鎌鼬
ラクダを愛する男がいた。
夜に鎌鼬がやってきて、ラクダを殺した。
男はラクダの後を追った。
女を愛する男がいた。
男は鎌鼬を恐れ、女を頑丈な城に住まわせた。
夜に孤独がやってきて、女を殺した。
男は女の後を追った。
自由を愛する男がいた。
男は孤独を恐れ、人とふれあうようになった。
夜に劣等感がやってきて、自由を殺した。
男は自由の後を追った。
何も愛さない男がいた。
男は女とラクダと共に、自由な旅をしていた。
鎌鼬は男にある問いをした。
「わたしはたくさんのおとこをみてきたが、みなあいのためにしんでしまった。しかしおまえはなにもあいしていないようだ。かれらはあいをうしなったゆえしんだが、それはあいにいかされていたということでもある。おまえはなんのためにいきるのか。」
男は答えられなかった。何故なら言葉を持たなかったからである。
二人をのせたラクダは、そのまま地平の彼方へ消えていった。