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 トンボ達があっという間に見えなくなったように、キャンディにもあっという間に追い付いた。

「ハッハッハ、おーいキャンディー」

 俺が呼び掛けると、シェルター目指して全力疾走だったキャンディは立ち止まりゆっくりと振り返った。

「え、よかった啓介無事だったん--」

 何故か言葉に詰まるキャンディ、咄嗟に何かかあったのかと思って、俺は今出せる最高速度でキャンディの目の前に移動する。

「どうかっ--したのかね、キャンディ」

「ひっ、こ、来ないで、お願いだから」

 物凄い怖がった表情であとずさるキャンディ、キャンディが一歩下がると俺は一歩前に出る。

 何故か俺から距離をとろうとするキャンディ、そこで自分の体の状態を思い出して元に戻る。

「悪い悪い、キャンディ」

「啓介なの? 本当に本当の啓介?」

「この汚染された場所で俺以外に誰がいる」

「よ、よかったああ」

 俺だと分かった途端に安心したのか、気を緩めるキャンディ、どうやら早急の状態だと俺かどうか分からなかっただけのようだな。

「でも、啓介、大丈夫なのその体」

 俺の体を心配そうに見つめてくるキャンディ。

「ああ、大丈夫だ早急この肉体で巨大トンボ倒して来たところだから、もう安心して良いぞ」

「大丈夫なら良かったって、倒した!? 逃げて来たんじゃ無くて倒して来たの!?」

 表情を見ただけで驚いている事が解るような顔をしてキャンディは言った。倒したのは確かだけどそんなに驚くことか。

「まあ確かに俺もあの時は死を覚悟したけど、幾らなんでも酷いぞ俺が帰ってくると信じて無かったのか」

「あの場面で生きて帰ってくるどころか倒して帰ってくる、何て思うのは流石に無理があるよ」

「だが俺は実際に帰ってきた、シェルターへの道を邪魔する障害を排除してな」

 俺は自信たっぷりな表情をするがキャンディは呆れた様子だ、けど直ぐにニッコリと俺に微笑んだ。

「うん、凄いよ啓介は」

 キャンディの微笑みは、此処がシェルター内の明るい公園だったらさぞ綺麗見えただろう、今でも充分綺麗だけど。

「さ、邪魔な障害は排除して、今シェルターへの道を阻む者は居ない。さっさとシェルターに行こうじゃないか」

「でもさ、一つ気になるんだけどね」

 俺が早速シェルターに向かおうとするけど、キャンディの申し訳無さそうな表情と声を聞いて進みかけた足を停止させる。

「何が気になるのさ」

「トンボに追いかけられてた時は何にも思わなかったけど、私部外者だからシェルターの中に入れて貰えるのかなって」

 そう言ったキャンディの表情は凄く残念そうだ、確かに部外者はシェルター内には入れないかもしれないけども。

「安心しろキャンディ、今の俺は最高に調子が良いから警備兵を倒して人一人シェルターに入れるの何て容易い」

「全く安心出来ないのは何でだろうね、啓介」

 心配しなくて良いと言う意味で言ったのに上手く伝わらなかったのか、苦笑いを浮かべるキャンディ。

「シェルターに入れるか入れないかは、着いてみなきゃ解らないから、兎に角行って見ようぜ」

「解った、もし駄目でも、私をシェルターに入れるメリットとかアピールするよ」

 その行きだキャンディ、そうして俺達はシェルターへ向かって再び歩みを進める。


 途中で特に襲われる事も無く順調にシェルターへの道を進んでいた俺達。キャンディと特に深くもない話をしていたら、キャンディがお腹が減ったと言うので今は昼食を探しているところだ。

