罠
トゥルルルルルル…
「はい、もしもし。白蛾です。」
まず、ゆめさんがかのはさんに電話をかける。この時はゆめさんの携帯からかける。
「恐れ入ります、こちら、○×宅配サービスの山崎です。白蛾かのは様のお電話でお間違いないでしょうか?」
山崎というのは当然偽名だ。
というか、ゆめさんが電話慣れし過ぎていて驚いた。さっきまでのか細い声が嘘のように、明るく張りのある声に変わり、発音もはきはきした感じで話す。電話対応を頻繁にするアルバイトをしていたそうだ。かのはさんは電話越しに、はい、そうですと答えた。
「本日お荷物をご自宅にお届けしたのですが、いらっしゃらなかったのでご連絡しました。発送された方から先ほどご連絡があり、生物ですので本日中に受け取って欲しいとのことなのですが…」
「ああ…すみません…今日はまだ家に帰れなくて…」
「そうですか…弊社のロッカー受け取りサービスはご存知でしょうか?よろしければそちらで受け取っていただければ…」
「あ、わかりました。使ったことはあるのでそれでお願いします。」
「承知いたしました。それでは○×駅までよろしくお願い致します。ロッカー番号とパスワードですが…」
ゆめさんはすらすらと話す。かのはさんは全く疑っていないようだ。それにしても、ロッカーの暗証番号で受け取りができるなんて、すごく便利なサービスだよな…これを使って携帯入りの模型をかのはさんに渡す…
よく考えたな、りせちゃん…
『もしたくやくんが星賀くんたちに誘拐されたなら、ほぼ100%かのはがたくやくんを殺すと思う。星賀くんならそうさせると思うの。2人は一緒にいるはず…』
「ありがとうございました。」
ゆめさんが電話を切ったように見せかけて、そのまま繋いでおく。
これでかかればいいんだけど…
「誰から電話?
宅配サービスの人からだよ。
ちょっと、駅まで取りに行っていい?
これはどうすんだよ。
…ちゃんと、なんとか…するから!」
電話越しにそんな声が聞こえる。これ以上は危険と判断したりせちゃんが、強引に電話を切った。間違いない。星賀の声だ…これ、というのは…たくやだろうか。
「よし。これでほとんど間違いないね。駅に行くよ。」
僕たちは駅から少し離れた場所に車を止めて待機する。
と…
「来た!かのはだ!あの車に乗ってるのは…多分星賀くんだね…」
かのはさんは2分後、駅から白いビニール袋を持って出てきた。なんだか手が震えている。大丈夫だろうか…
「あ、動き始めたよ!ゆっくりでいいから、これを追って。」
りせちゃんが模型に隠した携帯のGPSを追う。
しばらくすると、ある場所で印が止まった。調べてみると、恐らく廃墟だろう、民家がマークされていることがわかった。急いで車を走らせる。たくや…大丈夫だろうか…




