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ラブコメの神様は気まぐれである

 この学校にこんな美少女いたのか。目の前には金髪碧眼美少女─嶋村稚春の姿がある。

 美しい金色の髪が腰まで伸びており、碧色の瞳は煌めいている。

 背は俺よりやや低く、整った顔立ちをしており、まるでハーフのようだ。

 小さすぎない発展途上の胸と、モデルのようにくびれたウエストが組み合わさった体型に、自然と目が奪われてしまう。

 白い制服と、チェックのスカートはこの容姿と相性は完璧だ。


 「上原、見とれてないで挨拶したまえ」


 嶋村を凝視する俺に先生はいった。


 「見、見とれてませんよ」


 俺は小さく咳払いし、


 「えー、上原十罪、よろしく」


 と、嶋村に手を差し伸べる。

 自然に握手を求めた俺だが、実はとても緊張している。

 女子と話すのは数年ぶりだ。女子というか男子とも話さない。昔からコミュニケーション能力に欠ける俺は友達ができたことがない。

 毎日、教室でボッチは当たり前だ。ペア決めの時も、修学旅行の時も常に一人である。そんな俺が美少女と話をするなんて、それだけで幸せだ。

 嶋村は俺の方へ近寄り、顔を覗き、目を凝視してくる。おかしくなりそうな理性を抑え、目線をはずす。


 「目が怖い」


 これが嶋村稚春の第一声である。


 「···は?」


 一瞬、この美少女が何を言っているのか理解できなかった。


 「ふっ、ははははっ、さすがだな稚春は」


 と、山本先生は爆笑し始めた。


 「先生、こいつ何なんですか!」


 「稚春は私のはとこだ。親の事情で今日からこの学校に通うことになった、仲良くしたまえ」


 「仲良くなりませんよ」


 「同じ屋根の下で生活するのに大丈夫か?」


 「···ん?同じ屋根って···はぁ?まじですか!?」


 「大マジだ」


 「いきなり言われても困るんですが」


 「私の家だ、なぜお前の許可がいる」


 「···ですね」


 山本先生はいつもこの調子である。


 「千聖」


 「どうした?」


 「帰りたい」


 「そうか、上原、一緒に帰ってやれ」


 「えっ、嫌ですよ」


 「ついさっきのこともう忘れたのか?」


 「はぁ、分かりましたよ」


 山本先生は笑みを浮かべこの教室をあとにした。


 俺と嶋村は一言も会話を交えることなく、外の駐輪場へと向かった。駐輪場に着くと、俺は自転車に乗るが、嶋村は立ち止まっている。


 「自転車は?」


 「無いわ」


 即答だった。

 学校から家まで五キロほど距離がある。そのため、歩いて帰るわけにもいかない。


 「後ろ乗れよ」


 すると嶋村は無言で後ろに座る。

 性格はあれだが女子と二人乗りは悪くないなと思いながら校門を出る。


 学校から家までは一本道になっており、様々な店が並んでいる。二キロほど進んだあたりで、嶋村は肩をつついてきた。


 「なんだよ」


 「お腹すいた」


 ···お子様かよ。

 俺は近くのコンビニに寄った。

 コンビニに入り、かごを手に取り、商品を見渡す。すると、嶋村は大量のお菓子を持ってきて、かごに入れた。


 「何やってん···」


 「お金持ってない」


 きっぱりと言われ少し戸惑う。つまり、買えってことだよな。

 俺は小さくため息をつき、


 「買えばいいんだろ」


 「···ありがと」


 意外な言葉だった。一般的にお礼を言うのは常識だ。だが、初対面の人に「こわい」と言い放つ彼女にお礼を言われるのは、少しだが嬉しかった。

 俺は会計を済ませ、外へ出る。すると、嶋村は二人の男に絡まれていた。なんだこれ、助けに行けってことか、ラブコメの神様は面倒臭いことするんだな。

 不本意ではあったが、淡い期待を抱きながら嶋村の元へといった。


 「妹よ、帰るぞ」


 俺は妹大作戦でいくことにした。兄がいるならこのチャラ男達も消えてくれるだろう。だが、考えが甘かった。せっかくの作戦に、嶋村は無反応。それどころか、私一人っ子よと言う始末。おいおいおいおい、そこは流れからして合わせるとこだろ。

 最終的に俺は痛い人に思われ、男二人は苦笑を浮かべ立ち去っていった。結果は良かったのだが、気分は最悪だ。

 嶋村はどこに行ったのか周囲を見渡すと、自転車の後ろにさり気なく乗っており、早くしろと言わんばかりにこちらを見てくる。こいつと暮らすなんて絶対嫌だ···。


 ──ラブコメの神様は気まぐれのようだ──

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