「何か見つかった?」

「いや此方には何も無いな」

 そう言って俺は積み上げられた箱の中を探す為に入れていた頭を外に出しながら言う、中に入っていたのはもう支えなさそうな日用品ばかりだ。

 俺達が昼飯を探す場所として選んだのは、今は使われて無いシェルターの中だ。ここには昼飯を探している時に、たまたまシェルターの跡地を見つけたから来てみたのだ。

 このシェルターはドーム状になっていて俺達がいるのはその隅にある倉庫、しかし幾ら探しても見つかるのは食べれなさそうな雑貨ばかりで嫌になる。

「そもそも食べ物が見つかったとして、食べられるの?」

 そう言われると、このシェルターは回りのビルとよりは新しいけど、使われなくなったのは結構昔だ見つかっても消費期限を過ぎている可能性が高いだろう。

「でも、ここ以外で今のところ食べ物が見つかりそうな場所は無いぞ、それに昼飯を食べたいって言ったのはキャンディじゃないか」

「う、それは、キャンディが美味しかったから、普通のご飯はもっと美味しいんだろうなって思ったからで」

「普通のご飯と言っても、今も食べれるのは保存食位だろ」

 嘘でしょっ、見たいな表情になるキャンディ、まさか普通の食事が落ちてる何て思ってたんじゃないだろうな。

 俺が積み上げられていた上の箱を退かして下にある箱を探そうとした時だ、箱と壁の隙間から何かが一匹顔に向かって飛び出して来る。

「なんだこれ」

 俺は空中でそいつをキャッチした、手触りが何だかヌメッとしていて柔らかいそいつ姿を見てみる。

「これはタコ?」

「何か見つかった啓介、何でタコを握ってるの?」

「知らない、箱を持ち上げたらいきなり飛びかかって来たんだよ」

 しかし何でタコがこんな所に? 一瞬見間違いかと思ったけどキャンディもタコだと言ってるし、この八本足に萎んだ風船の様な姿は間違い無くタコだろう。

「でも丁度良いな、箱の中を漁ってたら一通りの調理器具は有ったしこのタコ食うか」

「え、食べるの大丈夫かな」

 大丈夫かなとか言いながら調理の準備を始めるキャンディ、何だかんだ言ってもお腹が減っているようだ。

「そうだ、塩が確かこの辺にって、目痛ぁあ!」

 俺が塩を取ろうと手に持っていたタコから目を離したときだ、あのタコはピンポイントで俺の目に墨をかけてきやがった。痛い凄く痛い、あまりの痛みに耐えきれず床で転がって気を紛らす。

「目え、目ええ、目えええがっ」

「あっ、タコが逃げちゃう!」

 キャンディに言われて気づいたがもう遅い、俺が目の痛みに悶えていると、タコは俺の手からすり抜け倉庫から逃げてしまう。

「逃げちゃった……ご飯」

「俺の心配はしてくれない訳なのね」

「ご、ごめんタコが逃げちゃったから思わず」

 俺の方も空腹の相手の昼食をお預けを食らわせてしまったから相子にしておこう。

「今から探せば、見つかるかも知れないけどどうしたい」

「勿論探しに行く!」

 そうと決まれば、目はまだ痛むけど探しに行くとしなければ。俺は目を瞬きさせながら起き上がる、もうキャンディはいつ勝手に探しに行ってもおかしくない様子だ。だがこれだけは言っておかなければ。

「キャンディ、タコがこんな所にいるのは変だと思わないか」

「確かにそこは、私も気になってた」

「あのタコは多分、ラトロケルのタコの幼体だと思うから注意してくれ」

 今の俺なら大抵の事じゃ大丈夫だとは思うけども、慎重に行くには超した事はない。でもそう言うとそもそも探しに行かなきゃ良い話なんだけど、キャンディの様子からして止めるのは無理だろう、あれは絶対意地でもタコを食べようとするだろう。

「じゃ行こっか」

「れっつごー!」

 そうして俺達は倉庫からシェルターの奥に入って行く、タコは廊下を進んで行ったようで廊下に何やら濡れた跡が残っている。


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