Dear Riku 02
画面の中には、テレビのモニターが映り込んでいる。
『ちょっと見ててね』
小夜の声だけが聞こえて、テレビに映像が映った。
繊細なピアノのメロディーに、淡く美しい色彩のアニメーション。
細谷教授の『美しき夢人』の映像だ。
『私、この映画は何回観たかわからないくらい、観てる。でも、批評家の人たちが言うような難しいことは考えたことがなくて』
自分が画面に映っていないことに気づいていないかのように、小夜は話し続けた。
画面は、ひたすら映画を流し続ける。
『夢って、起きると忘れちゃってるでしょう? 当たり前のことなんだろうけど、あれが子供の頃からすごく不思議だった。その答えを、この映画にもらった気がしてるの』
ようやく、小夜がカメラの存在を思い出したように、画面が揺れた。
ぼやけたピントが合い、小夜の顔が映り込む。
室内が薄暗く、白い服を着ているせいか、小夜の輪郭がぼんやりと光っているように見えた。
『きみとも、この映画の話をしたことがあるよね。今回の質問は、映画の中の答えではなくて、私が見つけた答えを答えてね』
まだ流れたままの映画に一度視線をやってから、小夜がカメラに向き直る。
『……人はどうして、眠らなければいけないの?』
狙ったのか、狙ってできるものなのか。
小夜の台詞は、映画の中で少年が口にした台詞とぴったりと重なって聞こえた。
『何回も観てるって、言ったでしょう?』
してやったり。
いたずらに成功した子供みたいな顔で、小夜が笑う。




