだよ?うふふ…
あなたは、みどりくんが虐待されていたのを知っていた。それもかなり前から…
最初はみどりくんを助けるつもりだった。でも、母親に対する怒りから、母親を懲らしめる計画に変更。
それで終われば良かったのにね。ここからがあなたの残念なところ。あなたは半分、愉快犯…母親に子どもを殺させるところを見たくくなっちゃったんだね…
それは少なからず、かのはの影響でしょう?
かのはは最低だもんね。実の母親を再起不能にしちゃって。もうめちゃくちゃだよ!その女は!!!
かのは。あなたのお母さんは死体にのめり込む娘に耐えきれなかったんだよね?それで、あなたを遠ざけるようになった。中学3年生の頃だっけ?
それで、あなたは母親に迫った。どうして?どうして私を愛してくれないのって。母親に対しての怒りから、やってることと言ってることがめちゃくちゃになっちゃった。
それで、気がついたらお母さんを殺そうとしてた。でも殺しきれなくて、結局お母さんは永遠に寝たきり!ふっふふふふふふ!!ぶっ壊れてる!いつ聞いても!!なんて酷い娘!!!!!
しかもそれを今日の今日まで隠し続けた…
ねえかのは、自分の気持ちをコントロールできない奴は、人間として終わってんだよ。私のお母さんはそう言ってた。ねえ、あなたは、もう消えた方がいいんだよ?わかる??」
りせちゃんはすらすらと、星賀の仮説をぶっ壊していく。
「星賀くんはそんなかのはの話に感化されたんじゃないの?この人となら、自分の欲をさらけ出していいって。本当に自分がしたいことを、ありのまま表現する美しさ。快感…
それであなたは、自ら手を汚さなくとも一線を越えた。
母親を脅して、母と子どもを誘拐。頃川くんはお父さんがいなかったんでしょ?2年前に離婚してるよね。好都合だ。そして監禁。
同時にかのはが、人を殺したい欲求を必死で我慢しているのを知ったあなたは、甘い言葉を囁いた。
全部吐き出しなよ…楽になれるよ…ありのままで、いいんだよ…そんな風にかのはを説得したんじゃない?
かのはは元からストレスに弱いタイプだったから、あっさりあなたの手駒になった。
ところが!母とみどりくんを殺させるつもりが、監禁する時、不審に思った保育園の先生が駆けつけてくるのを見つけた。それがゆみさんだね。
しょうがないから、ゆみさんはかのはに任せたって感じかな。
それにしても、よくできてたね。さすがかのはだよ。死体はあの時みたいにすごく綺麗だった…あんなに綺麗に切れるのは、あなたくらいかもしれない。相当拗らせてきたんだろうね。可哀想なかのは。ふふふ…」
りせちゃんは一人で流れるように喋る。もうこうなったら止められない…低く、じめじめとした声が、静まり返った廃墟に響く…
「ねえ、星賀くん。人は突然殺人鬼にはならないんだよ?どうしようもない怒り、今回はあなた自身が親から傷つけられていたこと…それを他人で昇華しようとした。よっぽどトラウマだったんだね…
でも、お兄さんが怖いって言うのは、本当なんでしょう?あなたは何か、記憶違いをしてるみたいだけど。この人がこのまま母親を殺すなんて無理だよ。一緒にいればわかる。」
りせちゃんはそう言って、固まった星賀に近づいていく。星賀が手に持った注射器を床に叩きつけ、足で踏んで割ってしまった。中から透明な液体が溢れる。
「星賀くん、いい?本当にお兄ちゃんを貶めたかったらね…」
りせちゃんは星賀の耳元で何かを囁いた。
「あっはははははははは!!!!!」
星賀が突然大声で笑い出す。それも楽しそうな笑いじゃない…明らかに狂気が満ちている…りせちゃん、一体何を耳打ちしたんだ…?
ともかく、星賀はその場で突然泣き出し、それからずっと笑いながら奇声を発していた。
「さ、通報しよっか。」
りせちゃんはそう言いながら、ビニールシートに寝かされていたたくやを起き上がらせて、拘束を解く。
「えっ、でもりせちゃん、星賀に脅されてるんじゃ…」
「うふふ…もういいの…お父さんとのこと、別にバレたって、私はもう構わないし。」
りせちゃんは僕に向けて、さっき星賀を壊してしまったなんて信じられないくらい、爽やかな笑顔を見せた。




