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何となくだけどカイルが隠し事をしているような気がした。たぶん母親のことだろう。私には話したくない何かがあったのかもしれない。

  サーシャの記憶ではカイルとの結婚を決めた時、彼の母親のことは考えてなかった。一緒に暮らせることを喜んでいたようだけど、カイルとの結婚を反対されるとは微塵も思っていなかった。それは二人が本当の親子のように仲が良かったからだ。

 あれが全て見せかけだったのだろうか。ハウスキーパーが最後に言ったように、本心では大事な息子を金にまかせて結婚させた悪い女のように思っていたの?


「お義母様が泣かないからといって、悲しんでいないとは限らないわ。サーシャの記憶の中の彼女はとても優しかったの。あれが全て噓だったなんて思えないわ」

「…確かにとても可愛がっていた。この間、サーシャの絵が見つかったんだ。母が絵師に描かせたものだ。私の絵よりサーシャの絵の方が多かった…だから余計に母のしたことが信じられない。せめて悪いことをしたと謝ってほしい」


 なるほど。彼の母親は謝ることも拒んだということか。でも彼女は何故私をいじめたのだろう。結婚する前ならまだわかる。でも結婚した後に嫌がらせをされたとしても、よほどのことがなければ離婚することはないのに意味のないことだ。でもその意味のないことが結構あることを私は人の噂で知っている。嫁姑問題ははるか昔から存在している。簡単に離婚ができない世界で、姑に好かれなかった場合地獄の結婚生活になってしまうらしい。最近は夫が味方するから嫁の方が強いところもあるらしいけどね。


「それでこれからどうしたらいいと思います?」

「私は母のことがなければ結婚が一番いいと思っていた。だが、私の母がサーシャを死に追いやった人物だとわかって、正直どうするのがいいのかわからない」


 カイルの母親は再婚して家を出ているから、結婚したとしてもずっと一緒にいるわけではない。カイルの母は私がサーシャの生まれ変わりだって知らないのだから、私が気にしないといえば.....。

仲良くできるだろうか。たまにしか会うことがなくても義理の母親になるのだ。一緒に食事をしたり、服だって買いに行くかもしれない。サーシャだった時もよく二人で買い物をした。服を選びあったこともある。あの時のあの笑顔が嘘だったとわかったのに、一緒に笑いあうことができるだろうか。


「わたくしも彼女と仲良くできるか自信がないですわ」

「.....それで昨日ずっと考えて、私と違って君は若い。将来を考えれば真名に縛られて人生を決めるのはどうかと思う」

「それはどう言う意味ですか? 棄教しろと言うのですか?」


棄教すれば公爵令嬢として生きて行くことはできない。この大陸のどこにも居場所がなくなってしまうだろう。


「まさか。そうではなくて私が神殿に入ろうかと思ったんだ」

「は?」

「私は君よりずっと生きている。それにサーシャを守ってあげることができなかった。せめて生まれかわりである君は幸せになって欲しい」

「そんなこと無理です。へ、陛下がお許しになりませんわ」


陛下のことを言うとカイルは、


「陛下のことは私が説得するから大丈夫だ」


と言った。でもそんなに簡単なことではないと思う。グレース王女の話では陛下の唯一無二の親友がカイルなのだ。そのカイルが神殿に入るのを黙って見ているわけがない。


「無理だと思います。陛下は徹底的に調べて、カイル様が神殿に入るのを邪魔するでしょう」

「陛下とは長い付き合いだ。私だって陛下の弱みの一つや二つ知っているから心配しなくていい」


カイルは神殿に入る考えを変えそうにない。私のために神殿に入るのなら、 やめて欲しい。

でもなんと言えばいいのかわからない。

早くグレース王女が帰って来てくれないかしら。











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