昔のこと
母親…⁈
母親が子供を殺す…?しかも誰かに脅されて…
その脅しをしたのが、僕の弟…星賀…?
「そんなの…許されないだろ…」
ショックと怒りで、もうなんと言っていいのかわからない。さすがにこの時は、それを面白いと言ったりせちゃんが怖くなった。この人は倫理的に破綻している。
りせちゃんが昔、どんなものが好きでもいいから、社会のルールだけは守れとお母さんに言われたと話したのを思い出す。
きっと、お母さんは、早くから気付いていたんだろう。りせちゃんが変わっていること、普通とは違うことに。
「頃川みどりくんには、元から痣や傷がたくさんあった。確かにゆみさんみたいに、殺される前に付けられた傷かも知れない。けど、お腹、背中、目の周り…普段怪我しにくい部分に傷ができるのが、人為的に付けられた傷の特徴。特に、人に見えない部分の痣が酷い。それに治ってない傷と、新しい傷の乱れ方。頻繁に怪我してる。
細長い傷は、棒で殴ったりした時につけられたのかなぁ…」
「つまり…親が子どもを、虐待してたの…?」
りせちゃんが深く頷く。
「なのに、今度は母親が脅される番。あれほど痛めつけてた我が子を、今度は脅迫されながら、自分の気持ちに関係無く危険にさらすことを強要される…どんな気持ちだろうな…ふ、ふふふふ…」
なんか、涙が出てきた。
そんな、話、ある…?
昔、母さんが父さんに殴られていた記憶を、ふと、思い出す…
『やめて、やめて、やめて、やめて…』
何度言っても聞こえない父。毎日のように部屋に充満する悲鳴。母を一通り殴った後、父は僕の方を、冷ややかな目で見つめていた。
『何見てんだよ…全部…全部…お前のせいだからな…』
子どもたちを恨むような、鋭い目。父は何が気に食わなかったんだろうか。僕たちを生んだのは、間違いなく父と母だというのに。
「星賀が…そんなことを…」
「あくまで可能性の話だよ。でもかなり高い確率じゃないかな。星賀くんは…そういうこと、できる人間だと思うの…だって…」
りせちゃんがゆっくりと話しているところに、思わず口を挟んでしまった。
「あいつは、正しく育てられなかったから。」
りせちゃんが少し驚いた顔でこっちを見る。
「そうだ…父さんは、いつも母さんを殴ってた。思い出した…ここ数年、あんまり気にしてなかったのに。星賀は、生まれた時からそんな光景ばかり見てた。父さんは僕たちには、あんまり手をあげなかったんだけどね。
そりゃ、小さい頃からそんな状況の中で育てば、トラウマになるよ…
でも…まさか…そんなひどいことを…どうして僕は、星賀や母さんを守ってあげられなかったんだろう…僕が…父さんを、止めていれば。」
気がつくと僕は泣いていた。
涙が、溢れてくるのだ。
りせちゃんが優しく、僕の頭を撫でる。
「あなたのせいじゃない。それに、大変だったのは星賀くんだけじゃ無いよ…辛かったんだよね…」
なぜだろう。ずっと思い出さなかった昔の思い出が、少しずつ蘇る。母さんと父さんの、見慣れた光景。怯える星賀。ただ、見つめるだけの僕。何もできない無力な僕。
涙が止まらなかった。
前回も書きましたが…再度…
虐待とか、親から子への残虐性は時期的に良くないかなと思ったんですが、元からこのお話はそういうものが一つのテーマなので、自分の考えた暗い部分は改稿せずそのまま書きます。
苦手な方や気分を害した方、申し訳ございません。今後そのようなシーンも出てきますので、苦手な方はお控え下さい。




